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1-4.シグ王国の自警団

 セーラータウンで過ごしはじめたヒュンケルは、冒険者協会に何度か足を運んだが、クエストボードを眺めて悩んだ。

「どれも大したクエストはなさそうだな」

 ヒュンケルは受付嬢をしているルテリーナに

「仕事をしたいんだが・・」

と相談すると

「申しわけありません。エリーター級の仕事はもちろん、プラチナ級のクエストも今はありません」

と言われた。

「そうか。なら仕方が無い」

 ヒュンケルはあきらめて冒険者協会を出た。

「どうします? このまま日々を過ごしていても、稼いだ報酬で今のホテルに滞在していられるのも限りがあります」

 シズに言われた。

「そうだよな。なにせ高級なホテルだからな。だからと言って安いホテルに替えるのもエリーター級の冒険者としては泊まりづらい。街を出てみるか」

「え?」

「旅に出た目的は、冒険者になって稼ぐことではない。この世界について広く知りたいからだ」

「では今日にでも」

「そうしよう」

 ヒュンケルはホテルに戻りチェックアウトをすると冒険者協会に行ってルテリーナに

「旅に出る。世話になった」

と挨拶した。

 驚いたルテリーナは

「どちらへ?」

と聞いた。

「足の向くまま、西、東。たどり着いたところが目的地だ」

 そう言って協会を出た。

「どちらに向かいます?」

「そうだな。・・シグ王国がある方向に行ってみるか」


 ◇


 山を幾つか越えたところに街らしきものが見えた。

「シグ王国の街でしょうか、それともまだゼンウォール国でしょうか」

「さあな」

 近づいていくと、意外に大きな街だった。

 その街の中を一団が駈けずり回っていた。軍や衛兵のような鎧のようなものは身につけてはいない。

「意外と騒々しい街だ」

 ヒュンケルが、そうつぶやくと

「他所から来た方ですか? 彼らは街の自警団です。街を守っていると豪語しているけど、裏では悪どいことをしている」

 店の男が言った。

「ここは、シグ王国の街? それともゼンウォール国の街?」

とヒュンケルが聞くと

「シグ王国のセリアタウンだ。それも知らないで来たのかい?強そうだけど」

 見た目は強面の大きな身体をしたヒュンケルに店の男が聞いた。

「旅をしている。ゼンウォール国方面から来た」

「なら悪いことは言わないからトリエルタウンには行かないほうがいい」

「そこがどこだか知らないが、なぜ?」

「トリエルタウンはシガ宮殿の城下町的なところだ。宮廷側と市民側で内戦が起きている」

「同じ国の中で戦いを?」

「国を築いてきた王家貴族側と、民衆側の小競り合いだ。小競り合いと言っても死者はお互いに出ている。・・この街に来た目的は?」

 店の男に聞かれて

「旅の途中で立ち寄ったまでだ。前の国の街では冒険者をしたこともある」

「冒険者ねぇ。もしかして魔法も使える?」

「多少なら」

「その身体だ。目立つだろうが、堂々と街中を歩かないことだ。冒険者協会もあるが冒険者になることは勧めない。自警団の誘いがあるかもしれん」

「それはまずいことなのか?」

「彼らは力のあるものを集めている。王族貴族を倒して自分たちの国をつくろうと考えているようだ」

「なるほど。いろいろ話が聞けてよかった」


 店を離れるとシズに

「どうします?」

と聞かれた。

「目立たないようにと言われても、シズなら問題ないだろうが俺はこの身体だ。街外れを散策してみるか」

「街から離れたところに人家のようなものが見えます」

 シズがホロスコープアイ(遠視魔法)で確認した。

「行ってみるか」

 そこは村のようだった。だがそこに近づくと、今まで感じていた人の気配が消えた。

「俺が野党か何かと思われたか?」

 戻ろうとすると数人の男たちがやってきた。

「あやしいやつ」

 男たちはヒュンケルとシズの周りを囲んだ。

「野党にしては男と女の二人連れとは、何処からきた」

「やはり野党と間違がわれたか。旅の途中に立ち寄ったまでだ。おまえたちは?」

「シグの自警団だ。用がないなら立ち去れ」

「乱暴な口の聞き方だな」

「大きな身体に背中に差した大きな剣。もしかして冒険者の経験があるのか?」

「冒険者をしたことはある」

「旅の途中とか言ったな。冒険者、いや自警団に入らないか」

「その気はない」

「報酬ははずむ。と言っても俺が出すわけじゃないけどな」

「金は欲しいが、その気はない」

「だったら立ち去れ」


 ヒュンケルとシズは解放されたが、男たちは

「女を捜している。かくまったりしていないだろうな」

と人家に声をかけていた。そしてしばらくして戻っていった。

 人家から人々が出てきて

「また年貢を納めろと来たのかと思った。これ以上持っていかれたら、我々の食い物がなくなる」

と口々にしていた。

 そしてまだヒュンケルとシズが居ることに気づいて驚いた顔をした。

「心配しなくていい。旅の途中に立ち寄ったまでだ」

と安心させて、村人から話を聞いた。

「彼ら自警団は、貴族たちの悪政に替わって新しい国をつくると言っているが、やっていることは貴族たちよりひどい」

となげいていた。

「どんな国なんだここは」



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