アメリアの秘密
序列第2位アメリア・ニルヴァーナ
序列第1000位中崎修一
の決闘は序列第2位アメリア・ニルヴァーナの勝利です
無機質な声が聞こえる。
アメリアは内心落胆していた。
また、動かずに終わっちゃったな……
と、アメリアの内心は修一の意外なほど呆気無い最後を目撃し、暗かった。
アメリアは不動という2つ名を持っている。
持っていると言うより勝手に付けられ、自然と定着したと言うべきか。
ほぼ、全ての決闘を1歩も動く事なく勝利する為に、この2つ名が付いたのは必然とも言えよう。
しかし、己の得意な‘近接戦’で戦えないのは不満があった。
アメリアは元々近接戦が得意なタイプである。
それ故に遠距離型のギアでありながら、身体能力上昇が付いている。
巨大な銃器を扱うだけなら、筋力強化だけで良い筈であるが、このギアの開発者に頼んで付けてもらったのだ。
当然魔力の消費は大きくなるし、開発費はかかるが、この程度の頼みも聞いて貰えないのなら‘言う事を聞いてやる気も無くなる’
まあ、逆らうなんて出来ないが、それでも反抗したくなる時だってある。
ふう……と息を吐き出したアメリアは地面に倒れている修一の元へ歩み寄った。
「大丈夫?……」
「きつい……」
何なんだあれは!
ファンタジーの世界において重火器は卑怯だろう!
魔法で戦え!魔法で!
…………
いや、変わんねぇか?
ふとソフィーのファイアーストームを思い出す。
下手な重火器より危険極まりない。
でもちょっと待てよ……何で重火器をモデルにしたギアがあるんだ?
この世界の技術レベル的に可能なのか?
ふと頭をよぎる昨日の風景。
現代より中世に寄った世界観、鉄筋コンクリートすら無い建物。
しかし、魔法の力により石を綺麗に削りだし、これまた不思議な力で継ぎ目が見えない様接着されている。
機械の類は見当たらず、夜は明りにも困る始末。
いや、何かあったのかも知れないが、少なくとも電光灯の類は無かった。
そう、部屋には月明かりを取り込むため窓が大き目に付いており、そこからも電化製品等の素敵アイテムは無いであろう事は予想できる。
服やら書類関連は元の世界と似ているが、魔法で何とかなる範囲だろうか。
しかし、銃器は違う。
そもそもデザインが酷似し過ぎている。
馬に乗って弓でも撃ってそうな世界で重火器?
有り得ないだろ?
そこで俺は1つの考えに至る。
俺以外にも他の世界から来ている人間がいる?
いや、神様は俺以外に居ないって言ってたよな?
では何故?
…………
考えても結論は出ない。
そもそもこれは推測の域を出ない。
たまたま偶然、奇跡的に重火器に似ているギアが誕生した可能性もある。
うーん、あるかなぁ……?
ふとアメリアを見た。
アメリアは銀色の短い髪を揺らして小首をかしげている。
その瞼は眠たげで今にも寝てしまいそうだ。
男子用の学生服を押し上げる胸は大きく、そのアンバランスさを際立たせている。
そう、ここまで個性の強い美少女がモブキャラだろうか?
いや、有り得ないな……
そう、あの強力なギアに纏わる秘密がある筈なのだ。
それを解決する事で、自身の強化とアメリアとの親密さを上げるイベントがある筈なのだ。
…………
そうだ、間違いない。
主人公が圧敗した後は強化のイベントが入る筈なのである。
等とふざけた事を考えた俺はアメリアに質問する。
「アメリアのギアは何処で手に入れたんだ?学園の支給品じゃないよな?」
俺は起き上がり、尻をパンパンと払いながら言った。
「えっと……これは、その……」
「何だ?言えない事なのか?」
「…………」
ビンゴだ。
このギアとアメリアには秘密がある。
そうと分かれば絶対に逃がさない。
何が何でも聞き出す。
「何か困り事があるんじゃないのか?俺で良ければ話を聞くぞ?」
「えっと……いや、その……」
アメリアの目が泳いでいる。
どうすれば聞き出せるんだ?
ここで逃がすと後手に回る可能性もあった。
あれ程強力なギアの使い手が量産されても困る。
まさか、もうあれしかないのか?
…………
‘これ’は諸刃の剣だ。
おいそれと使うべきではない。
しかし、俺は何としても序列1位になる必要がある。
それも出来るならば1月で、だ。
何振り構っていられる状況じゃないのかもしれない。
俺はアメリアの手を掴むと言った。
「アメリア……俺は君の力になりたいんだ。君が困っているなら、その悩みを解決してあげたい……それともこんな弱い俺じゃダメなのか?」
「……止めてくれ……そう簡単に解決するなんて……言わないでくれ……」
アメリアが拳を握り込むのが見える。
あと一押し……
何やら嫌な予感がするがもう奥の手だ!
俺はアメリアを抱きしめると耳元でそっと言った。
「俺じゃあ力になれないのか?君を救いたいんだ……」
アメリアの体がビクリと跳ねる。
もうこれ以上の方法を俺は知らない。
もし、俺が主人公補正を持っているなら、ここまですれば必ず聞き出せる。
逆に無ければ?
ツーハンドキャノンが頭に浮かぶ。
死が待っているのか……?
いや、ここで引けばどのみちゴールが遠くなり、結果としてバッドエンドになる可能性もある。
そう、アメリアとのイベントは主人公の強化イベントであり、回避が不可能なのだ。
…………
俺は自分に言い聞かせる。
それからどれ程の時が経っただろうか?
恐らくは数十秒程度しか経過してない筈だが、恐ろしく長く感じる。
アメリアは癖こそ強いもののかなり可愛い部類に入る。
それに何より胸が大きい。
男子用の制服とのギャップがたまら……いや何でもない。
俺はどうしてここまで積極的になってしまったのだろうか?
元の世界に居た俺なら考えられもしない事だ。
混乱していたとは言え、女の子に告白したり初対面の女の子に抱きついたり……
客観的に見れば結構酷いな……
いや、これは今までの俺では無い。
俺はある意味生まれ変わったのだ。
今までの誰の役にも立てず、期待されず、必要とされない。
ただただ、毎日意味も無く生きる屍とは違うのだ。
そう、そしてこれはこの世界を生き抜くには必要な事なのだ。
結論、つまり俺は悪くねぇ。
「……本当に……助けてくれる……?」
「ああ。任せてくれ。絶対に君を救って見せる」
アメリアを離すと若干名残惜しそうな表情で彼女はポツリポツリと話し始めた。
「これを見てほしい……」
アメリアはポケットから小さなビンに入った緑の液体を取り出す。
ふと俺の脳裏に栄養ドリンクがよぎった。
「何だか分かる……?」
「栄養ドリンクか?」
「そんな良いものじゃないよ……これはね、ギアに所有者の情報を誤認させる薬物さ……強制的にこのギアを使うためのね……」
アメリアが右手の人差指に嵌った指輪をトントンと叩く。
「そんな薬品があるのか?それなら誰でもどのギアでも使えると言う事か?」
「いいや……違うよ。これはね……僕専用に開発された物でね……確かに副作用はキツイけど……仕方ないんだ……」
成程、理解できた。
あの強力なギアはやはり重い代償が付いて回るのだ。
唐突な僕っ子宣言には驚いたが、それ以上にその副作用が気になる。
俺の思考を遮りアメリアが続けた。
「僕には戦闘のセンスも無いし、強力なギアにも選ばれなかった……でも……それでも……妹を救うためには……」
「妹……?何かの病気なのか?」
「そう聞かされている……博士達には妹を救う手立てがあると……しかし、その条件として……このギアのデータを取る様にと……それと闘技大会で優勝し、景品を持ち帰る事……」
大体読めてきたぞ。
アメリアはドーピングしてまでギアを使ってデータを取る。
そして、その最強とも言えるギアで闘技大会を勝ち抜き景品を手に入れる。
景品が何か分からないが……
そう、彼女のスポンサー的にはアメリア専用に薬品やギアを開発してでも欲しいのだ。
それに加えて病気の妹?
…………
俺の頭の中でピースが繋がる。
アメリアが仮に景品とデータを持ち帰ったとして、アメリアの妹は救われるのか?
博士と呼ばれた人物はアメリアに副作用のある薬品を使用させてまで、戦わせる奴だぞ?
素直に約束を守るのか?
いや、有り得ない。
女の子に副作用がある危険な薬品を使用させてまで戦わせる下種が約束を律儀に守る訳無いだろう?
そう、仮にアメリアが使命を果たしても、サックリ切り捨てられるのがオチだ。
テンプレ的な展開を予想するならば……
そう、ギアを回収し、秘密保持の為に……
ではどうする?
まだ、100%悪と決まった訳では無い。
精々99%止まりだ。
まあ、直接聞きに行くしかないんだろうなぁ……
「何点か知りたい事がある。まず薬の副作用についてだ。それとアメリアの妹の情報も出来るだけ」
「副作用はね……強い倦怠感と苦痛を伴うんだ……苦しいのは飲んだ後だけだけど……薬の効果が続く限り……大体丸1日程強い倦怠感が付いて回るんだ……」
「なるほど……どうりで……」
「妹はね……突然ある時突然倒れてね……原因が分からずに困惑する僕の前に博士達が現れたんだ……博士達は妹を救うには莫大な資金が必要になると言っていた……でも僕も妹も孤児院で育てられていたから……自由になるお金なんて無いし……でも博士達はデータと景品さえ持ってこられれば妹を救えると言った……だから僕は力を付けて学園に来たんだ……」
ん?
ちょっと待てよ……
孤児院……
そして突然の倒れた?
都合よく現れる博士?
「あのさ、アメリアの妹が倒れた後どの位で博士達は現れたんだ?」
「えっと……朝に突然倒れて……昼前位?……結構すぐだったと思う……」
はいビンゴ。
妹が倒れた後すぐに都合良く現れる?
有り得ねぇよ、どんな確率だよ。
順当に考えればアメリアの妹が倒れたのも博士達の仕業だろうな……
そう、孤児院で金が無いと当て込んでアメリア達に目を付けたのだろう。
普通の医者に見せられると都合が悪い筈だからな。
そもそもアメリアの妹は病気でも何でもなく、ただ一時的に意識を失っていただけだろうな。
ただ、現状アメリアの妹の安否は保障されないだろうなぁ。
……ん?妹?
…………
いや、テンプレ通りに事が進むと考えない方が良いだろうか?
しかし、俺の予想が正しければその博士達を放っておく事は出来ない。
このまま放っておけば絶対に後々立ちふさがってくるだろう。
目に浮かぶようだ。
それに何だか腹が立って来た。
「アメリア。博士達に会う方法は無いか?ちょっと話を聞きたい」
俺はそう言うとひと暴れする決意を固めた。




