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1-3.護衛

 翌朝、冒険者協会に行くと、フォーナイツの面々と、荷を載せた馬車とソルトやレーテル、ソルマも居た。

「レーテルが暮らしていたロナウ村で集めた薬草を、わしのところで薬にしたり、ポーションをつくったりしている。ホーエンタウンに届ける分も請け負っているんだ」

 ソルトが話してくれた。

「レーテルはわしが引き取ることにした。そうしたら手伝いたいと言うから・・」

「ヒュンケルさんが一緒に行ってくれるなら、安心かなと、僕も止めませんでした」

とソルマが言った。

「理解しました」

「ところで、昨日は持っていなかった大剣を持っていますね」

「ああ、これか。昨日、店で購入した」

「・・そうですか」

 ヒュンケルとシズは冒険者のフォーナイツチームの面々と一緒にソルトたちを護衛しながらホーエンタウンに向かった。

 ソルトがポーションや薬草を載せた馬車の御者をして、その馬車の荷台にソルマとレーテルが乗った。ヒュンケルやフォーナイツチームは馬車の傍を警護しながら歩いて向かった。

「シズさんも馬車に乗っていていですよ。この辺りはまだ魔物は出ないでしょうから」

 ヘッテランがシズに気遣うように言った。

「いえ、私も歩いていきます」

「私もシズも歩いてセーユータウンに来ました。体力はありますから、お気遣いなく」

 ヒュンケルもそう言って返した。

「ヒュンケルさんたちは何処から来たんですか?」

「どこから・・まあ、国を挙げるとすれば、スラーレン法国になりますか。その近辺のロワール城に住んでいました」

「それは、どのくらいの距離のところにありますか?」

「知りませんか・・そうですね・・ここからだと数百キロというところですか」

「そんな遠くから・・歩いてきたんですか?」

「ええ、冒険をしながらね」

 そうは言ったものの、魔獣らしき凶暴な生き物には出会わなかった。この世界を知りたいという目的だったから、足を使って歩いてきたわけだが。

「シズさんもエリーター級ということは、やはり上級魔術師ですか?いや、腕力がありそうに見えないので」

 するとソルマが

「シズさんは僕のようにテポーションも仕えます」

とエルナーに言った。

「攻撃魔法ではライトニング(電撃)も使えますけど、味わってみます?」

 シズはエルナーのおしゃべりをうざく感じてきて、そう言うと

「いえ、遠慮しておきます」

とエルナーは口を閉じるようになった。


 夜は馬車の荷台に幌を被せてソルトたちは、そこで休み、ヒュンケルたちはテントを張って休んだ。夕食の料理はシズも手伝った。

「シズさんの料理を食べられるとは、感謝感激です」

 エルナーがシズを褒めた。

 テントに入ると

「センスエネミー(敵感知)は感じませんが、ちょっと周囲の山を確認してきます」

とシズが言った。

「必要は無いと思うが・・」

「ヒュンケル様と居られるのは嬉しいですけど、睡眠はとらないでも大丈夫なので」

「気をつけろよ」

「はい」

 シズは転移して出て行った。

「どうせ抱くなら受付嬢のルテリーナのような女性がいいな。独身かな。・・シズも美人だけど」


 ◇


 翌朝、リーダーのヘッテランが

「ホーエンタウンには安全のため川沿いを行くコースもあるんですが、今回はヒュンケルさんたちも居るし、山の麓を通るコースのほうが近いので、そっちで行こうと思います」

とヒュンケルに言った。

「コースはお任せします」

「では山のほうのコースで行きます」

 歩きながら

「山のほうが魔物が出やすいんですか?」

と聞くと

「川のコースより凶暴な魔物がいます。さすがに山の奥には入らないので魔族に出会うことはないでしょう」

とエルナーがこたえた。

「厄介なのはリーウルフ族が出張ってきていた場合です」

「リーウルフ族?」

「魔族ではないんですが、それに近い知能を持っています。狩りをする種族です」

「たしか、アルシュのシャークエルフも狩りをする種族と言ってませんでした?」

 ヒュンケルが自己紹介されたときのことを思い出して聞くと

「ええ。それでシャークエルフは、同じ狩りをするリーウルフと縄張り争いをして居住地を追われたことがあるそうです」

「なるほど」

 シャークエルフであるアルシェは、リーウルフには恨みを抱いているような顔をした。

「そこで考えたんですが、リーウルフ族の一部がコースの近くに棲んでいるようなので、この際、そこの彼らを倒して行くことを考えていたんですが」

「え? それって、リーウルフ族を襲うと言うことですか?」

「ええ。どうせ彼らは人族やシャークエルフからすれば邪魔な存在。襲われる前に潰してしまおうと考えたんです。我々と、ドアボーグを一撃で倒したヒュンケルさんたちの手にかかれば、小さな群れなら全滅させられると思って、今回の計画を立てました」

「それで私たちに声をかけてくれたんですか? ということは、今回の報酬には、それも含まれていると・・」

「いえ、これは私の思いつきなので・・その分の報酬は、あとでお支払いしますから」

 思わぬ話に、ヒュンケルはとまどった。

「彼らは凶暴な狩りをする種族です。殺しても問題はないと思います」

 ヘッテランが自信を持って強い口調で言った。

「それはどうでしょう」

「え?」

 ヒュンケルの言葉にヘッテランは「なぜ?」という顔をした。

「彼らが凶暴な種族かは人族からみてでしょう?彼らが人族の村や、街を襲ったことは?」

「それはないです。彼らのほうから人族の居住地を襲ったことはありません」

「では、なぜ彼らが凶暴な種族だと思うんですか?」

「それは・・我々が山に入ろうとすると襲ってくるからです。肉食でもあるんです。それに・・シャークウルフも被害に遭っています」

「それは自然の摂理でしょう」

「え?」

「この世界にはいろんな種族が存在します。それらは、それぞれの縄張りを持ち、生きていくための行動をとります。ときには別の種族を襲うこともあるでしょう。それが自然界の・・。

 私も今まで色んな人族や魔族たちとも交流を共にしたこともあります。ほとんどは、どんなに力があっても、自分たちの縄張りに進入したものを襲っても、自分たちから他の種族の縄張りを侵害することはありません。リーウルフも自分たちの縄張りを守っているに過ぎないんだと思います」

「人族にとっては害をなす種族です。それを殺めて何が悪いんですか」

「人族にとって彼らが害をなすものであっても、彼らからすれば人族が害をなすものでしょう。人族は襲われたくないが、他の種族は襲っていい、というのは人族の身勝手でしかない。人族こそ、この世界の凶暴な種族になる」

「話は平行線になりそうですね」

「平行線と思うかは人それぞれだが、もし、あなたたちがリーウルフ族に攻撃を仕掛けるなら、私はこの仕事から下ろさせてもらいます。あなたたちだけでリーウルフを襲ってください」

 ヒュンケルはヘッテランにそう言うとシズに

「セーユータウンに戻ろう」

と魔法陣を出した。するとソルマが

「待ってください。ソルトさんたちポーシュンの運搬だけでも手伝ってもらえませんか?」

とヒュンケルを止めた。

「それもフォーナイツチームにしてもらえばいいでしょう。リーウルフを倒せば運搬は可能だろうから」

と拒否すると

「最初の契約通り仕事を放棄するなら、違約金を頂きます」

とヘッテランが言った。

「そういう手で来ましたか。では、運搬の護衛は引き受けましょう。但し、リーウルフが襲ってきてもあなた方を助けませんよ。あくまで荷物の護衛ですから」


 ◇


 ホーエンタウンに向かっていると

「何者かが近づいてきます」

 シズがヒュンケルに言った。

「いよいよ来たか」

 ソルマもフォーナイツメンバーもセンスエネミー(敵感知)は使えないのか、何ものかが近づいてきてもわからないようだった。

 そして・・。

「リーウルフだ!」

 エルナーが気づいて崖の上を見た。

 一匹や二匹ではない。数十、いや百匹以上、居るようだった。

 ヘッテランが

「襲ってきたら退治してください」

とヒュンケルに言った。ヒュンケルは

「断る。馬車の護衛は引き受けるが、襲われない以上彼らに危害を加えない」

と言い切った。

 ソルトが馬車を急がせた。それに向かってリーウルフが向かってきた。

「一気に襲ってきたぞ」

 エルナーが恐怖し、アルスに

「魔法で何とかしてくれ」

と言った。

「無理です」

 アルスも恐怖した。

「ヒュンケルさん、力を」

 ヘッテランが、またヒュンケルを頼った。

「断る」

 ヒュンケルとシズは飛行魔法(フライ)で馬車を追った。

 フォーナイツの面々は転移魔法も使えず、足で逃げるしかなかった。

 リーウルフはフォーナイツの面々を襲いはじめたが、馬車まで襲ってこなかった。

「ほんとうに彼らを助けないんですか?」

 シズに聞かれ

「その気は失せている。まったく人族は考えが身勝手だ」

とヒュンケルはこたえた。


 ◇


 ソルトは安全を確認して、川のほとりで馬車馬を休ませた。

 ソルマが

「フォーナイツの人たちは大丈夫でしょうか」

とヒュンケルに聞いた。

 転移して戻ってきたシズが

「彼らはリーウルフに食べられたようです」

と報告した。

「ほんとうに助けなかったですね」

 ソルマの言葉に

「受けた仕事に含まれていなかったから。彼らも助けられる立場ではなく、警護する立場だった」

とヒュンケルはこたえた。

「冷たいんですね」

「他の種族を簡単に殺める人族が暖かいとは思えない。きみは暖かいのか?」

「冷たいとは思っていません」

「なら、なぜ彼らが簡単にリーウルフを殺めることを口にしたとき、反対しなかった? 賛成したのではなかったのか?」

「それは・・」

「もし、我々の警護を拒むのであれば、報奨金はいらないから、仕事はこれまでとさせてもらう」

「それは困ります。まだホーエンタウンに着くまでは、何が襲ってくるかわかりません」

「じゃあ、雇ってくれるんですね」

 馬車を護衛してホーエンタウンに着くと、ソルトたちは薬草とポーションを納めて仕事を終えた。

「では帰りはセーユータウンに転移して帰ろう」

 それを聞いたソルマは

「最初から転移してくればよかったのでは」

と思いついたように言った。

「無理です。知らないところには転移出来ない」

「・・そうですか」


 ソルトたちも一緒に転移してセーユータウンに戻ると、ヒュンケルは冒険者協会で報酬を受け取った。

 今回の話を聞いたトルマが

「やはりフォーナイツの力は口からでまかせだったようだな」

と言った。

「どういうことです?」

「彼らから言ってきたんですよ。プラチナ級の力があると。最初からヒュンケルさんをあてにしていたようです」

「そういうことか」

「しかし・・ヒュンケルさんが上位の転移魔法を使えるなら、これからも頼りにしたい。道中、危険な思いをして、上のクラスの冒険者を雇ったりもしないで済む」

「それはお断りします。転移魔法の安売りをするつもりはない。通常の十倍の報酬がもらえるなら考えないでもない。エリーター級だから、もっと価値があると思うけど」

「・・そうだよね」


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