第十六話 びしょ濡れ
眠い
背中を押されてすぐに、水の中に入った。運よく水の中に入ったようだ。これが地面だったら、今頃無事じゃ済まないな。
暗くてよく見えないが、嵐が隣にいることは分かる。寒いので早く陸に上がろう。
俺は嵐の手を引っ張り、一直線に泳ぎ始める。うろうろして体力を失うよりも、一方方向に泳いだ方がいいと思ったからだ。
案外陸はすぐに見つかった。陸に上がって最初にアイテムボックスから火打石とそこら辺で拾った木の枝を出した。これで、火を付ける。寒くて手が思うように動かない。やばい。このままだと凍え死ぬ。動け動け!火を付けろ!
どうにか火は付いた。だが全く温かくならない。何でだ?手足は温かくなっているのに胸の辺りは冷たい。ああ、服を着てるからか。
俺は直ぐに服を脱いだ。もちろん下着以外。下着だけだったら大丈夫だろう。
嵐を見ると、寒そうにガクガク震えていた。
「嵐さっさと服を脱げ!死にたいのか!」
このセリフだけ聞いたら、何だか誤解されそうだな。しかし、嵐は服を脱ごうとしない。
「早くしろ!凍え死ぬぞ!」
「指に力が…入らない」
「頑張って脱げ。俺よりもやばそうだから、火にもうちょっと寄った方がいい」
「分かった。でも…服が脱げない。…脱がして」
は?ちょっと待て、今こいつ何て言った?脱がして?俺は女性が好きじゃないにしろ、流石に女性の服を脱がそうとは思わない。
ええい!めんどくさい。今は非常事態だ!変な展開にはなるはずがない。そうだ俺、やるしかない。
「分かった。服を脱がすぞ。腕を上げろ。…そうだ。下着はいい。次に下だ。俺はあっちを向くからな。引っ張るぞ?…よし取れた。じゃあ火で温まってろ」
そう言ってアイテムボックスから替えの服と布を出す。
布で体を拭いて、替えの服に着替える。下着は水を絞ってから着た。嵐の服も出しといた。まだ下着を着けながら火に当たっているけど。しかし、裏切りられるとは思ってもいなかった。前日の族長の行動を見るに、息子を出したのはたまたまっぽいし、暗殺の事を踏まえると、一部の奴らが俺を殺しに来たって事かな?まあ考えた所でどうにもならないけど。
嵐が行動出来るようになるまで、周りを探索してみる事にした。そして分かった事がいくつかある。まずはここは何かの部屋であること。これは、ここが洞窟じゃなくて人工物であるという事。とりあえず魔獣の心配はなさそうだ。しかし、ドアの方から若干光が見えるのだが、気のせいだろう。次に、使われなくなっているということ。埃が溜まっていたからそう思っただけである。最後に何かから逃げていたこと。いや、逃げていたというより、急いで逃げた。という方がしっくり来るだろう。まあそれぐらい荒れていた。
まあ、この部屋は、安全だと分かったので、数日はここにいて問題はないと思うが、早く地上に出ないと…
嵐がある程度動けるようになったが、今日はここで休むと言っておいた。一番大変そうだったのは、嵐だったので、少しぐらい休んでもらいたいのだ。
部屋の外を見てみたいが、嵐と離れると何かが起こるのが怖くて離れたくない。しかし、耳を澄ますと何かがいる音はする。しかし、この山で人の気配はしなかったから、恐らく人間ではないだろう。だが襲って来ないということは音と匂いがあまり機能していないのだろう。運がいいのか悪いのか分からないな。
嵐は温かくなってきたからか丸まって寝てしまった。獣って、自分の縄張り以外ではあんまり寝ないんだっけ?その割にはこいつはすぐ寝るな。すぐ寝れるのはうらやましい。
俺も寝たいが、もしもの為に俺は見張りをしておこう。まあ多分、来ないだろうな。
嵐が起きたのでアイテムボックスから干し肉を出す。すごい眠い。
「はい。これ食べ物頑張って。じゃあ俺寝るから。お休み」
「分かった」
俺はさっさと寝た。俺が起きたらこの部屋の周りを探索しようと思う。眠い。嵐みたいにさっさと寝れるようになりたいな、と思いつつ、目を閉じた。
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