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Twin Fate  作者: Hiz
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Chapter 10 Affection Field 03

「ヴェルモーラ、ですか?」


結局、学校ではヴェルモーラが自己紹介をした時以上の出来事は何も起きなかった。


放課後、家に帰宅してからもアイの不機嫌さは続いていた。ヴェルモーラの来訪について少年の姿をしたデコイルに話すと、彼はそう問い返してきた。


デコイルはソファーの上で体を伸ばした。


「第2位か……。でも僕の記憶だと『色欲しきよく』はもっと下の順位だったはずなんですけどね」


上位の Void は人間の七つの大罪に基づいた計7体が存在する。ヴェルモーラはその第2位であり、色欲を司る存在だ。


だが、俺が戦った「強欲ごうよく」の名を刻まれた Void にしては、それほど強欲に関連した何かを感じることはなかった。


アイの方は、その点を見過ごすつもりはないようだ。


「色欲の性質に関連した何かが関わっているはずだ……。それに、俺はあいつに魔法を使うことができなかった」


「魔法が使えなかった、ですか?」


「ああ……。打ち消されたわけでも、防御されたわけでもない」


「となると、ヴェルモーラは周囲の者に魔法を使わせない能力を持っているということになりますね」


デコイルが言ったが、アイは首を横に振った。


「周囲だけじゃない。今も使えないんだ……。スキルもな」


その言葉に、デコイルは目を見開いた。


「そこまでですか?」


「ああ。デコイル、お前がまだ俺に話していない Void の情報はあるか?」


二人が話している最中、俺は疑問に思って口を挟んだ。


「なあアイ、そんなこと言っちゃっていいのか? 戦えないと知られたら攻撃されるかもしれないぞ」


デコイルは俺に向かって高らかに笑った。


「そうしたいところですけどね~! でもまあ、普段は偽体フェイクばかり送っていたから失念していました……。僕自身、この世界に来てからは『世界の封印』に阻まれて、何一つ力を使えないんですよ」


「そうなのか?」


「世界の封印は強固ですからね。実際、『世界』というのはそう簡単に抗えるものではありません。僕も例外ではないんです」


デコイルはアイの方をちらりと見た。


「もっとも、自力でその封印を解いてしまうような人も中にはいるみたいですけどね~」


アイは腕を組んで俺を見た。


「俺たちはシステムに抗うことはできない。そして『世界』は、どこの世界であろうとシステムが設置されている場所そのものだ」彼はため息をついた。「たとえここがスキルや魔法に関係のない場所であってもな。そして、その封印こそがシステムだ。来訪者であれ帰還者であれ、能力を制限されるのは甘受せざるを得ない」


俺は喉の奥で「なるほど」と声を漏らした。一方でデコイルは「封印を解除しまくっている人がよく言いますよ……」とぶつぶつ文句を言っている。


俺も少しデコイルと同意見だった。それから、言葉を続けた。


「その『世界』ってやつは、そんなに偉大なものなんだな」


「そうだな……。どのみち、システムより高位の存在が創り出したものだ」


以前、こんな話を聞いたことがある。俺たちの異世界の力を封じ込める「世界の封印」は、均衡を保つためのものだと。そうでなければ、俺たちのような力を持つ者がこの世界に紛れ込んだ際、世界が崩壊してしまう。


だからこそ封印は必要なのだ。理屈ではない。異世界の力を持つ者は、ただ「封じられねばならない」というだけのことだ。


俺はまだ疑問が解けない。


「もし封印が本当に均衡を保つためのものなら…… Void も何かしらの影響を受けるはずだろ」


デコイルは素早く指を振った。


「そこが面白いところなんですよ、勇者様。実は Void は自力で世界を渡ることができる上に、世界の自己防衛システムに検知されないんです」


俺が眉をひそめると、デコイルは補足した。


「透明化して侵入してくるから、手荷物検査に引っかからないようなものです」


「そいつは厄介だな」


デコイルは肩をすくめた。


「でも、どれほど面倒でも、完全に隙がないわけじゃありません。以前来た聖女様なんて、全く封印されていませんでしたし……。まあ、彼女は支援職サポーターだから、フルパワーを出したところで脅威にならないと判断されたという説もありますが。僕が言いたいのは、この世界のシステムは入国時のチェック一回きりだってことです。その後にどうやって均衡を壊そうが、お構なしなんです」


それもそうか。最初に均衡を保つ役割を果たした後は……。例えば今の俺は、エヴァに封印を解いてもらい、 Gate Keeper を倒したことでスキルをより多く使えるようになっているが、それが俺に悪影響を及ぼすことはもうない。


デコイルは冷蔵庫から水を取り出しながら話し続けた。居心地の良さはまるで自分の家のようだな……。


「話を戻しましょう。アイさん、僕が持っている Void の情報はすべて話しましたよ。ヴェルモーラの能力が何かと聞かれても、僕に答えはありません」


「そうか?」アイは冷ややかに目を細めた。


「ええ。僕は Void の存在を知っているだけです。個別の能力や使用するムーブセットといった深い部分までは持ち合わせていませんよ」


デコイルは炭酸飲料のボトルを持って戻ってくると、ソファーに座り自分なりに状況をまとめた。


「スキルも魔法も使えず、さらには『 Absolute Isolation 』を持つアイさんにまで影響を及ぼし、ヴェルモーラから離れた後もそれが続いている……。単に『悪い』どころの話じゃありませんね。えーと……『おしまい(シパ・ハーイ)』って言葉を使ってもいいですか?」


「子供が乱暴な言葉を使っちゃダメだぞ」


俺は思わず注意した。


デコイルは気に留めずに笑った。


「子供とか大人とか、それは年上が年下を抑えつけるための定義に過ぎませんよ。それに、あなたたち二人だってまだ高校生で、どう考えても大人じゃありませんし」


「反論できないな」


「でも、物分かりのいいイイコな僕は、『最悪さいあく』という言葉に留めておいてあげますよ」デコイルは笑った。「ところで、女神様はどこへ行ったんですか?」


まるで何かが起きていることを察しているかのようだ。その「何か」が何なのか、俺にもまだ確信は持てないのだが。


俺はアイの顔を見てから、デコイルに答えた。


「ヴェルモーラが現れてから、エヴァの様子が変なんだ」


「変?」


俺が言うと、デコイルが言葉を繰り返した。


アイがデコイルの疑問に割り込むように言った。


「ヴェルモーラが何を企んでいるかはまだ分からんが、あの女神にも影響が出ている」


「だから、今の話し合いに女神様を呼んでいないわけですね」


「……そういうことだ」


呼ばなかったというわけではない。だが、あの時からエヴァはぼーっとしていて、いつものようにこちらの事情を知りたがる様子もなかった。


ヴェルモーラが何をしているにせよ、それは女神に影響を及ぼしている。


対処しようにも、俺もアイも異世界の能力を使うことができない。いや……正確には「攻撃」に分類されるものだけが。だが、それだけでも……。


最悪さいあくだ……」


俺がそう漏らすと、デコイルは満面の笑みを浮かべた。

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