1-2.フォーナイツとリュース
お待たせしました。(誰も待ってはいないか)
家庭に不幸なことが起きまして投稿を控えていました。
また投稿をはじめようと思います。よろしくお願いします。
翌日。
ヒュンケルはシズと街の散策に出かけた。
街はスラーレン法国やワリキュール王国に似ていると思った。ヒュンケルも異世界に転移してくる前は、もっと近代的な世界で暮らしていた。それから比べてのどかさが漂うような雰囲気だ。乗り物は馬車が多い。明かりも油を灯している。
「どこも人族がつくりあげる街は似ているな」
「この辺りも、街の周りには魔獣とかが居そうですね」
「そういう世界なんだろう」
◇
冒険者協会から使いが来た。行ってみると、最初に対応してくれた受付嬢が
「ヒュンケル様、会長のトルマ様が二階でお待ちです」
声をとかけてくれた。
ヒュンケルが
「今後も世話になるかも知れないから名前を聞いていい?」
と訪ねると
「はい。ルテリーナといいます」
と教えてくれた。
「ルテリーナ嬢、よろしく」
歳を聞くのは控えておこう。シズも居るし。
二階の一室に案内されると、そこにトルマと数人の男が居た。
「ヒュンケル殿、早速呼び出して申し訳ない」
「いえ。仕事ですか?」
「うむ。その前に紹介しておこう、フォーナイツと言うプラチナ級の冒険者チームの面々です」
プラチナ級とは、ここの冒険者協会でエリーター級に次ぐ上位のクラスとルテリーナから聞いている。
「私からチームの自己紹介させてもらいます。魔術師のアルス、剣を使わせたら負けたことのないエルナー、シャークエルフのアルシュ、そしてリーダーを務めるヘッテランです」
「シャークエルフ?」
確かに良く見ると耳が少し尖って見える。
「シャークエルフはエルフの中では躍動的で、狩りをして暮らす種族のようです。傷ついた彼を助けてから仲間にしました」
「そうですか。・・つまり人族ではないと」
「この街中にも人族以外の種族も暮らしています。この世界には色んな種族が居ますから」
「のようですね」
言われて街を散策したときのことを思い出してみた。しかし、街の中にははっきり人族と区別出来るような種族は見受けなかった。エルフのような区別のつきにくい種族なのだろうか。それともハーロック(雅則)たちと暮らしている魔族のような、人族に変異しているものがいるのだろうか。
「人族以外には違和感を感じますか?」
リーダーのヘッテランから聞かれた。
「そんなことはないです。私の仲間というか知り合いにも、いろんな種族が共存することがいいと思っている者がいて、私もそう思っています」
ヒュンケルはハーロック(雅則)を思い出しながら言った。
するとトルマやフォーナイツの面々は笑顔を浮かべていた。
「俺、いや私たちも自己紹介しておきましょう。私がヒュンケルで、彼女はシズといいます」
ヒュンケルが自己紹介すると、ヘッテランが
「ヒュンケルさんはドアボーグを倒すほどの力があると聞きましたが、シズさんもエリーター級の冒険者ですか?」
と聞いた。
「ええ、彼女も強いですよ」
ヒュンケルがそう言うと、ヘッテランたちは不思議な顔をした。シズは美人でしかも女性。それがエリーター級の力を持っていることに驚いているようだった。
シズは魔族だが、それは秘密にしてヒュンケルもシズも人族として行動している。
「では、早速仕事の話をしようと思います。ここから北西の方向に数十キロ行ったところにホーエンタウンという街があります。同じゼンウォール国の領地内ですが、そこにポーションを届けに行く仕事です」
「ポーションとは?」
「薬草からつくった液体で、傷や病気を治すものです。といっても軽い怪我や傷はライトヒーリング(軽症治癒魔法)で治せるし、ヒーリングマジック(治癒魔法)を使える魔術師もいるのですが、街の住民も多く、数人ではみきれません。そこで魔法に頼らなくても治癒・治療が出来るポーションを作って街に届けるんですが、道中、どんな魔物が出るかわからないので、なるべく頼りになるレベルの高い冒険者に警護をしてもらいながら届けに行っているのです」
「なるほど。それで、その道中の警護を私たちに頼みたいと・・」
「そういうことです。お願いできますか?」
「わかりました」
「では出発は明日ということで、仕事の依頼者に伝えますので。明日の朝、ここから出発しようと思います」
「では、今日のうちに剣か何か武器を購入したいと思うのですが、ドアボーグのような魔物が出た場合、魔法攻撃ばかりではライフを減らしてしまいますから」
そういう心配はヒュンケルには必要なかったが、魔法も出来るだけ使わないほうがいいだろうと考えた。
「なら、剣や弓を売っている店も街中にあるので・・」
「では、そこを覗いてみようと思います」
冒険者協会を出たヒュンケルは、シズの憂鬱そうな顔を見て
「どうした?」
と聞いた。
「ヒュンケル様は人族に合わせていたようですけど、疲れませんか?」
とシズに言われた。
「確かに、ちょっと合わせすぎたか? まあ、人付き合いとは疲れるものだ。俺も元の世界では気疲れする生活を送っていた」
街中には、いろんな店があった。もちろん、食べ物を売っている店も。
「シズが作ってくれていた料理のほうが上手そうだ」
「人族じゃないですけど、ヒュンケル様に料理を作っているうちに、ますます好きになりました」
「それは嬉しい。生活のほとんどはシズに任せていたと言うか、頼っていた。感謝している」
「もったいないです」
街には確かに武器を売っている店があった。剣やアーチェリー型の弓などが並んでいる。
大男が入って来て、店主は驚いた顔をしたあと
「何をお探しで」
と聞いた。
「最近、冒険者になったばかりだが、武器らしいものは何ひとつ持っていないので、何かあればと思って来てみたんだが」
「それなら、剣かな。体の大きなあんたに弓は似合わない」
「そうか。では私にふさわしい剣を見繕ってくれないか?」
「冒険者になったばかりらしいが、お金はあるのか?」
「ドアボーグを倒したので多額の報酬をもらった」
「ドアボーグを?・・まさかプラチナ、いやエリーター級の冒険者か」
「そのエリーター級の冒険者に認められた」
そう聞いた店主は、手のひらを返すように
「そうですか。ならとっておきの剣があります。というか、大きすぎて、それに重いので売れない剣があるんです」
店主が、奥の壁に横たえて置いてある剣を見せた。
「確かに重そうだ」
ヒュンケルは、その剣を手にすると、軽々と持ち上げた。長さも1メートル50は超える大きさだ。だが体の大きなヒュンケルには違和感がなかった。
「よさそうだ。いくらだ」
「ほんとうに使いこなしている。・・安くしておきます」
店主はヒュンケルに恐れおののくように金を受け取った。そして
「その剣はクラナリというらしく、なんでも魔王クラウスが持っていたもので魔力を込められるとか」
と話した。
「魔王が居るんだ」
「いえ、ただの伝説です。昔話ですよ。魔力が込められるかも定かではありません」
「そうなんだ」
「店主、ようやくそれが売れたか」
男が店に入ってきた。
「リュース様」
店主は男を知っているようだった。
「その剣を使いこなすには、相当の体力か魔力が必要だ。冒険者協会でドアボーグを倒した者が居ると噂を耳にした。体つきからみて、それがおまえのようだな」
男は乱暴な口の利き方でヒュンケルに言った。
「なら、どうした」
ヒュンケルも男に合わせた言い方で返した。
「ドアボーグを倒せる者は冒険者とて久しい。最近は力のある冒険者もこの街を出て行って、今は俺くらいだ。おまえの力を見せてもらおうと思って・・」
「では、おまえの自己紹介をしてもらおうか。俺はヒュンケル。この街に来たばかりだ」
「俺の名はリュース。冒険者協会でプラチナ級の資格を取得した。が、そんなものじゃないはずだ。だが、大きな仕事がないからエリーター級の資格をもらえないでいる」
「そういうことか」
「俺も剣を使うが、魔法も使える。俺の剣はただの剣ではない。魔力が封じ込められた魔剣、キリネイル。ドアボーグも切り倒せる力を持つ」
「なら、ドアボーグを倒してくればエリーター級に認められるのではないか?」
「むやみに殺さないだけだ。だが、この街には俺以上の冒険者が居ては困るのだ」
「なぜだ」
「・・お前には関係ない」
店主が
「彼は口ほどの強さはありません。ただ、強い印象を持っていないと、街の女性どもに見向きもされないので・・」
とヒュンケルに教えてくれた。
「そういうことか。なら相手をしてやるか」
ヒュンケルがリュースに
「相手をしてやる。ただここでは店など迷惑がかかる。広い場所に案内しろ」
と言うと
「ついて来い」
リュースはヒュンケルを広場に案内した。
「広いのはいいけど、目立たないか?」
「ここで彼が勝てば、彼の名声がもっと上がるのでは?」
シズが推理した。
「なるほど。わざと目立つところで勝負したいというわけか。じゃあ、ここで彼を倒せば・・」
「彼の名声は消えると思います」
「さて、どうしたものか・・」
ヒュンケルは剣を抜くと
「買ったばかりの剣、クラナリの試し切りをお前で試す」
とリュースに言った。
「さっきも言ったはずだ。これは魔剣だと」
「それがどうした。どんな切れ味か、俺で試してみろ」
「後悔するな!」
リュースが剣を抜くと、その剣が青白く光りだした。
「え、本当に魔力がこめられている?」
「ドアボーグの前にお前を倒してやる。くらえ!」
リュースの剣から光が放たれてヒュンケルに向かってきた。
「まともに魔光を受けた。生きては・・え・・」
ヒュンケルは平然と立っていた。魔光の衝撃もなく何とも感じなかった。
「今のはレベルはいくつだ」
「なに?」
「何とも感じない。レベル50といったところか。魔剣の力とは、そんなものか」
「嘘だろう」
「それでドアボーグを倒せるのか?」
「・・倒したことはない」
「やはりな。ではお前でクラナリの試し切りをさせてもらおうか。確か店主が魔力を封じ込めるとか言っていたが・・」
ヒュンケルはクラナリに気を送ってみた。するとクラナリが輝き出した。
「聖剣のようだ。・・いや、魔王が持つから魔剣と呼ぶべきか」
ヒュンケルがリュースに向かって一振りすると、キリネイルの剣先が折れて落下した。
「ワ、ワ、ワ・・」
驚くヒュース。
「魔法も使えると言ったな」
「俺を挑発する気か? なら、俺の魔法を浴びせてやる。ライトニング(電撃)」
リュースがヒュンケルに電撃を放った。が、
「魔法レベルは30といったところか。弱い、弱い。バリヤホールド(魔法防御)を張るまでもない。死なない程度に浴びせてやる。ライトニング(電撃)」
今度はヒュンケルがリュースに電撃を浴びせた。リュースはその場に倒れこんだ。
「言ってなかったな。俺は魔王だ。剣の試し切りは明日からの仕事に持ち越しだな」




