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無難に生きるのが俺のモットーです。  作者: よにー
第一章 氷人族の少女
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第28話 揺れ動く影

第28話になります。

よろしくお願いします。



 時は少しさかのぼり、紅桔たちがまだギルドで朝食を摂っている頃、ギルドアルバートのマスターであるミラはカイトを連れて、いやおんぶされてとあるところへ向かっていた。


「カイトすまんのー、朝はめっぽう弱くってなぁー」

「いやいや、全然問題ないよマスター。なんか僕に子供ができたみたいで楽しいよ」

「なにをー? お前なんぞ私からすれば稚魚だぞー?」

「ははは、手厳しいな~」


 しかし、傍から見れば二人は本当に親子のようで二人のことを知らない人から見ればきっと勘違いされるのも頷けてしまう。


 さて、少し話が脱線してしまったがミラがこうして苦手と言いながらも朝早くから行動しているのには理由があった。


「急げーカイトぉー。私が眠ってしまわないうちに辿り着かなければぁ……ぐぅ」

「えぇー! 寝るの早いよマスター!! ほんともうおばあちゃんなんだからー!」

「誰が万年生きた亀よりも長寿なロリババアだとぉー?」

「言ってないからぁ!!!」


 ギリギリとカイトの首が孫の手並みに小さいおててに筋が浮き出るほどに締められ、カイトはこれ以上ないほど自身の命の危険を感じていた。


「ったくー、油断すればすーぐ歳の話をするー。これだから最近の若いモンはー」

「マスター、そのセリフが一番婆臭いよ?」

「シッ!!!」

「グフッ!!!」


 性懲りも無くカイトが禁止ワードを連発するものだからミラが容赦なく後頭部をペチンとシバいた。しかし、思いのほかカイトの頭が硬かったのかミラはひいひい言いながら手に息をふきかけていた。


「くそー。相変わらず防御力はいっちょ前だなー……はたいた私の方が痛いとはー……」

「ふふん。僕は自他ともに認めるアステリシア最強の冒険者だよ? マスターの可愛らしい平手打ちなんて攻撃になんないね!」

「はーー……ムカつくなーお前ー」


 大きくため息をつきながらミラはカイトの岩よりも硬い石頭をポコポコと叩く。カイトも痛みは当然ないのだが「やめてよマスタ〜」と苦笑いしながらも文句を言っていた。


「そもそも来んな朝早くに出かける羽目になったのはコーキを連れてきたお前のせいでもあるんだからなー」

「し、仕方ないじゃないか〜。森に現れたデスバラッドの討伐をするために現地へ行ったらボロボロの彼らと死にかけのデスバラッドがいたんだからさぁ〜」

「まったくー……。それにしても今でもその話信じられんなー。本当にコーキとスライムがあと一歩の所まで追い詰めていたのかー?」

「ホントだって! 戦ってるところは見てないけど眼と腕を切り落としてたんだよ? こっちに来たばかりであれはすごいよ。コーキくんは逸材だ」

「まぁガルド相手に結構余裕そーだったしなー……」

「それと彼の連れているスラさんも滅多に見られない珍しい個体だ。膨張させてあんな筋肉質なフォルムになるなんて見たことないよ」

「……確かになー」


 するとミラはどこか遠くを見るような目で空を見上げた。


「しかし問題はあいつがウランドラスに召喚されたってことだなー」

「そうだね。でもまだウランドラスとは限らない……いやウランドラスか……」

「コーキの魔法属性を見て幻獣の森に捨てるなんてするのはウランドラスしかないだろー」

「だよねー、困ったなぁ……。ウランドラスの勇者ってのは伏せるべきかな?」

「いや、それはしないほうがいいだろうー。コーキが召喚されていることは事実だから王家に召喚のことは報告するべきだー」

「そっか……これからコーキくんは苦しい道のりを歩みそうだね」

「仕方ないことだー。その代わり私たちがしっかりコーキを支えないといけないぞー」

「うん、わかってるよマスター」


 カイトとミラは話し合いながらもその間に目的の場所に到着していた。彼らの目の前には大きく聳え立つ黒鉄でできた柵状の巨大な門が出迎えており、その奥にはこの国の名物であるアステリシア城が佇んでいた。そしてその門のすぐ側には門番と見られる兵士が一人微動だにせずぴっしりと起立している。ミラは彼の姿を捉えるとカイトの背中から飛び降りて門番へ歩み寄った。


「お勤めご苦労様ー」

「はっ! これはミラ様! ご機嫌麗しゅう存じます!」


 ピシッと額らへんに右手を斜めに構え門番はハキハキと敬礼した。ミラもそれに合わせてかるく右手を頭の上に添える。


「此度は如何なされましたか!」

「うむー実はなー。可及的速やかに王家に取り次いで欲しいんだー」

「……承知いたしました。しばしお時間をください」


 ミラの言葉に門番は元気溌剌な表情から一気に真剣な面持ちへと変化した。そして彼は耳にかけられた魔道具のようなものに手を当てると喋り始める。


「こちら城門守衛。ただいまアルバートのマスター、ミラ様がお見えになっている。至急近衛長に報告し開場を求める」

『了解した』


 小さな魔道具から囁くような応答が聞こえると一見ビクともしないように見えた城門が地面を擦りながら大きな音を立ててひとりでに開き始めた。


「すまんなー助かるー」

「いえ、御用とあらば。エントランスに入られたら近衛長がお迎えに上がりますので少しお待ちいただけますか?」

「わかったー」 

「さすがだね。迅速な対応感謝します」

「はっ! カイト様からのありがたきお言葉! 光栄にございます!」

「ははは、なんだか恥ずかしいなぁ」

「そんな。カイト様はユフィ―リア姫をお救い下さったアステリシアの英雄ですのでもっと誇ってください!」

「そ、そうだね」


 門番の熱にさすがのカイトも照れているのかポリポリと頬を掻いて目を逸らす。


「ユフィ―リアはカイトに相当お熱だからなぁー。無下にするなよー?」


 ヘラっと笑いながらミラは肘でカイトの太もも辺りを小突いていじるとカイトは「ハハハ」と乾いた笑いを上げた。


「では失礼するぞー」

「ハッ!」


 門番はびしっと敬礼をして二人が門を通っていくのを見送る。


「いや~ほんと優秀だね~。要件も言ってないのにすぐさま通してくれるなんて。普通ならありえないよ?」

「まぁ私とお前だからなー。通さざるを得んだろー」


 雑談を交えながら二人はとても広い庭園の真ん中を歩いていく。きっちりと切りそろえられた草木にはガーデニング技術が光っているのか寸分の違いも見受けられない。道中に敷き詰められた石畳は大変だったろうにすべてが同じ大きさに加工され綺麗に並べられていた。


「いつ見てもいい庭園だね。コーキくんにも見せてあげたいよ」

「どうせ嫌でも近々見ることになると思うぞー」

「ははは……そうだね」


 庭園を眺めつつ二人は城の入り口にたどり着くと、広く煌びやかなエントランスがミラとカイトを出迎えた。


 入口から左右に廊下が伸び、向かって真正面を見据えるとそこには大階段が伸び、そこから壁を添うようにして二つに分かれてそれぞれ空中廊下のように壁を伝って二階へとつながっていた。そのまま上を見上げれば天井は吹き抜けており高い天井が生み出す解放感はここでしか味わえないだろう。そして極めつけは下だ。眼を落とせば一面大理石がまぶしく輝き、エントランス中央の床には王家の紋章である星を模したような意匠が描かれている。


 アステリシアの威厳を存分に前面へ押し出した内装にカイトは唸った。


「この主張の激しさはなんか慣れないなぁ」

「城なんてどこでもこんなもんだろー」

「僕はひっそりと暮らすのが好きなんだよね」

「それユフィ―リアの前で言ってみなー?」

「……城に住んでるなんて憧れるなー」

「棒読みやめろー」


 二人が城の内装に話を盛り上げていると右側の通路から銀色が輝く鎧を身に着け背中に大きなマントを羽織った金髪の好青年が歩いて来るのが見えた。


「ミラ様、カイト様、お待たせいたしました」


 青年は二人の傍に近づくと胸に手を当て、深く丁寧なお辞儀をする。


「おー。ヴィンセントー」

「久しぶり~」

「お久しぶりでございます。カイト様は半年ぶりですかね」

「そうだっけ? 結構経ってるなぁ」

「お前はあまりここへ来たがらないからなー」

「そうですね。カイト様がここにいらっしゃったと耳に入ると飛んで来る姫がいますから」

「あ、あんまり姫の話を出さないでくれよ~。あの子どこから湧いてくるかわからないからね?」

「ふふ、私も姫の行動力には目を見張るものがあると常々感じております」

「ホントうちの看板冒険者も隅に置けんな~」


 他愛のない世間話をしているとヴィンセントと呼ばれた騎士は柔らかく笑いつつもミラを見据えた。


「ところでミラ様、至急王家にお取次ぎしなければいけないほどの要件とは一体どうされたましたか? カイト様までお連れしているということはついに決心をなされて姫と……?」

「いや!? そういう話じゃないからね!?」

「うーん、その話ができたらもっとよかったんだがなー。今回はおめでたな話じゃないぞー?」

「おめでたって何さ!? 確かに僕はモテるけど節操がないわけじゃないからね?」

「最後の余計な一言が無ければ自信を持ってお前を姫に突き出せるのに……」

「突き出す!?」

「引き取る際は私を呼んでいただければすぐにでも」

「僕はペットか何かなのかい!?」


 カイト渾身のツッコミにミラとヴィンセントが声に出して笑う。


「くっくっくっ……いかんー。お前のせいで話が逸れるだろー、ばかもんー」

「ええぇ……僕のせいなの……」

「んんっ……失礼しました。つい興が乗ってしまい……」

「ホント君は普段ちゃんとしてるのにマスターといる時はいつも僕をいじるよね……」

「それだけ信頼しているということですよ」

「よく回る口だなぁ」


 頭を掻くカイトに軽く謝るとヴィンセントは改めてミラを見る。


「ミラ様本題に戻りましょう」

「うむー。実はなー……」


 ミラはここに来た理由をヴィンセントへ軽く話すと彼は途端に顔を曇らせ始める。


「……なるほど。ここで話すような内容ではありませんね。応接室に案内しますのでついてきてもらえますか?」

「もちろんだー」


 そう言ってヴィンセントはミラとカイト二人を連れて城内を歩き始めるのであった。



次回投稿は5月18日予定です。

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