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岩山から落ちて  作者: 寿和丸
第1章 縄文の世界

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第20話 静かに隠れろ!

少し心配だったが、イサは上手く馬を曳いていた。

最初こそ、おっかなびっくりだったが、意外と馬が大人しいので安心したようだ。

そのまま二人で山道を進んでいく。

その途上、木が生い茂っている道から外れることにした。

「どうやら、やつらが追い付いてきたようだ。ここに潜んで、あいつらをやり過ごす。」

遠くからではあるが、男たちの話声が風に乗って流れてきたのだ。

イサを連れて、少し下にある藪の中に隠れることにする。

イサも事態を飲み込んでおり、しっかりと頷く。

そして曳いてきた馬も、大人しく付いてきて、地面に生えた草を食んでいる。


間もなく、ガヤガヤと言いながら男たちが10人近くやって来た。

「畜生、何処にいったんだ」

「この山に来たのは間違いねぇだろう」

「探せ、探すんだ」

時々男たちは石や棒切れを周囲に投げつけて、周辺に目を凝らす。何も見逃さないように、じっくりと探している。

馬は非常に臆病な生き物だ。ちょっと近くで物音がしたり、虫が急に鳴きだしただけでも、驚いて、いななき逃げ出してしまう。

やつらは、そんな馬の性質を良く知っていた。投げた小石や棒切れが偶然にも馬に当たるか、当たらなくても近くに投げ込めば、馬が驚いて暴れ出すのを見込んでいた。

なかなか油断の出来ない連中だった。

馬が見つかれば、すぐ、ケンたちが隠れている場所も分かってしまう。万事休す。

今のケンたちでは体格が違いすぎる、喧嘩にもならないだろう。


そうかといって、今度もまた弓を使って、追い払うのは無理だ。

今度の敵はもっと増えている。全員を弓で射る前に、捕まってしまう。

崖の所でも、敵が慌てていたから、上手くいっただけで、下手をしたらこっちがやられていた可能性が高いのだ。

捕まったら、ケンでも負ける。ましてこっちにはイサもいる。とても戦いに挑む状況ではなかった。

今、できることは息を潜めて隠れるだけ。

ケンはイサに落ち着いているように言いつけ、馬たちにも静かにするように念じておいた。


念じた効果がすぐ現れる。

男たちの投げた石の一つが、馬のすぐ目の前、食んでいる草近くに落ちたのだ。

「げ!」ケンは思わず、息を飲む。

(なんだって、石ころが飛んでくるんだ。馬が驚いて、暴れ出す)

あいつらに見つかってしまう。そうなれば、もう終わりだ。最悪を覚悟した。

ただ、馬は少しびっくりしたようだが、相変わらず、うまそうに、むしゃむしゃと草を食み続けている。

驚いて、いななきも、逃げ出しもしないで、ただ草を食み続けていてくれた。


これが、ケンの持つ才能だった。ケンは周囲の者の感情をある程度コントロールできる。それが馬にも効果があって、石が飛んできても大人しくしていた要因だった。


その後、上の方でガヤガヤしていた男たちが離れて行った。

ただ、まだ油断は出来ない。男たちは本拠地に戻るはず、いずれ、また引き返してくるはずだった。

その間、ケンもイサもじっとしているしかない。走って逃げるなんて論外である、すぐに見つかって捕まるだろう。

ただ静かにして男たちが立ち去ってくれるのを待つしかない。

馬たちに、いななきも走り去りもしないで、大人しくしてくれと願うだけだ。

ただ、静かにしていた。


そして、案の定、男たちがまた戻って来た。

相変わらす、小石を放り投げながら、大きな声を出している。

「おっかしいな。そんなに遠くに行けるはずがねぇんだ」

「どっかに、隠れているんだ。見つけ出すんだ」

「馬が、こんな山に隠れられるはずがねえ、どっかにいるはずだ」

「でも、何処にいるんだよ。これだけ探したんだ。馬が見つからないはずはねえだろ」

「馬をどっかに逃したんじゃねえのか。」

「そんなことを、するか。馬は貴重品だぞ。」

「馬は絶対、必要なんだ、馬を手放す奴なんていない。」

「でもよぉ、こんなに探したって、いねぇじゃねぇか。お頭に言うしかねぇぞ」

「だが盗まれたまま、帰って見ろ。俺たちはどうなるか分からねぇぞ」

「ああ、お頭が、どれだけ怒るか、考えただけでも恐ろしい」

男たちの声には焦りがあった。


(お頭?あいつらより上の奴がいるんだ)そう思っていると、またも、馬のすぐ傍に石が投げ込まれた。

ただ、今度もまた馬たちは、大人しく草を食み続けている。

馬に気付くこともなく、男たちの大声が藪まで届てくる。

「本当に、こっちを通ったのかなぁ」

「わかんねぇな。やっぱりこっちの道は通らなかったんじゃねぇのか」

「そうだなぁ、これだけ探して馬も見つらないんじゃ、あっちの山にいったんじゃねぇか。」

「うん、人は隠れていられるが、馬を隠し通すことなんかできねぇ」

「だとしたら、そっちも行って見るか」

「うん、ここまで探して、いなかったようでは、来てないようだな」

やがて、男たちは諦めたのか、去って行った。


男たちの声が聞こえなくなり「さあ、出かけるぞ」イサを励ますように言う。

わずかな期間であったが、いろいろなことがあって、イサもどこか顔つきに甘えが消えているようだ。


馬がこの時代に出現するのは全く予想外だった。なにか変わっている。

(これは、神が作り変えたことだろう。俺を縄文の世界に送り込んだだけじゃなくて、世界も変えたんだ。おそらくまだ、予想もしてないことが起こるぞ)

そんな風に考えながら家路を辿たどった。


いやぁ、遂に第20話です。それも毎日連続投稿です。私にしてはこんなに続けられたことはなかった。

今少し乗っているようです。

今後も、このペースが続く約束はできませんが、少しでも長く続けたいと思います。

どうぞ、ご愛読、お願いします。

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