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ライトノベル化するミステリと名探偵テーマ

明けましておめでとうございます。

1.前段(読まなくても大丈夫です)


 読んでらっしゃる方がいらっしゃいましたらお久しぶりです。数年ぶりになろうでかちゃかちゃとやっています。10年ぶりってことはないと思いますけど、でもかなり長い間なろうを触ってなかったです。


 これほど長い間何をしていたのかというと、客観的に見れば何もしていません。

 そもそも、なろうで書かなくなったのは「異世界の名探偵(ファンタジーにおける名探偵の必要性)」を書籍化してもらって、じゃあ次の目標としてミステリ系の公募に挑戦しよう、ということだったんですよね。


 半年くらいかけて公募用の作品を書く→少し寝かせてから読み直して面白くない→半年くらいかけてリライト→やっぱり面白くないので捨てる→別の作品へ(最初に戻る)


 こんな動きをずっと繰り返していました。

 誰にも見せない面白くない作品やアイデアだけが無数に増える日々です。公募に出してダメだったらちょっと弄ってなろうに投稿しようと最初は思ってたんですけど、そもそも出すところまでいかないという体たらく。


 しかしどうしてこんなに面白くないんだろうなあ、と首をひねっているうちに時間だけが過ぎていきました。


 そうこうしているうちに、ひょっとしたらご存じの方がいらっしゃるかもしれませんが「新生ミステリ研究会」というのにお誘いいただいて参加して、そこで文章書いたりもろもろさせていただいており、これが自分にとっての、人に文章を見せることのリハビリにもなっております。ありがたいことです。


 で、今回これを書いた理由ですが、その研究会でこの前読書会に参加してですね、そこで個人的に「はぁー、こういうことか」と何となく分かったことがあり、それを言語化しておこうということです。なんでこのエッセイは正直、他の人が読んでもピンと来ない可能性が他の部分以上に高い気がします。かなり個人的な感覚なんで。ただ、自分的には前述した「どうして自分の公募用の小説が面白くないのか」についても関係している気がして、ちょっとここはつきつめて考えて残しておこうと思った次第です。



2.発端 読書会での一幕



 所属する研究会の読書会で、あるミステリ小説が課題になったのですが、他の方が基本褒めている中、正直私は「あんまりだなあ」と思ったのでそれを語りました。で、語りながらどうしてあんまりだったのかを説明したりやりとりしたのですが、結果分かったのは私があんまりだと思った理由は、


①そのミステリ小説が個人的にライトノベルっぽかった

②それが内容にあってないように感じた

③上に関連して浮いている描写があった


 だったんですね。


 こう言うと「てめーが言うなよ」とか「ライトノベル否定派か、石を投げろ、なろうから追い出せ」ということになりそうなんですが、多分ポイントになるのは②の方なんですよね。つまり、ライトノベルっぽい書き方が合う内容と合わない内容があって、これは合わない内容だったのではないか、ということですね。


 で、そもそも私が個人的に「何かライトノベルっぽいなあ」と感じるミステリがそもそも最近結構多いんですよね。新本格、結構ライトノベルっぽいって印象を抱きがちです。

 共通点とかあるのかなあ、とぼんやり考えていたところ、会長の庵字さんが「今回も名探偵テーマだなあ、とは思いましたね。冷めるよ、多すぎて」的なことを仰って、そこではっと思ったわけです。そういや、自分がライトノベルっぽいと思ったものは大体名探偵テーマ(名探偵の存在意義や苦悩に焦点を当ててる)だ、と。


 で、そこで読書会自体は終わったんですが、自分の中で何だかもやもやして、どうして名探偵テーマをライトノベルっぽく感じるんだろう、そもそもライトノベルっぽさとは、名探偵テーマとは、小説とは……みたいなことをごろごろ考えていて、で、ある程度形になったんでここで言語化して以降に活かそうと思ったという経緯です。実際、自作の小説に納得がいってないのは、ここが関係しているのではと睨んでいるので、今回のを意識したら結構改善する可能性はあります。



3.ライトノベルっぽさとは



 ライトノベルの定義とかいいとか悪いとか、Xで言い合いとかありますけど、そんなのとは無関係に私がライトノベルっぽく感じるのは何に由来するのか、を自己分析しますと、一言でいうと以下です。


「現実との地続き感のなさ」


 リアリティのなさ、というとちょっとニュアンスが違うんですよねえ。その小説内でのリアリティがあるパターンもあるんですけど、外の現実と地続きだって感じが限りなく薄いって感覚なんです。ライトノベルでない場合、ファンタジー小説とかSF小説で別世界の物語でも、この現実とどこか繋がっている感覚があるんですよね。

 じゃあ、それはどこから来てるのか。とりあえず思いつく限り列挙してみます。


①描写の省略

②キャラクター性の誇張

③参考文献の少なさ・無さ

④そもそも現実にないテーマ


 ①は、まあ、一般論として描写を事細かにすると現実感が生まれると思うんですけど、ライトノベルはそこを省略しがちですよね。いわゆる「地の文が少ない」パターンです。あるいは、地の文があっても、それが心理描写がほとんどを占めていたりとかね。もちろん描写を事細かにするライトノベルもあるんですけど、何ですかね、「作者が描写したい」部分を描写してる感ですかね。だから、本来は物語を進めるとかキャラクター描写する上で「邪魔だな、あまり描写したくないな」と思いがちな描写があればあるほどライトノベルじゃなくなっていくんじゃないでしょうか。なぜなら現実はそっち側だから。

 具体的な例としては、例えばある人間をラスボス的に描写したい時に、よく考えたら悪っぽくない一般市民的な描写も入れちゃう、とかでしょうか。ヒロイン、ヒーローのちょっと嫌な生臭い部分も描写しちゃうとか。


 ②もキャラクターを現実離れさせると全体が現実離れするって作用があるんだと思います。


 まあ、③はいわずもがな。イコール現実と地続きですから。


 ④については、まあファンタジーとか、現実にはありえない恋愛とか、そういうのですかね。で、「名探偵テーマ」がライトノベルっぽくなる理由はこれに掛かってると考えています。


 さて、私は肝は①の描写の省略だと思います。これと、他の要素がいくつかくっつくと私の感じるライトノベルっぽさになるのではないかと。

 たとえば京極夏彦の百鬼夜行シリーズってキャラクター小説の側面も強いですけど、だからといってライトノベル的ではないです。少なくとも私はそんなに感じません。これは、③の逆、つまり大量の参考文献もありますけど、なによりも①にあてはまらない(大量の描写による)ことが大きいと思っています。



4.どうしてミステリがライトノベルみたいなのか



 これらをもとに考えるとですね、まず「名探偵テーマ」が④の現実にないテーマに当てはまります。名探偵は現実にいないからです(多分)。でも、上で書いたように④単体では別にライトノベルっぽさは感じません。③の参考文献もないやつが多いですけど、これもまあ、単体では別に……って感じですね。これ単体では。最近のミステリ小説はキャラが立っているヤツが多いんで、②にも当てはまるのが多いかな。でもこれも単体以下略。


 問題は①です。描写の省略。

 最近のミステリってかなり叙述トリック(読み手へのトリック)が使われていることが多いんですが、これと描写の省略が「相性が良すぎる」んではないでしょうか。叙述トリックとはつまり描写のトリックなので、省略によってトリックが成立する、バレにくくなるわけです。トリックに不便な部分を省略するのはもちろん、そこだけ描写削るのは変ですから、全体的にそういう文体になっちゃうんじゃないですかね。


 で、①だけならまだしも、最近の新本格って結構他の②③④が揃ってるパターンが多いので、全部そろった結果ライトノベルっぽいと感じてしまった。そういうことだと思います。



5.ライトノベルの何が悪い



 別に悪くないです。

 ただ、多分向いていない題材があるんですよね、特に「描写の省略」とか「現実との地続き感のなさ」が不利に働いちゃう題材があるんじゃないでしょうか。


 発端となる読書会の小説で、ここがライトノベルっぽさと合ってないなと感じたのは、主に以下の二点です。どちらも話のメイン級の要素です。


・宗教……新興宗教ではあるんですが、うさんくさいペラペラな宗教という描写ではなく、むしろ物語上はちゃんとした宗教のはずなので、そうすると歴史とか教義とか宗教哲学的なところを描写がかなり薄いので妙に感じた。


・贖罪……宗教とは違うもっと一般的な意味での贖罪。かなり重いテーマなので、心理的葛藤とか罪とは何か、赦しとは何か、みたいな話をしっかりとせずに贖罪を扱うのは……


 ここから考えると、あくまでも基本、「重厚なドラマ」的なのは相性が悪いんではないかなと。あとはそうですね、小説において異様に細かい描写=恐怖になるんでホラー系も多分ライトノベルとは相性悪いんじゃないですかね。現実との地続き感が希薄ってところからは歴史系も厳しそうな気がします。もちろん、例外はあると思います。あくまでも基本ね。(そもそも一から十まで個人的感想ですし)


 で、結論なんですけど、上記の①~④(もっとあるでしょうけど)のうちのどれくらいを満たすのかを考えた時に、結構満たす=かなりライトノベルっぽくなっているのに、物語上にその相性の悪い要素をぶち込むと変に感じる、そういうことなのではないかと思います。特についつい「重厚なドラマ」とか「ホラー描写」とかやりがちなんで、①~④が揃ってるのにそっち系のストーリー(あるいはストーリーの大筋そのものでなくてもトーン)をやっちゃうと、ミステリとしてトリックとかそういうの以前に「なんか話が……」という風に感じてしまうんではないでしょうか。


 それに加えて、元の小説にも浮いている(と私が感じた)描写がありました。それは何かというと、ミステリーであるが故にアリバイとかトリックに関して、その周辺の描写をめちゃくちゃ詳細にしていたんです。

 他の描写がライトノベルっぽいがゆえに、その部分だけ詳細で偏執的なのでバランスが崩れて感じたと思います。


 今思えば、私のPCに眠っている公募に出さなかったミステリの多くは、まさにこれらをやってしまっていて、それが「トリックとかじゃなくて何か面白くないなあ」と感じた理由の一つだったのではないかと、そう考えた次第です。



6.まとめ:白井智之に学ぼう



 今後ミステリを書くならどうすればよいのか。白井智之作品に学ぶべきではないのか。というまとめです。


 まず、知らない方がいたらということで一応説明しますと、白井智之とは倫理観ゼロのグロテスクストーリー(平山夢明っぽい感じ)が特徴となるミステリ作家です。

 正直、あまりにもなストーリーで、ミステリとしてかなり素晴らしいのに私はそこまで好きではないのですが、これって、意識的か無意識的かは別にして、ここまで書いた内容をふまえてのことかもしれないと思ったわけです。考えすぎかもしれませんが。


 つまり、いわゆる特殊設定ミステリ(よく完全な異世界だったりします)であり叙述トリック的なものも仕掛ける以上、「まともな物語」にしてしまうと浮くから、敢えてストーリーをそういうものにしているのではないかということです。特に視点人物を倫理観ゼロにして感情移入する余地なしにしちゃうことで、「いい話」「重厚なドラマ」を避けているのではないでしょうか。実際、特殊設定であればあるほど倫理観が減って、エレファントヘッドとか最悪でしたよ(誉め言葉)。


 うーん、考えすぎですかね。

 でも、白井作品では話がかなりちゃんとしたドラマになっている「名探偵のいけにえ」が、現実にあった事件を下敷きにしている+明確な特殊設定(異世界)ではない、ということで現実との地続き感アップしているところを見ると、あながちそのバランス感覚を持っている説も否定できない気もするんですけどねえ。


 まとめると、ミステリの場合、トリックによってストーリー・トーンが限定されるのではないか。

 もっと言うと、トリックによって世界観や描写が決まり、それによってライトノベルっぽくなるのなら合わないタイプのストーリー・トーンが出てしまうからそれを避けねばならないのではないか。という、仮説です。


 もうちょっと具体的にすると、トリックやらキャラクターやらによって世界観、描写的が決定、ライトノベルっぽくなりそうとなって、これって想定しているストーリーとマッチしていないなと判断した場合、ルートが二つ考えられるわけです。


・ルート① ストーリーあるいはそのトーンを軽いものにあわせる

方法としては、視点人物やメインキャラの性格での調整、重厚なドラマを避けるストーリーに改変する、ミステリ的にやたら詳細な描写はなるべく簡略化できるよう工夫するなど。


・ルート② 描写をライトノベルからなるべく離す=現実と地続きにする

方法としては、現実の事件を下敷きにしたエピソード、キャラクターを地に足のついたものにする、参考文献を増やす、ストーリーラインからは不必要に詳細な描写をするなど。


 ちょっとこの仮説を元に、眠っている私の死んだミステリの物語のトーンを白井智之作品にちょい寄せるようリライトしてみて、蘇生実験してみてもいいかなとちょっとだけやる気がでてきました。


 ここまで読んでくれた方がいらっしゃいましたら、その方のご参考になりましたら幸いです。それでは!



7.蛇足:名探偵テーマの扱い



 上ではさらっと名探偵は現実にいないから、名探偵の意義や苦悩をテーマにしたらライトノベルっぽくなる、と書いたんですけど、これって乱暴ですよね。じゃあ、現実にないものテーマにしたらライトノベルかって話ですから。


 そもそも、名探偵テーマというのは、私の考えだとアンチミステリの範疇なんですよね。無数にある名探偵ミステリがまずあって、それを読んでいるうちに「いや、そもそもこの名探偵って……」という、ミステリに関する様々な欺瞞のうち名探偵という存在に関するものへのカウンターなんじゃねえのかな、という考えです。


 ってことは、そもそも名探偵テーマは、よほどうまくやらないとかなり「狭い」んじゃないかと疑っています。ミステリある程度知らないとアンチミステリ読んでも「ん?」ってなりがちだと思うので。そんなにミステリ読まない人に名探偵テーマの小説を読んでもらうのは、暴力系映画あんまり観たことない人に「ファニーゲーム」観せるようなもんじゃないですかね。


 じゃあ名探偵テーマをもっと普遍的に扱うにはどうすればいいのかというと、今のところ思いつくのは二つです。


 一つは名探偵テーマをメインにせず、ミステリを普段そこまで読まない人は普通に読んで面白いし、ミステリ好きが見たら「ほう、名探偵テーマですか」って感心するくらいの味付けにするっていうのです。というか、そもそもこうであるべきなんだと思います、本来は。ミステリ好きにだけ刺されーっていうのももちろんいいですけど。


 もう一つが、メタファーとしての名探偵テーマにする、ということです。具体的なやり方はさっぱり分かりませんが。

 ただ具体例はあります。分かりやすいのが2000年代以降のアメコミヒーロー映画で、あれってヒーローの在り方とか苦悩をテーマにした映画が結構ありますけど、もちろん現実にはアメコミヒーローはいません(多分)。なんですけど、あれはヒーローを現実の何かのメタファーにしているパターンが多いですよね。「シビルウォー」とか「ウィンターソルジャー」とかはタイトルからしてそうですし、「ダークナイト」でもバットマンがエシュロン的な力に手を出すことの是非みたいなのがありました。このあたりで、アメコミ好きのための映画ではなくより多くの人々に訴求する映画になってるんじゃないですか。

 名探偵テーマに向き合って創作したい場合は、こっちを目指すべきなのかもしれないです……が、そこまでしてこのテーマに向かい合うものなのか、とも思います。

今年もよろしくお願いします。

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久しぶりの投稿ありがとうございます アカウント持ってなかったので、初めて感想を描きました。 今ボクが描いてる「ファンの小説家ウスバー先生が作ったカスタムGPT「なろう主人公体験シミュレーター」でc…
わ、お久しぶりの投稿ありがとうございます リハビリと蘇生された作品、楽しみにしてます!
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