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毒竜に花束を  作者: 剛毛戦士
【2章】
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閑話

 ――街道沿いの町ヒエルタリア。

 常時であれば、花と神への畏敬で溢れたこの場所は、王国の庇護を失って今や屠殺場と化していた。

 人々の営みは亜人種によって陵辱され、屍山と血河で満たされている。狼人コボルトや子鬼ゴブリン、巨鬼オーガ、の三種混合の群れが、思い思いの欠けを補うために住民たちを消費していた。

 人になれなかった者、故に亜人。その怨讐は凄まじく、人間への所業は全て悲惨を極めている。


 魔王はその最中をひたすらに進む。

「堅物め、お前は曲がることを知らんな」

 構わず突破せんとす魔王をゲオルギウスが毒吐く。

 彼女は歪鎧の背を余所に、民草の救助を優先したのだ。

 抵抗する亜人種。毒竜は殺戮を以て返答する。

 弓矢による傷も、刀傷も、全て構わず、剛腕にて薙ぎ払う。

 女を担ぎ上げ逃げるオーガの前方に回り込み、腹を引き裂いた。

 血肉と臓物に塗れた女。衣服は千切られて乱れ、股間は自身の血で汚されている。

 開け放たれた口はわなわなと震え、眼は大きく見開かれる。

 解放されてもなお恐怖と怯えに竦んでいた。


 ゲオルギウスは檄を入れる。

「行け!とって食ってしまうぞ!」

 魔王だ、悪魔だ、助けてくれ。

 悲鳴と絶叫を交えながら、それでも必死に立ち上がり、他の住民たちを追ってよろよろと駆けていった。

「長くは保たぬだろうが、尊厳のある死は迎えられるだろうよ⋯」

 フン、と鼻を鳴らしながらも毒竜は満足気だった。

「お前、いま呆れたか⋯?」

 魔王の心内に微かな溜息を察して、彼女はギロリと魔王を睨んだ。

「私の永き寿命の一間の戯れよ。気にするな、捨て置け」

 町は死骸と静寂に包まれ、生きる者たちは小さな地獄から逃げ果せた。


 毒竜は思う。レドゥアならば、もっと多くの民を救えただろう。


 だが、私には、これが精一杯だよ――。



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