罠
大臣殿、薬師殿と御付き頭が相談し始めたのを見届け、宰相殿に声を掛けます・・・。
「宰相殿、仕事の事は忘れ、ゆっくり休まれるが良い!」
「一度止まれば、もはや再び走り出せぬ・・・」
宰相殿、大臣殿の慰めにポツリと呟きます。
「宰相殿らしくもない・・・。いや、そうだな、確かに我らの仕事は重い。その気持ち解らぬでもない。だが、まずは回復が大事だ。薬師殿と相談せよ」
大臣殿、努めて明るく振る舞い部屋を後にします。
(さて、儂はいつ迄この宮殿で働けるのか? 案外、次は儂の番かもしれぬ・・・)
と胸の内で呟きながら。
そして大臣殿、自室へ戻る途中、宮殿警備担当グディシュさんに声を掛けられます。
「ちょうど良かった。今、お部屋に伺おうとしていたのです」
「何かわかったのか?」
「はい・・・」
大臣殿の言葉に頷くグディシュさん。
「こちらをご覧ください」
大臣殿の部屋に戻って、見せられたのは双六の盤木。
「これがどうした?」
「はい、盤木をこうすると・・・」
グディシュさん、美しく装飾された幾何学模様の盤木、何か所かコンコンと叩き、触った箇所を僅かにずらし始めます。すると突然、盤面が開き中に空洞が現れます。
「な、何、盤が開いた・・・」
「はい、これは、宰相殿の部屋にあった双六の盤木、中には、呪が仕掛けられておりました」
「そんな手の込んだ方法で、宰相殿を狙っておったのか・・・」
大臣殿、グディシュさんの言葉に呆然とします。
ふと大臣殿、我に返り自分の双六の盤木を見せます。
「儂の盤木は大丈夫か? まさかこれも仕掛けが?」
「大臣殿の盤木は、この文様がございません。大丈夫なはずです」
グディシュさん、そう言うと盤木をコンコン叩いたり触ったりしますが、盤面は動きません。ご安心を! と笑って大臣殿へ盤木を返します。
「宰相殿に掛けられた呪い、効きが早い類のもの。しかし、常に平静を保っておられたご様子。恐らく、ご自身の気力で呪いを押さえ込んでいたのでしょう・・・」
「・・・」
大臣殿、先ほどの宰相殿の様子に、なんともやるせない思いが募ります。
「御付きの者によれば、これは昨年秋頃に宰相殿へ贈られたものだとか。今、これを宰相殿に贈った人物を探しております」
グディシュさん曰く、宰相殿への呪いの解除は、呪いを掛けられた期間以上を要するとか。
「頼む、これを仕掛けた奴を必ず捕まえてくれ!」
大臣殿、グディシュさんに心からそう頼みます。
しかし、何故宰相殿が狙われたのだ? ザムの意趣返しでもあるまいし・・・。




