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ヘビーウェポンガール

悶々としたまま朝を迎えてしまった……


空が白み始めて、小鳥の囀りが聞こえる。

そろそろ早起きな人は起きる時間だろうか。


「んー」


下のベッドから声がした。

もう起きるのか?随分と早起きだな……


ソフィーはベッドから出ると、そのままヨタヨタと歩き、扉を開けて寝室から出ていった。

ここで俺は考える。


昨日の事は事故とはいえ、責任はキッチリ取るべきだと俺は思う。

いや、そうでないと……


ふとアリスの笑顔とレーヴァテインを振り上げるソフィーが脳裏に浮かぶ。

断言できる……命が無い。


でもどうしたら良いんだ?

この世界はファンタジーの世界だ、そして俺は幸か不幸か漫画やアニメで見た主人公の様な境遇にある。

しかし、それらの俺が知るファンタジーの主人公達はすべからく鈍感でヒロインの好意には気付かない。

まあ、仮に気付いたとしよう。

それでも引っ付く事は無いと言っていいだろう。


……

当然例外もある。

あるのだが……自分がその例外に該当するのか?

いや、そもそも自分がこの世界の主人公である保障など無い。

そう神様がそう設定したと断言していないのだ。

たまたま、偶然が重なりそう錯覚した可能性もあるのだ。


でも……この世界は危険に満ちている。

ソフィーのレーヴァテインだってそうだ。

1撃で人を消滅させられる程の力をただの学生が持っているのだ。

それを主人公補正無しで乗り切れるのか?


こんな世界では命が幾つ有っても足りないだろう。

俺に命が幾つも有るとか、死んだら超人として転生するとか、とんでも設定が無ければ……


無 い よ ね ?


うーん。

どうも寝ていない所為か頭が回らない。

元々そこまで頭が良い方ではないし、寝不足が重なればこんなものだろう。


「よっこらせ……」


爺臭い声を出して起き上がる。

2段ベッドを降りてリビングに向けて歩き出す。

時間が経って気恥ずかしさも紛れたし、意外と普通に話せるかな?


ドアを開けてソフィーに挨拶する。


「おはよう。早いな、ランニングでも行くのか?」

「え……」


ソフィーはキッチンに立ったまま完璧に固まってしまった。


「昨日の夢……あれ?夢じゃない?いやでも、転入生が同室になるって聞いて……追い出そうと……決闘して……」


どうやら昨日の事は夢と言う事になっているらしい。

事故とはいえ、人生初の告白が成功したのに悲しいなぁ……


「え……あなた転入生の中崎修一……?何でここに?」

「おい、シッカリしてくれ……昨日の事覚えてないのか?」

「昨日……?えっと決闘して、部屋で気を失って……気付いたら……!!!」


もうソフィーの性格なんぞ把握している。

錯乱してレーヴァテインをぶっ放されると敵わない。

ソフィーが昨日の事を思い出し、赤くなるタイミングで羽交い絞めにする。


「あわわわわわ!!」

「落ち着け!こら、暴れるなって!」


ジタバタと足でそこ等中を蹴りまくるソフィー。

ギアを出してなければ、体格差である程度は抑え込めるが、足はどうにもならない。


それから5分程は経っただろうか?

ソフィーは体力を使い果たしたらしくグッタリしている。

幸いにも意識はあるので助かった。


肩を貸してソファーまで連れて行き座らせる。


「どうだ?落ち着いたか?」

「ご、ごめんなさい。取り乱して……」


体力を消耗して落ち着くと言うのも変だが、ある程度発狂したら気が収まったらしい。


そこで俺は気付いてしまった。

暴れ回ったのでソフィーの来ているパジャマらしき衣服が乱れ肩や腹が露出している。

髪は寝起きだからだろうか?ツインテールでは無く降ろしてストレートになっている。

その所為だろうか?少し、子供っぽさが抜けた気がする。


元は綺麗な白色なのだろう、その肌は熱で上気し薄っすら赤らんでいる。

顔も赤く、若干瞳が潤んでいる様にも見える。

加えて、元の勝気な性格は鳴りを潜め、非常にしおらしい態度になっている。

更には、身長差が有り、相手は座っている為に必然的に彼女が俺を見上げる姿勢になる……上目遣いと言う奴だ。


そう、最早完璧過ぎて怖い位に可愛い。


一晩耐えきった鋼の理性は一瞬で崩壊し、俺はソフィーに抱きつく。


「えええ!?ちょ、ちょっと!」

「もう我慢できない!さあ!昨日の続きを!」


俺が色々と猛る衝動を露わにしていると不意に背後で‘コンコン’とドアをノックする音が聞こえた。

まさかと思い俺がガバッっと振り向くと


「お兄さん。発展するのは良いですけど、朝からは良くないと思いますよ?」


ちくしょおおおおおぉぉぉ!

また、お前かぁ!1度ならず2度までも良い所で邪魔しやがって!

本当は俺の事嫌いなんじゃないのか?

そう思わずにはいられない完璧なタイミングで登場したアリスに、怨嗟の視線を向けていると


「まあまあ、お兄さんもそんなに怒らないで、3人でご飯食べに行きましょう?」


そう言えば昨日の昼から何も食べてなかった……

腹減ったなあ……


「はあ、そうだな……行くか……」


そういや、着替えが段ボールに入ってたな……

ゴソゴソとダンボールを漁る。


「わ、私も着替えて来るわ……」


後ろで寝室のドアが閉まる音がした。

段ボールの中からようやく替えのシャツを引っ張り出す。


ズボンはまあ綺麗だし、このままで良いか?

等と考えながら皺の付いたシャツを脱ぎソファーに投げる。

すると


ガタッ っと後ろで音がした。


振り向くとアリスが若干後ろへ下がっている。


「ん?どうしたんだ?」

「い、いえ!何でもないですよ?」


アリスは笑顔のままだが若干笑顔が固まりかけている。

それに何だか顔も赤い様な……は!


そこで俺は気付いてしまった。

押しの強いキャラは逆に押されると弱い!

これが何を意味するのか……

下ネタを平然と言ってのけるアリスは、逆に下ネタを投げられたり、迫られると弱い!


確信した俺は内心邪悪な笑みを浮かべた。


「おいおい、どうしたんだ?具合でも悪いのか?」


今の俺は上半身裸だ、たいして鍛えられても無いが、アリスには効果覿面だろう。

一見して心配する風を装い近づく。


「だ、大丈夫ですよ?心配は要りません」

「いやいや、顔が赤いし一応見てやるよ」


そう言い、俺が近づいただけアリスが逃げる。

俺が1歩近づけば、アリスは1歩下がる。


殆ど小走りになりながらリビングを駆けまわる。

遂にキッチンの奥にアリスを追い込む。


思わず笑みが出るのを抑えられない。

2度だ、2度も邪魔されたのだ。

この代償をどう支払わせるか……


ふとアリスの目線が俺の後ろへ向く。

…………

ギギギっと油の切れた機械の様に俺は後ろを向いた。


そこには制服へと着替え、般若の様相を呈するソフィーが立っている。

若干ツインテールが逆立っている気もするが、気のせいだろう。


俺は新しいシャツを引っ掴むと脱兎の如く逃げ出した。






走りながらシャツを着れるとは意外と俺は器用だったのかも知れない。

等とつまらない感想を自分に抱きながら歩いていると


「君……ちょっと良いかな……」


銀髪の綺麗な少女に呼び止められる。


「えっと、何か用かな?」


完全初対面だ。


「アメリア・ニルヴァーナ」

「え?」

「私の名前……君は中崎修一君だよね?……」

「そうだけど、良く知ってるね、昨日学園に来たばかりで今日が初登校なのに」

「昨日の……ソフィーとの決闘を見てた……」


アメリアと名乗ったその少女は何故か男子生徒の制服を着て、更に綺麗な銀髪を肩まででバッサリ切っており、若干ボーイッシュな感じも受けたが、服を押し上げる胸が女性である事を主張している。

目は眠たげで、瞼が今にも落ちそうである。

この間の伸びたと言うか、ゆっくりしたしゃべり方もそれに由来するのだろうか?


「私とも決闘してほしい……」

「えっと、何でかな?」

「面白そうだったから……」


これはあれだな、マイペース過ぎて真面目に相手したら駄目なタイプだ。

しかし、俺も回数戦わないと技量が追い付かない。

これは渡りに船か?


「うーん。まあ良いよ」


まあ、色々な相手と戦うのも悪くないだろう。

それに、こんな朝早くからわざわざ挑んでくるって事は何かあるのだろう。

面白い事が起こるかも知れないな。


その時はこんな適当な事を考えていた。

決闘が始まるまでは。


「序列第2位アメリア・ニルヴァーナと序列第1000位中崎修一の決闘を始める……」


ん?

…………序列第2位!?

この学園の2番目!?


「啜れ 黒鏡!」


即座にギアを呼び出し、発動した身体能力強化で全力で離れる。

不味い、序列第11位のソフィーですらギリギリだったのにいきなり2位かよ!


しかし、この判断は失敗だった。


「打ち滅ぼせ ツーハンドキャノン……」


アメリアの手に2丁の拳銃が握られる。

この場合、ファンタジーの世界に銃器を持ち込むんじゃねぇ!と持論を展開する所かも知れないが、相手の握る拳銃を見てそれ所では無くなった。

あれはゲームで見たことがある。

‘ハンド’ガンと呼ぶには余りに大きく重厚なフォルム。

通称像殺しと呼ばれる世界最大、最強の拳銃だ。

大男でも発射の衝撃で脱臼しかねない、その凶悪過ぎる拳銃は華奢な少女が持つと酷く不釣り合いに見えた。


しかし、あれはギアだ。

恐らく何らかの付随効果がある。

身体能力強化が付いている可能性も高い。

元の世界の基準なら装填数は5発。

それが2つで10発だ。


冷や汗が背を伝う。

下手な魔法よりヤバイ。

1瞬で着弾し、掠ればそれだけで死にかねない凶器だ。


そう、ここまで来て俺は初めて彼女が学園2位たる意味を知ったのだ。






さてお手並み拝見と行きましょうか……

アメリアは修一のギアの持つ見た事の無い能力が気になっていた。

修一とソフィーの決闘を目撃したのはたまたまだった。

しかし、何故か修一がソフィーのレーヴァテインの奥義であるファイアーストームを使用していたのだ。


レーヴァテインはかなりのレア物で同じ物は未だに見つかっていない筈だ。

では修一はレーヴァテインの複製では無く、何か不思議な能力を持つギアを所有していると言う事だ。


それを見極める。

突如として学園に現れ、貸与されたばかりのギアで序列11位を倒せる程の強者。

久しぶりに楽しめそうだ。

この不動の2つ名を打ち破れるか?

そうアメリアは考えた。


修一は拳銃相手に距離を開けるのは不味いと思ったのか、全力でアメリアに接近しようとする。

だが、アメリアのハンドキャノンが火を噴いた。


両手同時に発射された2発の弾丸は修一の直ぐ傍の地面を吹き飛ばす。


大よそ拳銃とは思えない威力に修一がたじろぐ。

しかし、この瞬間アメリアは見せた。

ハンドキャノンというギアに隠された弾丸という魔法を。


アメリアの持つハンドキャノンは修一の読み通り各5発までしか撃てない。

魔法で弾丸を装填する事は出来ず、ギアを一端格納する必要があり、戦闘中に行うのは無謀だった。


だが、高威力かつ瞬間弾着のハンドキャノンは強敵をも一撃で葬って来た。

そのギアは強すぎた。

そう、本人の技量では無くギアが強すぎるが故に修一の猛反撃が始まる。


「写せ 黒天鏡王!」


修一の手にある剣が蜃気楼の様に歪み、拳銃へと変化していく。


アメリアは確信した。

修一のギアはコピー能力だと。


修一のハンドキャノンがこちらへ向けて発射される。

アメリアは修一のハンドキャノンの‘銃口’へ向けて2丁のハンドキャノンを発射する。

轟音が鳴り響き修一の撃った1発とアメリアの2発が相殺され明後日の方向へ飛ぶ。


修一がギョッとしてアメリアを見る。

そう、有り得ないと言った表情だ。


しかしこれはアメリアに取っても非常に厳しい技術だった。

元々ギアには刀剣の類が多く、銃器を持つ相手は限られてくる。

銃器相手に練習する機会が無いのだ。

しかし、それをギアの持つ身体能力上昇と視力強化が可能にする。


まぐれだと思ったのか修一がもう1発ハンドキャノンを発射する。

再び2発の銃弾に弾かれる。

更に修一が続けて2発発射する。

今度は4発の銃弾で弾かれる。


これでアメリアは弾切れだ。


勝敗は付いたかに見えた。

修一が勝ったという表情をした。


しかし、修一は忘れていたのだ。

アメリアのギアがまだ‘解放すらしてない’事に……


「殲滅せよ ヘビーウェポン……」


左右に持つハンドキャノンに虚空より現れた金属がくっ付き変形する。

ガチャガチャと音を立てあっと言う間に‘それら’は完成した。


大よそ人間が1人で持てる重量を遥かに超えるガトリングが右手に、1.5メートル近くある巨大なライフル……アンチマテリアルライフルが左手に握られていた。


ありえない と修一の口が動いた気がした。


最早それは決闘では無い、蹂躙であった。






ちょっと待てぇい!

有り得ないだろう!

何でガトリング片手で持てるんだよ!

それと左手のあれアンチマテリアルライフルだろあれ!

両方1個人に向けて良いレベルじゃねぇぞ!


両方の凶器がこちらを睨んだ。


あ……死んだ……


全力で走る。

恐らく生身の人間には絶対に不可能であろう速度で走る。

背中を弾丸が掠める。


ひいいいぃぃぃ!

死なないと分かっているとはいえ、怖いもんは怖い。


黒鏡でコピーしたハンドキャノンを苦し紛れに撃つ。

人間を遥かに凌駕した身体能力により、片手で操られたハンドキャノンから発射された弾丸は明後日の方向へ飛ぶ。


ですよねー!

訓練もしてない人間が銃をまともに扱える訳がない。


再びアメリアの持つ2つの凶器がこちらを睨んだ。


瞬間、可能な限り横へ飛び避けたつもりだったが、1瞬で即死判定が入ったらしい。


序列第2位アメリア・ニルヴァーナ

序列第1000位中崎修一

の決闘は序列第2位アメリア・ニルヴァーナの勝利です


無情なアナウンスが流れるのが聞こえる。

幸いなのは痛みを感じる間も無く勝負が着いた所だろうか?

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