第4話 遅れてやって来た救世主
第4話です。
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「ジャジャーーン!! ————————!!」
擬音だからか、これは聞こえた。黒い影のような穴から白髪のアホ毛の人は手を大きく上に挙げて元気よく飛び出してきた。何やら自己紹介のような感じのことを言っている気がするが日本語じゃないので分からない。
黒と白を基調とし、青を指し色にしたとっても風変わりな民族衣装のような装いで、額に赤いバンダナを巻いた男性がウッキウキで深淵から出てくる。インパクト強すぎだろこの人。
俺がこの変な男に訝しんでいるとスラさんは言葉が分かるのか教えてくれた。
「むーむむ、むむ(カイト・ウォーバーン、参上だって)」
「カイト・ウォーバーン?」
俺が聞き返すと声に反応して、そのカイトとやらが振り向き俺の顔を見下ろす。中々綺麗な顔をしたイケメンのお兄さんだった。
「——! ————!(そうさ! もう僕が来たからには安心してくれ!)」
満面の笑みでカイトは言い、それをスラさんがリアルタイムで翻訳してくれた。ほんっとこのスライム優秀だな!!
「———————! ————————!(少し待ってくれ! すぐに処理するから!)」
そういうとカイトは改めてデスバラッドの方へ向き直おり、何やら技を出そうとする。しかしあっけにとられたようにポカンと口からこぼした。
「————? —————————?(あれ? もう死んでるじゃん)」
なんだよもー! と急に腰を振ってぷりぷりしだす身長約一八〇センチくらいの男性。なんかこの人いろいろと残念なにおいがするぞ……。というかデスバラッドは頭からでっかい黒槍がぶっ刺さってるんだから死んでるに決まってるだろう。生きてたら怖いわ。
「—————? ——————————————?(おかしいなぁ? これくらいじゃ死なないんだけど?)」
……うそやん? 嘘だと言ってよバーニィ。だってもろに頭からお尻まで串刺しだよ? それで死なないって何ですか。化け物ですか。あ、バケモノだったわこいつ。え、じゃあ、俺が腕を斬って、目をえぐったくらいじゃピンピンしてるってコトォ……? やばいやん。
俺が衝撃の事実に戦慄していると、うーん? と首を傾げてカイトはデスバラッドの状態を詳しく見る。すると切り落とされた腕と目を見るやいなや、急にぐるんとこちらを振り返った。
「——————————?(これ君がやったの?)」
そう聞くカイトは座り込んで後ろに転がっているデスバラッドの腕を指して言う。カイトの瞳はさっきの朗らかな感じとは真逆の冷めた目つきで俺の目を射抜いてきた。なんだこの人、急に雰囲気が変わった。まるで殺人鬼のような目だ。
「ひゃ、ひゃい」
あまりの重圧に言葉が詰まり、裏返った声で頷き、返事をしてしまう。地面に這いつくばる俺を見てカイトはころっと笑顔に変わり、うんうんと嬉しそうに頷いた。
「————!—————! ――――――――!(そうか!そうか! ならそのボロボロの体も納得がいくよ!)」
俺の破れきった血まみれの服に、傷だらけの体を見てニコニコしていた。やだこの人、死にかけの人を見るのが好きなのかしらん?
ドン引きした眼差しを送るとカイトは謝りながら俺の体に手をかざした。何をするのかとカイトの方を注視しているとどこからともなく彼の手の内から光が漏れ始めた。
「————————(キュア)」
そう呟くと、淡い光が俺とスラさんを包み始める。その温かい光が体に染みていくと、痛みがどんどん引いていく。見れば傷なんかもきれいさっぱり消えていた。しかもあれだけボロボロだった制服も見事に修復している。
「うわ、すげ……」
気づけば腕も足も動くようになっている。俺を覆っていたスラさんも治ったのかすっかり元の可愛らしいフォルムになりぴょんぴょん跳ねていた。
「むむーーっ!(治ってるーーっ!)」
「おお! スラさん元気になった。なんともないのか?」
「むん!(この通り!)」
これが魔法……! 俺が使ってたよく分からないものとは違ってちゃんと魔法らしい魔法に、俺は感動していた。俺の心配など杞憂に過ぎないほど、スラさんは元気に跳ねまわり触手を伸ばして力こぶのポーズを取ったりする。この光景に疑問を持ったカイトは俺に質問をしてきた。
「—————————————?(君、もしかしてそのスライムと話しているのかい?)」
カイトの言葉をスラさんの翻訳を通して話を聞いているとカイトはそのまま話し続けた。
「———? ———————————?(ん? あれ、僕の言ってることわからない?)」
あら? と顎に手を当てて不思議そうな顔をする。まぁ、この世界の人間じゃないんでね。言葉わかんないよ。……ん?でもスラさんは日本語も分かって異世界の言葉も知ってるって何者なんです?
「ええ……まぁ……」
バツが悪そうに俺は頭を掻きながら答える。その態度にカイトは腕を組んで頷いた。言葉は通じていないが、俺の雰囲気からニュアンスを受け取っているようだ。
「――――――――!(ならこれを授けよう!)」
思いついたかのようにカイトは人差し指を立て、そのまま指を振った。するとカイトの指先から青い光が発し、その光球を俺へと飛ばした。
「うおっ!」
飛ばされた青い光球は俺の身体に染み込んでいくように消えていく。何かの魔法をかけられたようだが、少し待っても何も起きない。なんなんだ?
「これで、僕と会話ができるかな?」
「!?!?」
スラさんの声じゃない、カイトの口から出た声だ。スラさんの翻訳を通さなくてもカイトの言葉が分かる。俺は素直に驚いていた。
「むー? むーむー?(あれ? 今のって言語魔法?)」
「言語魔法?」
俺がスラさんの言葉の続きを待っているとカイトはやっぱり!と急に割り込んでくる。
「君! このスライムと話ができるんだね!! すごいなぁ!」
大げさな身振り手振りをしながらカイトは興奮してスラさんを両手で掲げた。急に持ち上げられてびっくりしたスラさんはヌルっとカイトの手からすり抜けて俺の足元へ隠れる。カイトは「あぁ!」と残念そうにスラさんを見ていた。
「あの……すいません。カイトさんでしたっけ。俺は鬼束紅桔っていいます。名字が鬼束で、名前が紅桔です。こっちはスラさんで会話ができるスライムなんです」
怯えるスラさんをなだめて俺はカイトと先ほどの話を続ける。その話にカイトは面白そうに聞いていた。
「そうか! コーキくんっていうんだな! 珍しい名前してるね! そしてスラさん! 僕はカイト・ウォーバーン!二人ともよろしく! 僕もスラさんと話がしたいなぁ!」
笑顔満点でカイトは俺とスラさん同時に握手を求めてきた。戸惑いながらも俺は握手をしてスラさんも触手を伸ばした。掴むとカイトはブンブンと振り回し、俺とスラさんの腕は上下に激しく揺れていた。
「そうだ! スラさんも話せるようにしてあげよう!」
「ええ?!」
「むむっ!?(ええっ!?)」
カイトから出た思わない言葉に俺とスラさんは驚愕する。「何も問題は無いよ」とカイトは鼻歌を交えながらさっきのように人差し指を振って青白い光を明滅させる。そして糸がするりと伸びていくように光が集い、スラさんの周りをくるくると囲った。すると突然強い光を放って霧散していった。
「これでスラさんも話せると思うよ!」
「嘘だろ?!」
「ほんと!?」
あ、しゃべってる。足元の青いぷるぷる球体がしゃべってる。
「う、うおおおお! ボク本当に話せてるよ! コーキ!」
「なんでや!!!!」
つい関西弁が出てしまった。さらさらと俺のたった一つの自慢できることが容易く崩れ去ってゆく。スラさんは言葉をちゃんと発音できることに興奮し、戦慄いていた。
「モンスターが言語を話すなんて普通はあり得ないんだ。まぁ僕もこの言語疎通魔法が実際に効くとは思わなかったけどね!」
カイトはてへっ☆と舌をぺろっと出してウィンクをして握りこぶしでこつんと頭を突いた。目の前で実際にこんなことするやつ初めて見たわ。しかもさっきまでの自信は何だったんだ。とんだ虚勢を張るお兄さんだなこの人。
「改めてスラさん! よろしく!!」
「うん!!」
カイトとスラさんはガッとお互いの腕を組んでキラキラと友情を育んでいた。案外似た者同士かも知れないなこいつら……。
「それにしても危ないところだったねぇ。あのデスバラッド相手によく生きてたもんだよ!」
「ははは……。死にかけましたけどね。おかげさまで助かりました。」
カイトは肩を通してデスバラッドの死骸を見る。デスバラッドは舌が垂れて完全に動かなくなっており、下には血だまりができていた。ちょっとグロい……。
「で、コーキくんは冒険者ランクはいくつなんだい?」
「ぼ、冒険者ランクですか?」
突然、聞きなれない言葉にどぎまぎして、俺はつい聞き返してしまった。俺の怪しい態度にカイトは急に顔をしかめ、続けて問いただしてきた。
「まさか、コーキくん冒険者じゃない?」
訝しむカイトの目を俺は直視できなかった。なんせ俺のしたことは高校生が変なバケモノと戦っていたことだ。冒険者でも戦闘経験のある人間でもない。
「えと……はい……」
俺は素直に肯定した。変にはぐらかしてもカイトは見抜いてしまってバレるだろう。ここは嘘をついても仕方ない。俺はいつだって正直者なのだ。そんな俺の答えにカイトは目を見開く。
「そうか……デスバラッドはBランク相当のモンスターなんだけどな……」
「Bランクですか?」
どうやらモンスターの強さを表しているらしい。あれでBとは。全体のランクが分からないが聞く限りではそこまで強くなさそうに聞こえるが、カイトの様子からどうもそうではないらしい。
「Bランクはね、一般の冒険者が数十人でかかっても倒せないモンスターなんだよ」
「……へ」
「冒険者のBランクっていうのはね、『ある程度のモンスターをひと通り、一人で倒せる』っていうランクなんだ。それで、そこのアホ面を引っ提げて死んでるデスバラッドは、そうだなぁ……。Bランクの冒険者が十人くらいが揃ってやっと倒せるってところかな。」
「へぁ……」
「もし君が一人であそこまでの痛手を負わせることができるのはとてもすごいことだ。Bランクの中でもAランクの冒険者に近い力を持っていることになる。」
カイトは饒舌にデスバラッドの力量と、その討伐難易度の高さを教えてくれた。
まず、大元の話からすると、基本的に冒険者というのはギルドに所属しており、ランク付けを行われるらしい。といっても始めはみんな最低ランクである、Eランクになるらしい。そこからDランク、Cランク、Bランク、Aランク、そしてSランクと成績次第で昇進していく。よくある設定だ。
それぞれのレベルはE「エントリー」、主に薬草や雑用などの仕事をこなす何でも屋。D「デビュー」、ゴブリンなどの小型のモンスターを数人で相手にする。C「コモン」、オーガなどの比較的大きいモンスターを同じく数人で相手にする。B「バスター」、DとCランクのモンスターを一人で容易に倒せてデスバラッドのような強力なモンスターと戦闘ができる。A「エース」、ドラゴンなどの人類の脅威となるモンスターを倒せる。S「スペシャル」、一人ですべてのランクを簡単に済ませることのできるレベルらしい。まぁ基本的にイニシャルでランクを呼ぶからほぼ使うことは無いとのことだ。
あと、世界に指で数えるくらいにしかいないと言われている、Gランク、「グランド」級の冒険者が存在するらしい。Gランクの冒険者は世界最高峰の存在で、国と戦争しても一人で勝ってしまうほどの実力者らしい。それなんて勇次郎?
そんな俺はBランク相当にあたるモンスターであるデスバラッドに、無名でありながら腕を二本切り落とし、三つのうち二つの目を斬ったという異例の快挙をしたらしい。もしかして、俺何かやっちゃいましたか?とか言いそうな展開ではあるが、俺自身死にかけてるから全然そういうレベルではなかった。というか結果的に見ればカイトさんが来なかったら俺たち死んでたしな。
「とりあえずここにいても仕方ないし、このデスバラッドを回収してギルドに報告しよう。君たちはどうする? 僕が言語疎通魔法をかけるまでこっちの言葉が分からなかったみたいだからここら辺の人じゃあないと思うし。行く当てがないなら僕と一緒にギルドまで来ることをお勧めするよ。このデスバラッドは半分君が討伐したようなものだからね。換金したら相当な額になるはずだよ。」
ぱんっと手を叩いて、今後の方針を提案してくる。俺としても当初の目的はこの森から出て、人の住む街に行きたかったし丁度いい。問題はスラさんだな。
「あの、スラさんも連れて行っても大丈夫ですか?」
「ん?んー。少し手続きを踏めば問題ないかな。基本的に街に入れるモンスターってテイマーに飼いならされた子ばかりだからその登録がいるんだ。登録をしないとモンスターが街に侵入したっていうことになって大騒ぎになっちゃうからね。あ、それとそんなにかしこまらなくてもいいよ。僕はタメ口の方が気楽だからね」
「あ、はい分かり……分かったカイトさん」
「さんも別に要らないんだけどなー」
あははっとカイトはカラカラ笑った。スラさんからテイマーの話は聞いていたからなんとかなりそうだ。とりあえずスラさんの懸念は問題なさそうでよかった。
「スラさん、勝手に決めっちゃったけど良かったか?」
「全然いーよー。この森に住むのも飽きてきちゃったし」
引っ越し感覚で即決してきた。スラさんは触手で今日にオッケーとジェスチャーをしてくる。だんだんと人間っぽくなってきたなこのスライムさんは。
「よし、じゃあ決まりだね! 少し待っててくれ! デスバラッドを解体するから」
カイトはそういうと自分の影に手をかざす。すると彼の影がグニョリと蠢き、スーッと中から黒い影でできた剣が出てきた。
「え、いま影から出したのか?」
まるで無から有を生み出すかのような行為に俺は目を見張る。目から鱗を出しているとカイトは何も驚くようなことが無いとでも言わんばかりに告げる。
「え? こんなの闇魔法が使える人ならだれでもできるよ?」
至極当然な顔をして、何言ってんの?と言いたげな顔をする。いや、闇魔法ってなんですか。俺はこの世界にきてまだ数時間しかたっていないんだ。知らないことだらけなのは当然だ。なので恥などは一切感じず、カイトへ質問を続けた。
「あの、カイトさん。闇魔法ってなんだ」
「え!?」
俺の言葉にカイトはピタッと止まり、影の剣も中途半端なところで出かかって止まっていた。俺の聞いたことがよほどありえない質問だったのか、カイトは少し顔を引きつらせている。
「コーキくん、本気で言っているのかい?」
「えっと……まぁ……」
「…………コーキくん、変なことを聞いてもいいかな?」
「あ、ああ」
神妙な面持ちでカイトは俺の顔を見据えた。
「コーキくんって、もしかして別の世界の人かい?」
カイトの打って変わった低い声に俺はドキッとする。もしかして別世界の人間だと何か問題でもあるのか?
「そ、そうだけど……」
「え!? そうなの!?」
「やっぱりか……どうもおかしいと思ったんだよね。魔法は知らないし、言語疎通魔法無しでモンスターと会話できるし、何よりそんな見たことのない装備でデスバラッドと戦えてる。この世界の住人ならデスバラッドの恐ろしさは身に染みているはずだから冒険者でない限り、戦うことなんて考えないはずだよ。」
「あー……なるほど……」
俺の正体に一番驚いていたのはほかでもないスラさんだった。カイトは頭痛を抑えるような仕草をして困ったような顔をしていた。どうやら俺の異質さが目立ってしまったらしい。そりゃそうだ、隠してないからな。
それに制服を着た高校生がバケモノと戦ったんだ。俺の世界じゃ創作物くらいでしか到底考えられないな。……あんなのと戦った俺もバケモノか。
「だからスラさんの言葉も分かったんだね」
「え?」
「たまにいるんだ、モンスターと言葉を交わせる異世界人が。コーキくんはそのタイプかな」
「ほ、ほぉ……」
この場合、俺がすごいんじゃなくてスラさんの方が尋常じゃないと思うんだけどな。
「となると、コーキくんが別の世界から来た人間、”勇者”の可能性があるね」
「勇者?」
勇者。ゲームやラノベでよくある、あの勇者さんですか。んなまさか。俺がナイナイと手を振っているとカイトは続けて話した。
「過去にも数人、別世界から来た人間がいたんだよ。その中の一人が”勇者”だったんだ」
「その中の一人? 全員じゃないのか」
「属性魔法を三種類以上持った異世界人が勇者ってことかな」
「属性魔法?」
「まぁそこから説明する必要があるよね。でも長くなっちゃうから先に街へ行こう。」
カイトは話を切り上げ、途中まで出していた影の剣を引っ張り出し、串刺しになったデスバラッドをサクサクと解体していった。目の前で行われる生の解体ショーはまるで職人の技とでも言うべきか、串刺しの穴から血抜きをして見る見るうちに皮を剥いでいく。使い慣れた包丁のごとくカイトはくるくると刃先を回していった。そんな丈の長い剣でなぜ綺麗に解体できるんだ……。
カイトの解体捌きに見とれているとあっという間にデスバラッドだったものが肉塊となり、ご丁寧に皮と爪とと、部位がしっかりと小分けにされていた。
「よし」
そういうとカイトはデスバラッドの素材の方へと手をかざす。そうするとカイトの影が素材の方へ大きく伸びていき、素材たちが影に飲み込まれていった。これも闇魔法なんですかね。どちらかというと影魔法なんじゃないっすか?
「え、そうやって運べるのか」
こういうのはなんか馬車とかリヤカーとか持ってきて運ぶんじゃないんですか。俺の疑問にカイトは自慢げに言う。
「これも、闇魔法の特権ってね!」
腰に手を当てて、胸を張って鼻高々にカイトは言った。この人いちいち仕草が大げさすぎてうっとおしいな。命の恩人だから言わないけど。
「じゃあ、いこっか! コーキくん! スラさん!」
影の剣も自身の影の中へしまい、カイトはパンパンと手の土埃を払って言う。ひらひらとした民族衣装をのようなコートをなびかせ、森の出口へと歩き出した。
スラさんは跳ねて歩くのが面倒なのか小さくなって俺の肩に乗ってきた。スライム体で歩くのは不便なのだろう。オトモな感じが出て可愛らしく思える。
俺も歩き出してカイトの後ろに付いていく。カイトの背中を見ながら俺は考えていた。
この世界には俺の世界だとありえないことが当たり前のように起きている。ゲームだけの存在だと思っていたスライムに化け物じみたモンスターのデスバラッド。挙句の果てには魔法までが実在している。ならば、デスバラッドとの戦闘の時に起きたあの風も魔法なんだろうか。
一人、思考に耽っているとスラさんが口は無いけど口を開く。
「そういえば人間の街ってどんなところなの?」
それは俺も気になっていた。異世界の街には興味がある。実際にラノベやゲームなんかである中世の様式をした街並みなんだろうか。映像ではよく見るけどこの目で見るのは初めてだから楽しみだ。スラさんに至っては森に住んでいたから人間の街は未知の世界だろう。先生! ここに異世界の文化を全く知らない生命体が二つあります!
「ん? それはもう活気に溢れている所さ! 人がいっぱい居て色んな店なんかがあるよ!」
「へー! 店ってどういうのかよく分からないけど人間って群れて暮らすのは知ってたから人間の暮らしにちょっと興味があったんだよね! コーキの世界もそういう感じなの?」
「ああ、基本的なところは変わらないと思うぞ。けど俺の世界はモンスターも魔法もないから細かいところは違うかもな」
「え!! コーキくんの世界は魔法がないのかい? それはさぞかし不便だろうなぁ。魔法って色んなことができるから魔法が無いと生活がままならないよ?」
「うちの世界じゃ別の技術が発達してるんで不便とまではいかないぞ。まぁ確かに魔法はものすごく便利なのはさっき見たから分かったけど。」
「おお! それはどんな技術なんだい!! 俺、気になるよ!」
「ぼくも気になるよ!」
俺の話にカイトとスラさんは目を輝かせて詰め寄ってくる。そんな私、気になります!みたいに近づかないでくれ、素直に困る。
「お、おう。また追々な……。」
俺の世界よりも今は現状を知ることが優先だ。その時、ぐうぅと俺の腹がなってしまう。
「カイトさん、早く街に行こう。さっきの戦いで疲れてお腹も空いてるんだ。」
「それはいけない! ささっと街まで移動しようか!」
カイトが手を軽くあげると瞬く間にカイトの影が俺の足元まで広がっていく。
「え、ちょ。何するんだ」
「まぁまぁ! じっと身を任せてくれ! すぐに着くから!」
「まさか、これで移動するのか?」
「そのまさかさ! 『闇脚』っていう魔法なんだ! 僕は基本これで移動してるからね! すっごく早いよ!」
「もう何でもありなんだな……。」
影が立体的に縦へ伸びて、俺たちを丸ごと覆うように飲み込んでいく。球体になるとそのまま地面へ潜っていくように消えていった。
森の出口へと続く道を、黒く平べったい塊が音もなく動いていったのであった。
次回投稿は1月19日を予定しています。




