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魔王、元奴隷のおもちゃになる

 少女が泣き出した。


「名は何という?」

「ひぁ……ひっく……」


 何故泣く?


「腹が減ったのか?」


 食べ物を差し出すが、泣き止まない。


「トイレか?」


 トイレに連れて行くが、まだ泣き止まない。


「寒いのか? 熱いのか? どこか痛いのか?」


 畳み掛けるように質問をすると、余計に大きな声で泣いた。

 この泣き声を耳にしていると、心がざわつく。


「もしや魔王陛下のお姿が怖いのでは?」


 確かに我は勇者にすら恐れられる存在だ。

 遺憾だが、魔王軍四天王の一人である天秤のレイシーの意見に同意せざるを得ない。


 よし。

 我の偉大なる力を見せてやるとしよう。


 ──ポゼション・マリオネット


 我は人形の姿になった。

 創造魔法を駆使して、できるだけ可愛く作った二頭身の人形に。

 召喚された預言書で読んだ「ヌイグルミ」を参考にした故、完璧だろう。


「さすが魔王様です……!」


 天秤のレイシーが人形となった我を讃えつつ、丁寧な手付きで抱き上げる。

 少女は突然人形になった我を見て目をパチクリさせている。


「おねえちゃん、これくれるの?」


 ──我を〝これ〟と呼んだのか!?


「そ、そうよ。あなたのお友達よ」

「えへへ、メルンのお友達。ありがとお おねいちゃん!」


 少女の名はメルン。


 魔王は、元奴隷のおもちゃになった。

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