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Twin Fate  作者: Hiz
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Chapter 8 Enemy Breakdown 01

……数百もの影の軍団が、周囲の空間から次々と湧き出していく。


スキル「Shadow Armyシャドウアーミー」は、指定した数の影の個体を生成する技だ。原理的には召喚術とは異なり、出現したものはスキルの「効果」として扱われる。


スキルの威力は発動者のステータスに依存するため、その結果……本来ならただの身代わりやデコイに過ぎないはずの俺の影たちは――


高位の冒険者に匹敵する強さを得ていた。


影の軍団がラストダンジョンになだれ込んできたヴォイドの群れに襲いかかる。黒い閃光のような動きが視界を切り裂き、ただの物理攻撃だけでヴォイドどもを容易く屠っていく。


「わあ……」


デコイルが驚いたように喉を鳴らした。


「誰がサボっていいと言った?」


「いやあ、僕のスキルはアイさんのほど強くないですからね。そっちはお任せしますよ」


デコイルは無責任に肩をすくめて見せた。


彼の「Shadow Replica(影の複製)」は、俺とユウが初めてそいつに出会った時と同じ姿の偽物を作り出すスキルだ。紫のローブを纏い、魔王に似た仮面をつけた姿。


数は俺のスキルほど多くはなく、十体にも満たない。だが、その強さはヴォイドを相手にするには十分なものだ。


「……」


さらに、それらの複製が攻撃を受けて損傷するたび、デコイルから魔力が流れ込み、瞬時に修復されるのが見て取れた。


「そんな目で見ないでくださいよ。自分のスキルをマナで直して何が悪いんです?」


「ああ……」


スキルの産物は戦闘中にダメージを受ける。魔力を送り込んで修復し続ければ、魔力が尽きるまでスキルの効果を維持できる。それは俺の影の軍団でも可能なことだ。


だが……それは魔力の消耗が激しすぎる。普通なら、もう一度スキルを唱え直した方が効率がいい。


なぜデコイルがそんな非効率な真似をするのか、俺は疑問に思った。


「……」


影の軍団をすり抜けたヴォイドの一体が、俺の頭上から飛びかかってきた。


……ターゲットはデコイルではなく、俺だけか。


俺はそのヴォイドの首を掴み、そのまま地面に叩きつけて砕いた。


掴んだ腕に黒いオーラが纏わりつく。身体の一部に魔力を流し込み、破壊力を高める技術だ。


「アイさん、普通ヴォイドを素手で叩きつける人なんていませんよ……」


「感触がモンスターとは少し違うな……」


俺は軽く手を握り込みながら、そう零した。


「そりゃそうですよ、こいつらはモンスターじゃないんですから」


模様のない人形のような連中――この膨大な数のヴォイドも、影の軍団の猛攻によって今や疎らになってきた。それでも、俺はまだ油断していない。


「……」


こいつらはスキルや魔法のシステムに縛られていない存在だ。


考えを巡らせている最中、影の軍団が異常な勢いで俺の元へと戻ってくるのを感じた。


ヴォイドに倒された分があるにせよ、これほど敵の数が減っている状況で、数百体が同時に消滅させられるとは……。


「やれやれ、来ちゃいましたね……」


デコイルが人形どもの侵入してきた方向を見つめた。ラストダンジョンに近い「ダークテリトリー」特有の霧に包まれた空に、何かがいた。


俺はそいつを見上げる。


「……本体か?」


「『ボス』と言った方が正確ですね。さっきまで片付けていた雑魚どもは、ただの生まれたてのヴォイド。だからアイさんはスキルだけで……あの地面に叩きつけるような真似で倒せたんです」


「あいつにはスキルが通用しないと言いたいのか?」


「そんなところです。あいつらはスキルや魔法と同じ概念で動いていません。ダメージは与えられますが、威力は半分以下に軽減されます」


「半分以下とは……具体的にどれくらいだ?」


「えっ?」


デコイルが小首をかしげた。


俺は呆れ混じりに答える。


「ダメージの軽減だ。同じ概念だろうがなかろうが、どれほど削られる?」


ボロ布のような服を着たみすぼらしい少年、デコイルはおどおどと指を折って数え始めた。


「え、ええと……数字で言うなら、八十パーセントくらいはカットされるんじゃないですかね……」


百のダメージが二十になる。


なかなかの軽減率だ。


デコイルが指を立てる。


「でも、対処法がないわけじゃありません。確かにスキルや魔法は効きにくいですが、もし……」


デコイルが喋っている最中、俺はあいつに向かって手を伸ばした。あいつ――ヴォイドは、不可視の光線で生き残っていた影の軍団を壊滅させている。


おそらく影の軍団が俺のスキルだと察知し、標的を定めたのだろう。デコイルの話では、奴らは強者を狙う習性がある。ここでの強者とは、俺のことだ。


俺が掌を向け、魔力が渦巻き始めた瞬間、デコイルは飛び上がって数メートル後方へ退避した。


「……あんた」


「さっき、対処法を教えようとしたな? それは後で聞こう」


伝説級モンスターのHP……いや、魔王のHPを基準に推測するとしよう。


もしこのヴォイドがそれと同等の耐久力を持っているとして、ダメージを八十パーセント軽減された状態で、俺の魔法は一撃でそいつを仕留められるか?


俺が興味があるのはそこだ。


発動の前に、ホログラムのウィンドウを視界の端に捉える。


7 Void of Sin(七つの大罪の虚無)


第三位:Dymoraダイモラ – The Hollow Envy(空虚なる嫉妬)


「『空虚』な割に、順位なんてあるのか……」


「僕らのシステムなんてそんなもんですよ、気にしないでください。順位が高いほど強い、とだけ思っておけばいいんです。……げっ、あいつ三位だったのかよ……」


デコイルは自分のウィンドウを見ながら引きつった笑いを浮かべた。


「いい実験台になりそうだ」


「でもまあ、そんな奥の手を僕にタダで見せちゃっていいんですか? 後で後ろからガブッとやっちゃうかもしれませんよ〜?」


デコイルがおどけて言った。


俺は視線だけを向けて告げる。


「デコイル」


「はい?」


「盾を張れ」


その言葉が終わるか否か、デコイルは以前見せたのと同じ防御魔法を唱えた。賢明な判断だ。「Aegis Wallイージスウォール」は最高の防御魔法の一つだからな。


だが……俺がダイモラに放つ魔法に対し、その盾は無意味だ。威圧感から身を守る程度の役には立つだろうが。


「……我は言の葉を紡ぐ者、秘めたる力の鍵を開く者。諸々の元素よ、我が魂を包み込め。この言霊をもって……」


詠唱破棄は可能だが、このレベルの魔法ともなると、一字一句の祈りを省略するのは難しい。


それでも……少しばかり、アレンジさせてもらった。


「『Activate(起動)』……」


短いコマンドが唇から零れる。


ヴォイドの詳細は後回しだ。本来ならダイモラに何か技を使わせ、重要なデータを取るべきなのだろう。正直に言えば、そうすべきだった。


だが。


ここで一撃で片が付くなら、文句はあるまい……。


Aldaアルダ――」


……そしてこれらすべては、数日前の出来事だ。

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