第十七話 夢
俺はなぜか都市の中にいた。さっきまで洞窟の中にいたのだから、これが夢だとは直ぐに気付いた。俺がいるところでは何やら争いがあったらしい。ものすごく腐った匂いがするので、人が死んでから日が浅いのだろう。
しかし、ここはどこだ?見覚えがない。王都と比べてあまり技術が進んでいないように見える。構造物はすべて石でできているようで、都市の周りは壁で囲まれているように見える。天気は曇っているように見えるが、光が入って来てはいる。
俺の視界の中には、血痕、切り傷、死体、飛び出た臓器であった。皆即死だったのだろうか?いや、ただの夢だ。現実なんかじゃ…ちょっと待て、腐った匂いがする?おかしい。夢なら、匂いなんてないはずだ。これは夢じゃないのか?
そう思っているのに急に歩き出した。
俺は一回も歩こうなんて思って、体を動かしていないので、現実ではないはず。じゃあ一体これは何なんだ?
俺があるいって行った場所は、議会のような場所だった。そういえば、ここに城は見えなかった。王政ではないのだろう。そして、秘密の地下室の入口ような所から、下に入って行った。
そこには、首に鎖で繋がれた少女がいた。まだ生きている。少女は俺の存在に気付いたのか、こちらを見てきた。その顔は、目玉をくり抜かれており、鼻はそぎ落とされていた。耳も無くなっており手足も無くなっていた。
「これ以上は、変われない。俺の肉体を返して貰おう」
その言葉は明らかに俺が放った言葉であった。その言葉に反応に少女は、困惑の顔をしていた。
「期限はだいぶ前に過ぎている。体の一部を変える変わりに、お前の力の一部を借りた。俺はすでに、返せと言ったが、お前が頑なに断ったから、今までの恩もあるし、貸しにしといてやったんだ。だか、この前のあれは…やり過ぎだ。」
俺の顔は今どうなっているのだろうか?恐らく、無表情なのだろう。淡々とこんなこと言っているのに、表情があるとは、思えない。少女は、何かを決めたのか、頷いた。
次の瞬間、少女が失っていたものが元からそうであったように再生していた。
「声は残したのか?」
今までの少女の行動を見るに喋れないのだろう。
「ううん。動ける最低限の力だけ、あげる」
全然違ったわ。こいつ喋れたんか。
「なぜ?俺の体は全て戻ったのに…」
「私のわがままに付き合ってもらちゃってたし、話相手がいなくなるのは、嫌だったから。後は謝罪の気持ちよ」
「お前には頭が上がらないな」
「いつでも、ここに来てね」
「ああ、もちろんさ。お前はそろそろそこから出たらどうだ?」
「ううん。いいの。ここだと、あいつらから観測されないし、あなたと見た景色で十分よ。あ、あと嵐ちゃんにありがとうって伝えといて」
「?分かった女神様伝えておくよ。じゃあ俺はこれで」
「ちょっと待って。ねえ貴方、私と取引しない?」
「は?何言って…」
「貴方に言ってない。もう一人の貴方よ」
「あー、思い出した。初めての出会いはこんな感じだったな。懐かしい」
「え、何言ってるの。この会話は初めてよ。私は言ったことないわよ?」
「「え?」」
目が覚めた。何じゃあの夢は。最初シリアスかと思ったら、最後ギャグみたいになってるし、理解が全く追いつかなかったし。どうなってんだ。でもただの夢だし、どうせ直ぐに忘れるさ。
嵐は寝てしまっている。こいつこんなに眠って大丈夫か?まあ、いい起こしてしまおう。
「起きろよ嵐。起きないと飯抜きにするぞ~」
その言葉で、嵐が飛び起きた。反応が早いな。俺でなきゃ見逃しちゃうね。
「ご飯早く頂戴」
起きてすぐの言葉がそれかよ。
「はいはい分かりましたよ。ところでぐっすり寝ていたようですね」
そう言って干し肉を出す。そろそろ、干し肉以外のものを食べたい。
「嵐。今日はここから出るための周囲の探索だ。分かったか?」
「分かった。…もうちょっとご飯頂戴」
「分かったよ。…そういえば、お前の今のレベルは?」
そういえば、この世界にはレベルがあることを思い出したので聞いてみる。レベルである程度強さは分かりそうな気がするから。俺達召喚された奴らみたいな例外がいるけど。
「今は7」
俺のレベルが確か3だったはず。この低さだと、不安があるな。ここを探索するときは、慎重に行こう。
「ありがとう。ほらご飯」
「ん。もっと」
「ダメだ。これ以上やると、食料がなくなりそうだし、お前多分腹一杯になるまで食うだろ?」
「えーケチ」
「ケチじゃねえよ。ほら、さっさと行くぞ。時間は有限なんだ」
渋々嵐は立ってくれた。こいつほんとに手間がかかるな。
「嵐、一応抜刀しておいて」
「分かった」
「んじゃ、扉を開けるぞ」
そう言って、扉をそっと開けた。
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