俺は・・・
俺は、気がつくと、みどりを抱きしめていた。これが俺にできる精一杯だ。また傷つくことになってもいいと思った。静かに胸の中でなく夏川さんを見たとき俺の中に何かわからなかった気持ちの正体がわかったんだ。それを思わずこぼしてしまう。
「俺は・・後悔してたんだ。お前の気持ちに気づかなかったこと。お前との別れを受け入れてしまったこと。ほんとはそばにいたいと思ったことを押し殺してしまったことを。」
それは、聞こえるか聞こえないかわからない、かすれるような絞り出された言葉だった。だが、みどりにはしっかりと聞こえてしまっていたらしい。
「わ、わたしは・・ハル君を裏切ったんだよ・・。でも・・こうなってしまってわかった・・。私、戻りたいよ・・。でもそんなことできない。都合がよすぎるし、なによりこれ以上傷つけたくない。」
胸の中にいるみどりは、涙とともにそんな言葉をこぼす。それを聞いた俺は、何も言えなくなりただ泣き止むのを待った。あの頃・・付き合ってた時のように。すこしすると落ち着いてきたので離す。
「また迷惑をかけちゃったごめんね。また・・相談してもいいかな。」
涙で瞳を潤ませたみどりが言う。正直、俺はなんともできそうなことはないとわかっていたがすこしでも楽になるのならと了承した。それをみたみどりは、「じゃあ・・戻るね。」と足早に部屋に帰って行った。夢でも見ているのではないかと思っていたが、服にしみ込んだ涙、にぎりしめられてすこしよれてしまったセーター、あいつの香り・・そのすべてが現実だと突きつけているようだった。そして俺は体の震えがとまってはいなかったのだが・・
「・・さて、俺も部屋に帰るかな。」
ややおぼつかない足取りで部屋に向かう。その途中で美姫に遭遇した。
「あ!やっと帰ってきた。心配したんですよ。トイレと言ったきり帰ってこないんですもん。」
ふくれっ面の彼女が近づいてくる。そのときに俺は気づいた。なにやら視界が歪んできていることに。ヤバいと思ったときには遅くもう体に力なんて入らなくなってしまっていた。不可抗力だが美姫に抱き付くような形になってしまった。
「え!ふぇ!?ど、どうしたんですかいきなり!」
顔を真っ赤にしてあたふたしている美姫を傍目にどんどんと意識が遠のいていく。どうしちまったんだ俺は。なんて考えている暇もなく視界がくらくなっていく。あ、そうか我慢の限界がきてしまったのかと理解すると
「海斗に・・悪いって伝えてくれ。頼むよ。」
と美姫に頼み俺は意識を手放し、深淵に沈んでいくかのように目の前が真っ暗になっていくのであった。




