表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/10

決闘はラブコメの味

「この変態!私と決闘しなさい!」


肩を怒らせ、顔を真っ赤にしたソフィーが叫ぶ。


「一体どうした?別に大した事じゃなかっただろう」


そう、この展開だ。

俺の予想は正しかったのだ。

そしてテンプレ的に、ここで選択するべきは 無自覚に挑発する だ。


「た、大した事じゃないですって……」


凄まじい気迫だ。

そう、まるで強面の大男が眼前に立ちはだかり拳を鳴らしているかの様な絶望感が吹き付ける。


やり過ぎたか?

若干冷や汗を流しながら状況の推移を見守る。


「この変態変態ド変態!今すぐ決闘なさい!」

「別に良いけど勝ったら何かくれるの?」


そうだ。この場面では‘あのセリフ’を引き出す必要があるのだ。


「ふふふ。良い度胸してるじゃない。余程良いギアを引けたみたいね。私が勝ったらアンタは寮から出ていきなさい!」

「俺が勝ったら?」

「良いわよ‘何でも’言う事聞いてあげる。私が負けるなんてありえないけどね!」


よし来た!

思わず心の中でガッツポーズと取る。

そして、絶対に確認すべき事項もある。

これを忘れると逃げられる可能性がある。


「所で話変わるけどソフィーって貴族か王族だったりする?」

「何?意味が分からないけど……私はソフィー・ルルード・フォン・カシネルファ・ヴァルシュタイン。由緒正しき大貴族ヴァルシュタイン家の娘よ!貴方の名前も聞いてあげるわ!感謝しなさい!」

「俺は中崎修一、知ってるかも知れないけど君と同室で同い年の2学年だ。因みに序列は1000位だ」

「そう。でも同室はもう終わり、一瞬で終わらせてあげる。付いてきなさい!」


俺は笑いを必死に堪えソフィーに付いて行った。






そこは校庭であった。

綺麗に整理され芝生の生えた光景は思わず寝そべりたくなる。


「さあ!序列第11位ソフィー・ルルード・フォン・カシネルファ・ヴァルシュタインと序列1000位中崎修一の‘決闘を始める’わギアを出しなさい!」


よし、これは間違いなくチュートリアル戦闘+フラグ立てイベントだ。

よって俺の敗北する確率は0!

有り得ない、安心して臨もう。


「啜れ 黒鏡こくきょう


俺がそう言うと一瞬体に違和感を感じ次の瞬間、虚空から黒色の日本刀が出現した。

これが俺のギア……

刀身は黒に薄い赤色のヒビの様な模様が入っている。

第一印象は禍々しい。

大よそ主人公が持つ武器では無い。


「あれ?イメージと違うなぁ……これじゃあ敵キャラじゃん……」


もっと神々しい感じの武器を想像していた俺は若干落胆する。


「でも、厨二的視点から見るとありか?悪落ちした主人公って感じで」


そうだ、もしかしたら進化するかも知れないし、見方によってはカッコイイではないか。


「何さっきからブツブツ言ってるのよ!気持ち悪いわね!準備出来たの!?」

「おう。何時でも良いぞ。かかってこい、遊んでやる」


うわー。

人生で言ってみたい厨二セリフBEST10には入る‘遊んでやる’って言っちゃたよー。

でもこれはファンタジーの世界だし、まあありだよね?


「逆巻け レーヴァテイン!」


ソフィーがギアを召喚する。

ソフィーのギアは常時解放型なのか。


「一瞬で消し炭にしてあげるわ!」


ソフィーはレーヴァテインと呼ばれた西洋剣を振りかぶり


「燃やし尽くせ! ファイアーストーム!」


ソフィーがそう言った瞬間背筋を寒気が走った。

全力で地面を蹴りソフィーから距離を取る。

瞬間強烈な熱波に体を焼かれる。


果たして避けられたのは動物的本能によるものなのだろうか?

俺が先程まで立っていた場所は消滅していた。

正確には地表の芝生は一瞬で燃え尽き、下の土までドロリと溶けている。


「あら?結構やるじゃない。でもまだまだ行くわよ!」


これは不味い。

読み間違えた。

これは負けイベだ!

ギャグ漫画なら黒焦げになるだけで済むが、あんなもの直撃したら確実に死ぬ。

しかも火葬する手間まで省いてくれる親切仕様だ。


くそ、漫画なら都合よく誰かが止めに入ってくれる筈なのにチラホラ集まりだした見物人達は安全圏から遠巻きに眺めているだけだ。


「燃やし尽くせ! ファイアーストーム!」


再びゾワリと全身の毛が逆さ立った。


「うおおおお!」


全力で横へ飛び避ける。

ズサーっとアメフト選手の様に地面に転がる。


どうする?逃走は不可能だ。

自分より強い相手からは逃げられない。

現状発動しているであろう、身体能力上昇とこの刀だけでこの重戦車より危険な女と戦えって?


いや、信じるんだ。

絶対に俺は負けない、これは負けイベじゃ無くてチュートリアルだ。

相手が強いのには何か理由がある筈だ……

きっとそうだ。


黒鏡を構える。

当然刀なんて構えた事等無い。

完全に映画や漫画で得た情報を見様見真似で再現しているに過ぎない。


そう俺には出来る、信じるんだ俺の力とこのギア(黒鏡)を!







突然気配が変わったとソフィーは感じた。


「何?この感じ…まさか勝つ気でいるの…?」


馬鹿馬鹿しい事だとソフィーは内心笑う。

ソフィーは序列11位の超高位序列者だ。

所持するギア(レーヴァテイン)も遺跡から発掘された聖遺物級の激レア魔装具だ。

学園が支給してくれるB級品とは違う。


この男……中島修一の能力は知らないが先程から逃げ回っているだけだし、大した事は無いだろう。


本当に愚かな男……


内心ソフィーはそう考えた。

しかし、奥義ファイアーストームは魔力の消耗が激しく、そう連発できる技では無い。

ソフィーは更に考えを巡らせる。


どうする……

そうだ、あの男も構えている事だし剣技で決着を着けよう。

後でギアの性能の所為で負けたと言われても癪だ。


自分の中で答えが出たらしいソフィーは地面を力いっぱい蹴り走り出す。






ソフィーがこちらへ走ってくる。

尋常ではない速さだ。

恐らく身体能力強化が掛かっているのだろう。

体格差や性別差ではどうにもならないか……


両手で黒鏡を掴み腰を落とす。

そして、念じる。

俺は出来る、俺は出来る、俺は出来る。

頼む力を貸してくれ黒鏡!お前にはきっと凄い力が隠されている筈なんだ!


圧倒時速度で接近してきたソフィーが上段にレーヴァテインを構える。

ゴウ!っとレーヴァテインを覆う炎が燃え盛る。

瞬間世界がスローモーションになる。

いや、人間が極限まで集中した結果脳の処理能力が上昇し、スローモーションの様に見えているだけだ。

振り下ろされるレーヴァテインを黒鏡で弾く。


ギィン!と甲高い音を立てて剣を弾かれたソフィーは後ろへ飛び距離を取る。

再びソフィーが踏み込んでくる。


もっとだ!集中しろ!

俺は極限まで集中力を高める。

身体能力が上昇している為だろうか?確実にソフィーの剣を弾く。


右左左上下右


様々な角度から繰り出される斬撃を確実に黒鏡で弾いていく。

体が動く!

凄いぞ、俺の体とは思えない!

それに動体視力も向上している様だ、剣筋がしっかり見える。


金属がぶつかり合う音が響く。

ソフィーのレーヴァテインが唸りを上げ、炎がこちらの肌を焼く。

負けじと打ち返し、下段から切り上げる。

しかし、弾かれる。


拮抗した戦いかに見えたが、限界がやってきた。

段々と掠り傷が付いていき遂に決定的な一撃を貰う。


ブスリと右の肩へレーヴァテインが刺さる。

突きを弾き切れなかったのだ。

ブチブチと筋肉が千切れる音が響く。

そして、全身を激痛が走りまわる。


「が…はぁっ!」


悲鳴も出ない程の激痛。

これまで平和な日本で暮らして来て当然刃物で刺された事などある筈も無い。

黒鏡から右手が離れる。

その際、黒鏡に肩から出血した血が少量かかる。

瞬間頭に情報が流れ込んできた。


解放を認めます

解放用コード「写せ 黒天鏡王」

能力 対象となった魔法をコピーし使用できるようになります

魔法を視認してから10分以内である事が条件です

コピーできる魔法は1つのみです、またギア格納時にコピーした魔法はリセットされます


来た!逆転の一手!

激痛を歯を噛み締めて押し殺す。


「写せ 黒天鏡王!」


黒鏡の刀身に描かれた赤色の模様が光る。

当然俺がコピーするのはレーヴァテインのファイアーストームである。

ソフィーの持つレーヴァテインに黒鏡から放たれた光の粒が纏わりつく。


未知の攻撃を警戒したのだろうか、ソフィーが俺から距離を取る。


よし、勝った!


「燃やし尽くせ!ファイアーストーム!!!」


俺は頭に浮かんだ奥義のコードを叫ぶ。

左手で振りぬいた黒鏡から放たれた炎はソフィーを取り囲む。


「え!?きゃあああぁぁぁ!」


あ……あれ死んでないだろうな……異世界に来て速攻殺人で逮捕とか洒落にならんぞ……


俺が心配していると、ソフィーを包んでいた炎が弾け飛ぶ。

その時何所からか

序列第11位ソフィー・ルルード・フォン・カシネルファ・ヴァルシュタイン


序列1000位中崎修一

の決闘は序列1000位中崎修一の勝利です。


と機械的な声が聞こえた。


それよりソフィーだ。

急いでソフィーの方を見た。

しかし、彼女は傷1つ負っていない。

が、レーヴァテインを落とし呆然と立ち尽くしている。


そして俺も気付く、肩が痛くない。

傷が綺麗サッパリ消えている所か服まで治っている。


その時アリスが駆け寄って来た。


「お兄さん凄いです!初戦でギアの能力を解放して900位以上上のソフィー先輩に勝つなんて!」

「ははは、ありがとうアリス。ちょっとまた質問なんだけど、傷が治ったり、何所からか聞こえたアナウンスって魔法?」

「はいそうです。決闘前にお互いの序列と氏名、それに決闘する旨を宣言する事で決闘する人たちに保護の魔法がかかります。死亡すると判断される一撃を貰った際や蓄積したダメージが一定以上になり、命の危険がある場合は強制的に決闘は終了となります。そして決闘で破損した物や傷は全て治ります」


魔法ってすげー


「後アナウンスですが、決闘が終了した時に周囲の人にも聞こえる位の音量で結果が流れます。これは順位の変動に密接に関わってきますので重要なんですよ」


ニッコリとアリスが笑う。

そうか、アナウンスによるとソフィーは序列11位らしい。

初戦にしては上々の相手だろう。

俺はギアを亜空間に格納すると立ち尽くすソフィーに近づいていく。


「大丈夫か?」


駄目だ、完全に放心状態になっている。

俺はソフィーの肩を揺らしながら約束の確認をした。


「おーい。決闘は俺の勝ちで良いな?約束覚えてるかー?」

「え?約束……?」


やはり、最初から負ける等想定してないが為に覚えていない。

しかし、俺は確認済みなのだ、そうソフィーが貴族でありこの性格である事を。


「負けたら‘何でも’言う事聞くんだよな?」

「え……いや、あれは言葉の綾と言うか……えっと…」


そうだ、約束を確認しただけでは逃げようとする。

だから俺はにやりと笑い、決定的な言葉を口にする。

冷や汗を流し目を泳がせ、何とか逃げようとするソフィーに対して決定的な言葉を。


「あれー‘由緒正しき大貴族ヴァルシュタイン家の娘’さんは約束も守れないのかー?それとも最初から自分が負けたら反故にするつもりだったのかー」

「うぐ……」


明らかに困っている。

発汗量が異常に増え今や滝の様な汗を流している。

俺が周囲にも聞こえる様な音量で発言した為に、完全に逃げ道を失った小動物の様だ。


ちょっと可哀想になってきた。

錯乱して燃やされても敵わないし、ここは恩を売るだけにしておこうか?

等と俺が考えていると


「分かったわよ!‘何でも’命令したら良いじゃない!この変態!ド変態!」


顔を真っ赤にしながら若干泣きそうな顔でソフィーは言った。

よし、これでこのイベントが終わりか。

でも、実際にこんな可愛い子に何でも命令出来るなら……


邪な考えが頭に浮かぶ。

いやダメだ、テンプレ通りであるならば、そんな事をすれば俺は主人公補正(都合よくイベントが起こったり、何故か女の子が好意的)を失う可能性がある。

あくまで良い人を演じる必要があるのだ。

そう、そしてヒロインに該当するであろう美少女達とは1線を超える事もタブーだ。

あれ?これって生殺し?


「まあ、取り敢えず部屋に帰るまでに考えとくよ。疲れたし俺は部屋に戻るよ、ソフィーはどうする?」


彼女から返事は無く俯いている。

俺はアリスに説明してもらった礼を言うと寮へ向けて歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ