第十五話 裏切り
族長の家に入ると、地位が高そうな人が4~5人で集まっていた。何やら会議をしていたようだ。俺もこの中に入れと言うのか?そんな大事な話に俺が入るわけがないな。
座って下さいと言われたので、座る。族長が口を開き一瞬戸惑うが、決心したのか言葉を発した。
「単刀直入に言う。貴方は連邦の配下でか?」
何でそんなこと聞くんだ?連邦って俺が逃げてきた国だっけ?だったら答えはいいえだな。
「いいえ違います。俺は誰の配下でもありません」
「じゃああの短剣の刻印は何じゃ?」
こくいん?短剣になんか付いてたっけ?国のマークみたいなのは付いていたがあれの事か?だとしたら国から貰った物です何て言えない。それこそ配下だと思われる。
「あの短剣は…連邦で買った短剣なんですよ」
「ほぉ、確かあれは連邦の一部の兵士しか持てないマジックアイテムだった気がするのだじゃが…あれを買うには相当な金がいるはずじゃ。ましてや若い奴がそんな金を持っているのかな?」
あれ、これって非常にまずい立場にいるのではないだろうか。嘘を付いたのが間違いだったか?いや親が出してくれましたと言えばいいだろう。親がお金持ちなんですって言うか。
「いやー親がお金を出してくれたんですよ。親がお金持ちでしてね。頼んだら出してくれたんですよ」
「そうか、そうか親が出してくれたか…そろそろ本当の事を言った方が身のためじゃぞ」
え、嘘言ってたってばれたの?クソッ本当の事を言っていいのか?本当の事を言ったら俺の利用価値に気付き、利用されるかもしれない。いや、嘘を言ったと知っていても忠告してくれているのだ。この人達は優しい。実際丁重に扱われたじゃないか。
だったら本当の事を言おう。
「俺は連邦から逃げてきた別世界の人間です」
「別世界の人間だという証拠は?」
「…ない」
「という事は、それも嘘かのお?」
「嘘じゃない。だけど証明する事はできない」
「…だったら、君を別世界の人間だとしよう。なぜ連邦から逃げて来たんじゃ?あそこにいれば、何不自由無く暮らせるだろうに」
「魔王軍を倒した後、色々な所で利用されると思ったんですよ」
「別にいいじゃないかのう。何不自由も無く暮らせれるのじゃから」
「俺は元の世界に帰りたい。他の皆だって同じ考えだろう。暖かい家で家族とご飯を食べて、週末にはどこかに遊びに行って、時には兄弟と喧嘩する。そんな日々に戻りたい。…何でそんなことさえ許されないんだ。さようならも言えずに、いきなり離れ離れになっちゃうなんて誰も思わないよ。早くあの家に帰りたい…」
言葉を言い終えた俺は涙を流していた。今まで言えなかった愚痴を口から出せたからだろうか。それとも今いる現状を改めて理解したからだろうか。とりあえず今の俺は精神的に参ってるようだ。
「すいません。ちょっと取り乱しちゃって」
「いや、こちらこそ済まなかった。まさかそこまで精神がやられているとは思っていなくての。さっきの言葉には偽りが無いように見えたし、別に連邦の配下ではないようじゃな。しかし、別世界の人間だったとは予想外だったわ。そういえばお主の名は?」
「野分樹です」
「そうか…その名前を使うのは控えた方がいい」
「なぜですか?」
「本来そういった名前は、我々魔族…いや失礼。そちらでは魔物だったな。とりあえず、人間ではないと見なされる。お主のような体の魔物は見たことがある、名前を言えば、魔物だて思われるだろう。だから、その名前は使うな」
「偽名を使えと言うことですか?」
「そういう事になるのう」
「分かりました」
こうして、俺の冤罪は晴れ、アドバイスも貰った。さっき愚痴をこぼしたからか、体が軽い。
族長に明日になったら、出ますと伝えておいた。そしたら山道まで向かわせるのに息子を貸そうと言ってきた。ありがたい。
翌日、餞別として、火打石や研ぎ石や食料を貰ってしまった。良くしてもらってばっかりで気まずい。
族長の息子は、偉く優秀だそうで、族内で一番強いのは、この人だそうだ。だったら、問題はないだろう。
嵐はというと、特に何も変わっていなかった。強いて言うならば、ご機嫌のようだ。何かいい事でもあったのだろうか?族長の息子が言うには、山道に戻るまで、俺の足では3日ほどかかるらしい。俺の体力がないせいで、時間がかかるというのは、足を引っ張っていて嫌なのだが、族長の息子は別に問題ないと言ってくれた。
見た目のせいか、頼れるアニキというのが定着してしまった。アニキと呼んで尊敬しているが、まあいいやつなのは変わりはないけど。
山道を目指して山を歩いて行ったのだが、厳しい道のりだった。俺達が歩いていたルートよりも、圧倒的に危なかった。アニキに聞くと、こっち側の方がショートカットになるそうな。でも危な過ぎてあまり進む気にはなれなかった。結局進んだけど。
道はまるで、要塞のようにごちゃごちゃしており、本当に間違っていないか心配になったが、頼れるアニキを信用しない訳には行かないので合っていると後ろに付いていく。
夜になって寝るときは、星空が見えていて綺麗だった。襲われるまでは、空なんてあまり気にしていなかったし、元の世界であっても山に行って、これほど綺麗な空は見れないので、心がちょっと浄化された。
見張りは全部アニキが全部してくれたが、剣の研ぎかたなどを教えてもらったり、剣術を教えてもらったりした。
そして、三日目。アニキがもうそろそれだと言って、先頭を歩いて貰っていると、急に止まった。魔獣でもいるのだろうかと思ったが、目の前には洞窟があり、松明を出す為に止まったようだ。
「この洞窟の先に、山道がある。前来たときには何もなかったから安心していいよ」
この人が言うなら、そうなんだろうと思いつつ、洞窟の中に入ると、何か遺跡の後があり、これが洞窟ではない事が分かった。しかも、何かの切り傷があったりして、過去に何かがあったことが分かる。俺には関係ないけど。
そしてまたアニキが止まった。出口が見えたかと思うと、光など一切見なくて、ただ暗闇が、あるだけだった。
「どうしたんですか?急に止まって」
「ん?ほら、もう見えてるじゃないか。君達の終着点が」
どういう事かよく分からない。終着点?山道じゃなくて?
「ほら見えるじゃないか、あそこにさ。見えないんだったら、前を譲ろう。ほら嵐ちゃんも」
そう言って、俺と嵐が前に出るとトンと背中を押された。突然の事でよく分からなかった。
「すまないな。俺はあんた達を信用できない。さようならだ連邦の犬」
へ?アニキ何言ってんのと思ったが、この瞬間理解した。騙されていたのだ。
こいつに。でも何もできない。今俺達は闇の中へと落ちていっている。この下に何があるのか分からないが、恐らく上の方には戻れない。つまるところ終着点と言うのは死という事である。
それを理解してから、叫んだ。どうしようもないと知っているのに。
「クソッたれぇぇええええ」
そう吠えながら俺と嵐は深遠の中へと吸い込まれて行った。
後から冷静に考えると俺の命はあの魔物たちが助けてくれて生かされていたのだからある意味結果は変わらなかったのでは? と言う結論になったので今は特に気にしてなかったりする。
二章はこれで終わりです。次回からは三章となります。(すごく短かったな)
ブックマーク登録や評価の方をお願いします。モチベーションアップに繋がるのでお願いします。




