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Twin Fate  作者: Hiz
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Chapter 9 Their World , Their Return 2.5

亀裂の利用法はさほど難しくはない。本来、装置さえ揃っていれば、知識がなくとも異世界渡航は容易に行える。


必要なのは「亀裂」と「鍵」だ。


亀裂を門とするならば、鍵はその門を開く役割を担う。


亀裂はどこであっても構わない。だからこそ、以前はデコイルが渡航してこれないよう、ユウに亀裂を閉じさせていた。


だが、現在の敵は Void だ。鍵を使わずに世界を越える能力を持っている。


おそらく亀裂すら必要としない、と推測してもいいだろう。


それは Void の話だ。


だが俺にとっては、ベータへ渡るにはやはり亀裂が必要になる。だから……まずはこの Gate Keeper を片付ける必要がある。


事が済めば、亀裂を完全に閉鎖する。


目の前の亀裂の Gate Keeper は……キマイラか。


幻獣型のモンスター。獅子の体に、鷲の翼、蛇の尾。


上位種ではあるが、ベルの足元にも及ばない。


「わ、わわわ……」


エヴァのパジャマ姿のリリィが、杖を抱きしめながらじりじりと後ずさりした。


「あれを倒さないと帰れないんですか!?」


「ああ」


実のところ、ゲートキーパーに関与せずとも亀裂の利用は可能だ。だが、最終的に亀裂を閉じるために倒さねบならないのなら、先にやろうが後にやろうが大差はない。


「あ、あの……」


おろおろとするリリィに、俺は告げる。


「バフは不要だ。俺は他者からの干渉を受けない」


「そ、そうでした…… Absolute Isolation ですね?」


「そうだ」


あらゆる干渉を拒絶する俺のスキルの一つ。それが俺に益をもたらす強化魔法バフであってもだ。これまで、この拒絶を打ち破った魔法もスキルも存在しない。


Void ……警戒しておく必要があるな。


情報が少なすぎる。


会話の最中、キマイラが翼を広げた。滞空するその獅子の口が大きく開かれる。


体内で凝縮されるマナを感じる。……魔力投射か。


「ア、アイさん!?」


俺はキマイラを細めて見据えた。リリィは左右をキョロキョロと見回し、ひどく狼狽している。


Dorn ……いや、Gura 級で十分だろう。


そう判断し、俺は掌を突き出した。


「…… Gura 『 Tempest Spiral 』」


魔法が発現し、キマイラの周囲に継続的なダメージを与える暴風が荒れ狂う。ほんの数秒のことだった。キマイラの体は、その核となる魔力源もろとも霧散した。


亀裂は利用可能になり、同時に閉鎖の準備も整った。


「ほう……無詠唱でこの規模ですか」


「……ああ」


「でも、あれはキマイラですよ? 普通、 Gura 級の魔法で倒せる相手じゃないはずなんですけど……」


リリィの言い分は正しい。


スキルは使用者のパラメータに依存して威力が決まるが、魔法の威力は階級によって規定される。 Mir 、 Zai 、 Vos 、 Gura 、 Dorn 、そして最高位の Alda 。


つまり、使用者のパラメータがどれほど高かろうと、魔法そのものの権能は階級の枠を越えない。


Gura ではキマイラを仕留めることはできない。それが魔法に精通する者の常識だ。


「……千年の魔導師を舐めるな」


「おおーっ! さすがです!」


深く追求してこないところは、あいつの良いところだな。


その後、俺は自分の鍵を使い、 Portal を展開した。デコイルから回収した鍵は破損していたため、使用するにはリスクが伴うからだ。


リリィは出現した Portal を不安げに見つめていた。


「……どうした?」


「その……帰った先が、こっちに来た時みたいにダンジョンの真っ只中だったらどうしようかなって。私、聖女ですし、魔物に囲まれたらちょっと危ないかも……なんて」


「……お前が来た地点に出るはずだ。だが、今さら心配することもない。あのダンジョンには、もう魔物は残っていないだろう」


ユウのパーティメンバーは、ユウを含めて四人。ユウ、リリィ、クロエ、そしてシルヴィだ。


リリィが言うダンジョンとは、彼女がこちらへ来る直前までクロエと共にいた場所だろう。


あれから一週間は経過している。クロエなら、今頃ダンジョン内の魔物を根絶やしにしているはずだ。


俺はそう考えた。……シルヴィの方は、ユウが帰還した後、สายสัมพันธ์แห่งสายลมはどうなったのか気になるところだが。


俺がそう告げると、リリィは確信を得たように頷いた。


「そうですよね。クロエさんなら、きれーいに片付けてるに違いありません! なら安心です!」


「……とはいえ、確証はないからな。ならば……」


俺はリリィに魔法をかけた。


リリィは自分の体に黒い魔力のオーラが纏わりつくのを見て驚嘆した。


「え、ええっ!?」


「俺の魔力でお前をコーティングした。数時間で効果は消えるが、それまでの間、魔王軍の幹部級以下の魔物はお前を避けるようになる」


「それ、ほとんど全ての魔物を網羅してませんか!?」


「なら、さっさと帰るがいい」


「はーい♪ ありがとうございます、アイさん!」


俺は短く手を挙げて別れを告げた。


Portal に入る直前、リリィはその青い瞳を俺に向けた。


「アイさんがまたベータに行くことがあったら、クロエさんのところにも顔を出してあげてくださいね」


「……俺に何か用でもあるのか?」


重要な用件なら考慮しなくもない。ユウの仲間である以上、赤の他人と切り捨てるわけにもいかないからな。


リリィは首を振った。


「大事な用ってわけじゃないですけど、クロエさん、よくアイさんの話をしてるんですよ。だから、会えたらきっと喜ぶだろうなって」


「……そうか」


「強制じゃないですよ! それじゃ、お先に! 失礼しまーす!!!」


そう言うなり、リリィは Portal の中へと飛び込んでいった。俺はリリィが向こう側へ到達したのを確認してから、亀裂を閉鎖した。


クロエ、か…….


ユウのパーティメンバーの中では、俺が最も深く関わった相手かもしれない。


『あんた! 魔導師なんじゃないの!? なんで私より槍の扱いが上手いのよ!?』


……初対面はあまり芳しいものではなかったが、最終的にはいろいろと教えてやったものだ。


俺を師匠か何かだと思われていなければいいのだが。


「Void の件が片付いたら……考えるとしよう」


独り言をこぼし、俺は学校へと向かった。テレポートしたところで遅刻に変わりはない。俺は急ぐこともなく、一歩一歩、歩みを進めた。

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