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無難に生きるのが俺のモットーです。  作者: よにー
序章 異世界来訪編
12/52

第10話 初依頼

第10話になります。

ちょっとストックが間に合わなくなりかけていて内心焦ってます……。

もしかしたら次の投稿から少しお時間をいただくことになるかもです。




 街を出て少し歩くと広い平原に出た。草が生い茂る平原は少しばかり丘陵があり街道には道行く馬車や人が多数いた。


 アステリシアに向かっていた時はカイトの闇魔法で移動したため、あまり景色が見れなかったがこうしてちゃんと見てみるとその広さに圧倒される。


「さて、ここの平原にはあまりモンスターが出ないから街道沿いに行って幻獣の森まで行くわよ!」

「げ、幻獣の森……」


 その単語を聞いただけで嫌な思い出がふつふつと蘇ってくる。デスバラッドに殺されかけた記憶が俺を身震いさせた。


 そんな様子をニルハは察して声をかけてくれた。


「ん? ああ、もしかしてデスバラッドと戦ったのって幻獣の森だったの?」

「ああ……」


 あの時は本当に死んだと思ったし、異世界に来て一番不幸な出来事だった。願わくば二度と会わんことを……。


「でも珍しいわね〜、デスバラッドなんて森の奥に行ったとしてもなかなか出会えないはずよ〜?」


 手を頬に当ててキャサリンは見事なオネェポーズを決めてみせる。もうこれが通常運転なんだな……。


 ともあれ平原を挟んでいるとはいえ街の近くにある森にあんなバケモノがいたら大変ではなかろうか。キャサリンの言う通り普通は出ないよな?


 RPGでよくある始まりの街の近くにある森が実は最終面で強力なモンスターが潜んでいることがわかったみたいな展開に近い。ソードダンサーとか居そうだな。


「えー、じゃあボクたち本当に運が悪かっただけみたいだね」

「えぇ……」


 長年あの森に住んでるスラさんでもこう言うくらいだからよっぽどなんだろう。


 俺はいつの間にかハードラックとダンスっちまったんだな……。そこまで不幸体質じゃないはずなんだけどなぁ。


「まぁ今度同じようにデスバラッドみたいなのが出ても安心して! あなたのことはちゃ〜〜んとあたくしが守ってあげるわよ!」

「たのもし〜!」


 キャサリンは立派な大胸筋を反らせて肉体をアピールする。それにヨイショをかけるかのようにニルハはパチパチと拍手していた。


 案外この二人相性がいいのか。もともとニルハは陽の者っぽいし、キャサリンは個性の塊だから相乗作用でも起きてるんじゃないか?


「それに、ガルドちゃんを泣かしたっていうコーキちゃんの実力も知りたいですわ!」


 先導するキャサリンが肩越しに俺を見てくる。そのだだっぴろい背中からこちらを覗く目つきはまるで野獣だった。狩られるのは俺だった……!?


「でもスライム相手じゃコーキくんのあの戦い方じゃなくてもサクッとやっちゃうかもね〜。ガルドくらいのちょうどいいサンドバッグが無いとコーキくんの凄さわかんないよ〜?」


 ガルド、酷い言われようである。あれを期に更生してくれ…。


「ちくしょう!!!!!あたくしも見たかったわ〜!!!」


 まって、今のちくしょうめっちゃくちゃドス効いてなかった? キャサリンの素が出てた気がするんだけど?


「コーキってば凄くかっこよかったんだよ! ガルドなんて口だけだったね!」


 スラさんもなかなか言うなぁ。


「ああいうのはもう勘弁して欲しいもんだよ……」


 ヨボヨボと俺の顔は段々(しわが)れていく。それはもうパッサパサに。


「あはは……ガルドは色んな人に突っかかってるからね、あの性格が災いして基本一人でやってるみたいだし、自業自得だよ」


 あからさまに機嫌わるそうにニルハは愚痴る。その顔は恨みが募ったものだった。


 ニルハもなにかされたのだろうか? さっきからガルドに対してかなり辛辣だ。基本人あたりの良さそうな彼女がここまで言うとはよっぽど嫌なことをされたのだろう。


 気にはなるが、相手の嫌な思い出を掘り起こすほど俺も鬼じゃない。ここはなにも反応せず流すのが吉だ。……気になるなぁ〜。


 しかし俺が気遣って爆弾処理をするが、横から「んなこた知らねぇ! さらけ出せや!」とずかずかプライバシーの壁をぶち壊す猛者がここにいた。


「ニルハってガルドのことかなり嫌ってるよね〜。なにかされたの?」


 デリカシーレスの王、スラさん爆誕。モンスターに気遣いを求めてはいけない。


 もちろん、スラさんに悪気はない。純度百パーセントの疑問だ。


 でもこの子ったら聞いちゃいけないパンドラの箱開けやがった!! 開けてみたい? みたくないない〜。 あぁ〜地雷の音ぉ〜。


「……ん〜、まぁちょっとね」


 そんなニルハは少し間を置いて茶を濁していた。


 ほらぁ!!! ニルハめっちゃ渋ってんじゃん! もしこれを聞いたが最後、「あ、そう……大変だったね……」と気まずい雰囲気の波が押し寄せるぞ。


 だって俺昔、クラスメイトに彼女作らないのかと聞かれた時、笑い話のつもりで過去の栄光であるドッキリ告白を話したら「っべー……変なこと聞いちまったな」みたいな空気が出来上がったぞ? それ以来この手の話はしないようにしている。これ以上俺の傷を抉らないで!


 俺が過去に思いを馳せているとニルハはなんとなしに口を開いた。


「前に同じCランクってことでガルドとパーティーを組んだことがあったんだ」


 いや、話すんかい!!!!!!


 俺が心の中で全力のツッコミをビシッと決めているのをよそにニルハはそのまま続けた。


「それで、依頼をこなしたんだけど報酬の件で揉めちゃってね。言い争う内にお互いヒートアップしたんだ」


 ニルハはあからさまに渋い顔をして眉をひそめていた。声色もだんだん暗く重くなっていく彼女の顔は若干陰り始める。まぁ……お金は揉めるよね……。


 黙って聞く三人を伺いながらニルハは拳を握り始める。


「そしたらあいつさ、『獣人ごときが人族に楯突くんじゃねぇ!』って言い出したからもうカチンときて、そんなんだから万年Cランクなんだよ!って言い返したらそこからはもう取っ組み合いだったよ……」

「取っ組み合い? 大丈夫だったのかしら?」

「いや〜、さすがにあの脳筋には勝てなかったよ。なんなら組み敷かれて身ぐるみ剥がされかけたからね」

「えぇ……」


 とんでもねぇワルだったわ。ガルドに同情した俺は道化か? 腕直したことちょっと後悔してる。


「その時、偶然居合わせた他の冒険者に助けられたから良かったけど二人っきりだったら何されたか分かんないや」


 淡々とニルハは喋っているがその内に秘めた激情が彼女の瞳から垣間見える。そりゃ怒るよな。


「冷静だったらあんなノロマ軽く遊んであげたんだけどね~」


 重い空気を変えようとニルハは明るく振舞って見せる。それが空元気だというとは彼女の震える手を見れば分かる。


 一歩間違えればこの事件はニルハにとって一生消えない心の傷になってしまう。


 スラさんは人の気持ちを察せないから土足で踏み込んで来たが言う必要も無いはずだ。だがこうして自身のトラウマをさらけ出したということはなにか意味があるのかもしれない。


「……まぁニルハも俺の戦いでいくらかスッキリしたんじゃないか?」

「それはもう! あいつが腕落とされた時ガッツポーズしたからね!」


 ニルハはむんっ! と腕を組んで嬉しそうに笑う。思ったよりも大丈夫そうだ。


「そんなことよりさっさと幻獣の森でスライムを倒そう! 早く早く!」

「ちょちょちょ!」


 ニルハは俺の背中を押してどんどん先へと歩んでゆく。そんな俺たちをキャサリンは微笑ましそうに見つめていた。




――――――――――――――――――――――――――




 この森の香りを嗅ぐのも数時間ぶりだ。


 幻想の森は俺が転移した時と全く変わりのしない景色をしており、獣の声はしなく大人しいものだった。


 ニルハとキャサリンが談笑しながら進み、俺はその後ろを付いて歩いていた。


 二人の楽しそうな会話に俺は入れなかった。それは何故か?


 答えは簡単だ。


 俺が女子の話題に疎いからだ!!


 不詳、この鬼束紅桔。人に話を合わせるのは得意とは言ったが、話せるとは言っていない!! あれ? 言ったっけ? 過去のことは振り返らない主義なんで分かんないですね!


 あと、俺は姦しい雰囲気は得意じゃない、目の前の状況が姦しいかどうかは置いておいてね。


 そんな中に取り残されようものなら俺は溶けて灰になる自信があるぞ。そのまま風にさらわれて草花の肥料になって元気に育ててやる。


 そしてその花を女の子が愛でるんだ。そうすれば図らずとも俺は女の子に愛でられる存在になれるということだ。


 何言ってんだ? 俺は。


 しかし傍から眺めるのは好きだ。女の子同士が楽しそうに話しているだけでこちらもパワーを貰えるというものだ。間に男を挟もうものなら俺がエクスキューションしてやる。


 百合パワーは世界を救うのだよ。


「コーキちゃんいたわよ」


 俺が自分の世界に入り浸り一人漫談を繰り広げている中、不意にキャサリンが呼んで止まった。


 キャサリンに手招きされるまま俺が前に出て先を見やると今では見知った青い物体がぷるぷると道を進んでいた。


 とりあえず俺は自分の肩を確認する。肩に乗る青い物体は不思議そうに俺を見つめていた。


 うん、スラさんじゃないね! 確認、ヨシ!


 しかしこう見てみると本当にスライムだな。というかスラさんと何ら違いがない。


「……スラさんってさその状態だと他のスライムと何ら変わらないから正直見分けつかないよな」

「え?」

「いやほら、マッスルフォームを使えば問題ないけど、いざ混ざったら一目じゃ見分けつかないよなって」

「んー、そう?」

「目とか口があれば一瞬でわかるけど、そんなのないしなぁ……」


 俺がぼそっと叶うはずもないものを口にして目の前のスライムを凝視する。なにか特徴はないか……。特徴がないのが特徴かな?


「目と口なら作れるよ?」

「へー」


 あーね。目と口を作るってか。そりゃすごいなー。そんなの出来たら苦労はしないんだけども。仕方ないから何か着るものでも見繕って。


「は?」


 首をグリンッ! と回してスラさんに振り向く。予想外の返答に俺は固まってしまった。


 今一瞬スルーしかけたぞ?。俺がスラさんに服でも着させようかなって真剣に考えてたらサラッとすごいことカミングアウトされたぞ?


「? だから作れるって、ほら」


 そう言うやいなや、ニョニョニョ〜っとスラさんのまるまるボディにアスキーアートで作った様な目と口が浮き上がってくる。うわ、こわ、きも。


「……最初っからそれってできたの?」

「? うん! 必要なかったから作らなかっただけだよ?」

「…………」


 それならそうと言ってくれればよかったのに……。いや、聞かなかった俺が悪いか? 俺は悪くねぇ!


「スラさん、これからはそれでいこうか」

「? わかった!」


 純真爛漫に意気揚々とスラさんは可愛いお返事をしてくれた。まぁのっぺらぼうのまんまよりはマシか……。


「スラさんって顔作れたの?」


 気づけばニルハとキャサリンが俺を挟んでスラさんの顔をのぞきこんでいた。


「あんら! お可愛いことで! そっちの方がとってもキュートよスラちゃん!」

「ありがとー!」


 二人はさして驚きもせず受け入れるのも早かった。俺だけがこの状況をまだ受け入れられず一人取り残されていた。こんなだから俺は独り身なのかもしれない。まだ十代だし結婚する気は無いけどね?


「さ、コーキちゃん。依頼をこなす手順を軽く説明するわね!」


 そう言ってキャサリンは俺たちの前に立ち、コキコキと首や手、肩などを軽く鳴らしてスライムと対峙し始めた。


 向こうのスライムもキャサリンに気がついたのか、ぽてぽてと飛びながらキャサリンと一定の距離を持ち始める。


「まず、倒すにあたって一番手っ取り早いのは魔核を狙う事ね!」


 魔核。そういえばフィリアが報酬の内訳を言う時に魔核がなんちゃら言ってた気がするな。


「魔核を破壊すればモンスターを倒せるからそれでもいいですわ。でも魔核は魔道具の材料になるから破壊しない方が報酬も上がってお得なんですわよ!」


 なるほど。それがデスバラッドのものとなれば高値が付くのも頷けるな。まぁ魔核だけじゃあそこまで行かないと思うけど。カイト様様だな。


「だからこの子を……」


 キャサリンは話を続けながらスライムに近づいていく。それに合わせてスライムも臨戦態勢を取り、キャサリンへと体当たりを仕掛けてきた。


 やっぱりスラさんとは違って攻撃方法が普通だな……。スラさんの場合はチャージタックルになるからなぁ。


 スライムの攻撃が微笑ましく思えてくる。あんな柔らかい体で体当たりなんてほとんどダメージなんてないだろうに。


 どっかのマッチョになって涼しい顔で軽く大木を殴り倒すスライムとは大違いだな。


 のほほんと見物しているとキャサリンが動いた。


「こうよ」


 スライムがキャサリンに飛びかかる寸前で彼女は軽く腕を振る。


 すると。




ガオンッッッ!!!!!




 ……………んっ?! ガオン!? 待って、なんかいま空間が削り取られたような効果音しなかった? リアルで聞くとは思わなかったぞ?!


 到底人が出せるとは思えないような風切り音でキャサリンはスライムを軽く凪いでみせた。


 さっきまで勇猛果敢に挑まんとする将来有望なスライムくんは見るも無惨にぽっかりと中央を横からくり抜かれたように二分割されていた。


 残った上と下の体はボトボトッ! と力無くただの塊のように地面へ叩きつけられる。


 それを見ていた俺たち三人は言葉を失っていた。スラさんなんてさっきから小刻みに震えてるぞ。なんなら俺は膝が笑ってる。


 ニルハは……頬に汗を流しながら猫目を見開いていた。


「ほら、コーキちゃん。これがモンスターの魔核ですわよ。私たちで言う心臓になりましてよ」


 キャサリンは青い宝石のようなものをこちらに見せて来た。丸く真珠のような魔核は朝日に照らされ透き通っていた。


 だが魔核よりもキャサリンの攻撃の方が気になってしまう。しかもまったく手に攻撃の後を感じさせないくらいにキャサリンの手は綺麗だった。


 普通ならスライムの体液とかが付いていそうなのにそれが全然ないと来ている。本当に人間業か?


「………」


 先程の攻撃が異次元すぎてなにも反応が出来なかった。指先で挟んでキャサリンは魔核を俺の手のひらに乗せるが、只々俺は汗を垂れ流すだけだった。まさに絶句。


 え、えぐすぎる……。


「……今何したの?」


 恐る恐るスラさんがキャサリンに問いかける。するとキャサリンはなんてことないといった反応を示して種明かしをした。


「簡単よ! こう腕を鞭のようにしならせて元に戻る反動を利用して腕を動かしただけよ!」


 解説しながらキャサリンはゆっくりとスロー再生を見ているかのような動作をしていた。


 動きが緩やかだから話を聞いていたほどしなりはしなかったが、あの速さを掛け合わせるとあんな芸当になるんだろう。


 うそやん。


「魔法じゃなかったの!?」


 声の主の方を見るとニルハが口をあんぐりと開けていた。この子、もしかして結構な顔芸職人かもしれない。


「ふふふ、実力よ! じ、つ、りょ、く♡」


 超絶可愛いプリティーポーズをバッチリ決めながらキャサリンは低い声で笑っていた。う〜ん、ミスマッチ。


「にしてもAランクは伊達じゃないな……何したのかホントに分からなかった」


 実際、キャサリンの腕が動いたこと自体は分かるが、それがほんの一瞬すぎて残像しか見えなかった。


一体どこまで鍛えればこんなことができるのだろうか? うちの爺ちゃんでもできないぞ?


「そしてこのスライムの残骸を持ち帰ってギルドに報告すれば依頼完了よ!」


 キャサリンは胸元から小瓶を取りだし、地面に広がった青い液体を掬って詰め込んだ。


 おい、どこからその瓶出してんだ。それが許されるのは巨乳のお姉さんだけだぞ。というか絶対瓶なんてしまうスペースなかったろ!


「じゃ、次はコーキくんが討伐する番だね」


 スライムの残骸を見ていた俺にニルハはつんつんと指先でつついて前を見るように促す。


 見上げるともう既に次の獲物が道の真ん中でウォーミングアップでもしているボクサーのようにぴょんぴょん跳ねていた。


 スライムって結構血気盛んなのね……。


「コーキちゃんも魔核を壊さないように倒してみましょうか」

「お、おう」


 キャサリンがしたような攻撃は当然ながら俺にはできない。刀で斬ろうものなら魔核ごと真っ二つにしてしまう自信がある。


「基本的に魔核はモンスターの中心にあるものだからそこを上手に狙ったらいいよ」


 悩む俺にニルハが簡単なアドバイスを送ってくれた。心臓って言ってたし大体はそういうところか。


「分かった、やってみる」


 スラさんをニルハに預けて、前に立つ。腰に提げた天照に手を添え、ジリジリとスライムに近づいていく。


 そんな俺を傍から見ればスライムごときにビビり散らかす剣士に見えるだろう。ビビってなんかないやい!


 俺がスライムの出方を窺っているとそれを可笑しく思ったのかスライムは触手を伸ばしてちょいちょいと俺を挑発してきた。


 こ、こいつ……。スラさんみたいに意思があるんじゃないのか?


「あははははは! コーキくんったらスライムに挑発されてるよ! コーキくん舐められてるよ!」


 笑い声のする後ろを見やればニルハがスラさんを抱えてヒーヒー言いながら笑っていた。


 ニルハ、覚えとけよ……。あとで違う意味でヒーヒー言わせてやるからな!!! そんな度胸ないけど。


「コーキー。なにのんびりやってるのー? ちゃちゃっと倒しなよー」


 つまんなーい、とでも言いそうな雰囲気でスラさんは顔をしわしわにしていた。そんな表情までできるのかよ。


「わかったわかった……」


 確かにここで時間をかける訳にもいかないからささっと倒してしまおう。天照を抜刀し、一気に駆け出してスライムとの距離を詰める。


 しかし魔核を斬らずに、本体を斬るなんて難しいこと高校生に求めないでもらいたい。端からちょっとずつ切り落としていくか?


 そんなみみっちいことをするの面倒くさいな。もういいや、斬っちゃえ、なんとでもなるはずだ!


 俺の抜刀を合図にスライムも動き始め、先程のように体当たりを俺に仕掛けてきた。


 勝負は一瞬だった。


 直線的なスライムの突撃をするりと躱して、すれ違いざまに斬りつける。


 スライムは空中を漂いながらぱっくりと鮮やかに二分割され、放物線を描くとドシャ!っと地面に落ちていった。


 天照を軽く振ってスライムの粘液を振り払い、静かに鞘へ戻す。


「さて、魔核は……」


 振り返ってスライムだったものに近づき、腰をかがめた。


 そこには丸い宝石のような物が綺麗な切り口を見せて二つに分かれていた。


「あっちゃー……」

「切れてるね〜」


 スラさんを抱えたニルハが俺と同じように屈んでスライムの残骸を覗き見る。彼女の白いおみ足がなんとも眩しい。


「落ち込むことは無いわよ! むしろこれはとっても綺麗な状態だから初めてにしてはすっごく上手よ!」


 拍手をしながら近づいてきたキャサリンは割れた魔核をひょいと持ち上げて手のひらでコロコロと転がす。


「うんうん、キャサリンさんの言う通りだよ。あたしなんて初討伐は粉砕しちゃったからね」


 目を閉じてニルハは空を仰いでいた。きっと初めての頃を思い出してるのだろう。


 すると、スラさんがニルハの腕からニュルっと抜け出してスライムの死骸もといジェル状の液体のようなものに近づき、上に乗ったり触手を伸ばしたりしていた。


「スラさん、何してるんだ?」

「吸収だよ〜」

「スライムって基本雑食で貪食だから死体でもなんでも食べちゃうんだって、一部では掃除屋さんって呼ばれてるらしいよ」


 スラさんの不可解な行動をニルハが補足して説明してくれた。


 スライムってそんなクリーン事業を展開してたのか? 俺、慈善活動してる心優しいモンスターを掃除しちゃったよ?


「えっ、そんないいモンスター倒して大丈夫なのか?」

「大丈夫よ! スライムは凄く多いしすぐに増殖するから定期的に処理しないといけないだけよ! たまに被害の報告もあがってるから討伐する理由はちゃんとあるのよ」

「それに依頼内容も数が決まってないからたくさん狩ってもだいじょーぶ!」

「ボクもいっぱい食べられるからみんな幸せ〜」


 まさに、ウィンウィンの関係ということか。変な罪悪感に苛まれかけたが気負う必要は全然なかったみたいだ。でもスラさんの場合はカニバリズムに近いから素直に喜べないんだけど?


「さぁ、どんどん次行くわよ!」

「「おおーー!」」


 またもや俺以外の三人が息を合わせて掛け声を上げはじめる。今度こそは乗らなければ無作法というもの。乗ってやるぜこのビッグウェーブに!


「おー!」


 三人の後を追う感じで少しタイミングがズレたがまぁ良しとしよう。彼らが言い終わるまでに参加出来たので実質同時だ。誰がなんと言おうと同時だ。


 新たなるスライムを求め、俺たちは森の中を進んで行くのであった。

次回投稿は2月6日予定です。

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