お婆様1
こちら、ザムの湊で川船を降りたところ、兵士達に囲まれた私達です・・・。
兵隊さんに連れて行かれたら、新年に間に合う船に乗れません。それどころか、牢に入れられたらどうしよう? おまけに、若旦那さんにも迷惑が掛かります。その時でした、
「これ、何を騒いでおる?」
「うるさい、引っ込んでいろ!」
声を掛けたのは、供を連れた地味な装いの老婆。一人の兵士が乱暴に答えた途端、他の兵士が小声で諫めます。
「おい、お婆様だぞ」
「え?」
慌てた兵士達、道を開けます。
「この坊やは、儂を船に乗せ都まで行くのじゃ、野暮なことはせず早く準備をさせよ!」
その言葉に、兵士達は渋々従います。そして、若旦那の連れと言われた私達、そろそろとその場を後にします。すると兵士の一人が、食い下がります。
「その女と猿は、ユミルの・・・」
そう言った途端、兵士を鋭く睨みつけるお婆様。すると、その兵士、うっ、と言うなりへなへなと地面に崩れ落ちます・・・。
「隊長は誰だい?躾がなってないよ!」
「申し訳ありませんでした!」
直立不動で返事をする隊長さん、お陰で私達は無事その場を抜け出すことが出来ました。
湊の船着き場から外洋船の桟橋に向かう間、私はお婆様と言う方にお礼を言います。
「先程は、助けていただきありがとうございました。私、ラシルと言います・・・」
その言葉にお婆様、別にアンタを助けた訳じゃない。あの兵士達を助けただけさ、そういってニヤッと笑います。若旦那さん、その言葉に一体何のことやら、と言う感じでこちらを見ています。
「えっと・・・」
「まあ、良い。それから、ほれ、そこの」
「カヌマと申す」
猿王さん、言葉少なに挨拶をします。
「素性はわかっておる。報告を聞いた時は、信じられなかったが。アンタ達、一体何しに来た?」
お婆様、ギロリと私を睨みます。
「行商ついでに、ザムで最初に祀りがあった神殿、そして鳥族の聖地も行ってみたいです」
「ふん、物見遊山のはずはなかろう?」
お婆様、疑わし気にこちらを見ます。
「私にも理由は分かりません。ただ行けばわかるはずだと」
「アンタ、宣託を受けたね」
「一体どういうことですか?]
若旦那さん、蚊帳の外に置かれて少しイライラし始めます。
「この子達はね、髭将軍のパルバク侵攻を僅か半日で退けた、龍使いと猿軍の親玉だよ!」
お婆様の言葉に、どよめく周囲。オロオロする若旦那さん。
(姐さん、もう我慢できない。出ます!)
(ちょっと待ちなさい!)
私は、龍達を諫めます。このお婆様、私を試している気がするの・・・。




