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2-5.襲われたキャラバン隊

 冒険者協会長のトナンがアリサにケルンタウンに向かう配達の護衛の世話をしてくれた。

 父のダルが住むシューリン村に行くには回り道になるが、そこからシューリン村に行くほうが、コーリンタウンから直接行くより近い。

 それにシューリン村は体力的に歩いていける距離にあるが、数日かかる。馬車のほうが早い。荷馬車の護衛も兼ねているので、報酬もそれなりに出る。

「御者をしているエルターシャ。エルと呼んでください。私も仕事柄、魔法の研鑽を心がけてけいますが、アリサさんが護衛をしてくれれば怖いものなしです・でも・・こんな仕事でいいんですか?」

 エルがアリサに気にかけてくれた。

「ケルンタウンの先のシューリン村に父が住んでいて、そこに行きたいので、護衛の仕事は協会長(トナン)が世話してくれたの」

「そうですか。私が出すわけではないですけど、報酬は少ないでしょう」

「馬車に乗せてもらうだけで助かるから、報酬はエルにあげるわ」

「ありがとうございます」

 アリサはコーリンタウンでSクラスの冒険者稼業をしているので、報酬はそれなりに高い。稼いだ資金は主に武具の購入などにあてるだけなので、溜まる一方だ。今回のような馬車の護衛はSクラスになってからは一度も受けたことがない。しかし、今回はシューリン村に行くのが目的なので、トナンが気遣って世話をしてくれた。なので報酬はエルにやることにした。


 馬車はケルンタウンに向かって走り出した。

「馬車を襲ってくるのは、やはり魔物なのか?」

 ヒュンケルはアリサに聞いてみた。

「魔物に襲われることもあるけど、盗賊も現れることがあるのよ」

「盗賊? それは人族か」

「ええ。アリオン神国が近隣の国を統治しはじめてから、多くなって。敗れた国の兵士が野党になっているという噂なの」

「アリオン神国か。いずれは行かなければならない国になりそうだな」

「ヒュンケルさんはアリオン神国になんら関係が?」

「いや、直接的な関わりはないが、前にも話したとおり、俺はスラーレン法国の国王も務めたことがある。そのスラーレン法国にアリオン神国から流れてきた者が権力を得て騒ぎを起こしたことがある」

「そうですか」

「アリサが転生者というのが興味深い。話を聞きたいが、俺の話が先かな? 俺は元はしがない営業マンだった。リストラに遭い引きこもり生活まで始めた俺は、魔王ヒュンケルとしてこの世界に転移してきた。この世界は元の世界に比べ、文明の送れた世界だった。なぜ俺が魔王ヒュンケルとしてこの世界に転移してきたのか、自分でも理解していない」

 ヒュンケルはわかりやすいように話したつもりだが

「ヒュンケルさんの話は理解出来ません。私は転生者としてこの世界に来たと聞いているだけで、その前の記憶もないし、この世界で赤ん坊から育ったので、他の世界のこともわかりません」

とアリサに言われた。

「そうか。・・無理な質問をして悪かった」


 ケルンタウンまでの道のりは、2日かかるらしい。夜は馬も休ませなければならない。

「エルとアリサは馬車の荷台で休んでくれ。夜の警戒は俺とシズがする」

 ヒュンケルがいうと

「私も交代で見張り番します。私が受けた護衛の仕事ですから」

とアリサが言った。

「いや、俺たちは寝ないでも問題ないから。魔王の看板を背負っているからな」

「・・じゃあ、お言葉に甘えます」


 夜は静かだった。人工的な音は何も聞こえない。空には満点の星が無数にきらめいている。

「俺が子供の頃には、この空のように星がきらめいていた。田舎育ちだったしな。・・妙になつかしい」

 ヒュンケルがつぶやくと

「元の世界に戻りたいですか?」

とシズに言われた。

「いや・・元の世界は息苦しかった。人や物も溢れかえって・・こういう世界も今はいいと思っている。・・シズはどんなところで生れた?」

「忘れました。かなり昔になりますから。・・もともと家族のようなものもなく、人族に住処(すみか)を追われながらロワール城にたどりつきました」

「そうか」

「私だけでなく、この世界に生きるものは、ヒュンケル様のような存在を求めていたのかも知れません。ヒュンケル様がこの世界に来てから、みんなのびのびと暮らし始めました」

「俺はこの世界に必要とされて転移してきたのか。・・シズたちの力になれたなら、それもよしとしよう」


 そして朝日が昇るころ

「囲まれてますね」

 シズが気配を感じて言った。

「人族のような気がする。数十人は居るか」

 シズが遠視魔法(ホロスコープアイ)で辺りを見渡し

「私たちの馬車を狙っているわけじゃなさそうです。他の馬車が狙われています」

とヒュンケルに言った。

「近くに行って確認するか。転移するぞ」

 ヒュンケルとシズは空間転移(ポーテーション)で、気配のほうに転移した。するとキャラバン隊の馬車が襲われていた。

「助けるか」

 ヒュンケルは飛び出していって、馬車を襲う野党たちに大剣を振った。

「一人だ、ひるむな」

 野党たちがヒュンケルに襲い掛かってきた。

 ヒュンケルは上空に魔方陣を出すと

「ライトニングストーム」

 電撃を回りに落とした。野党たちはばたばたと倒れていった。

 それからキャラバン隊に近づき

「護衛はいないのか」

と聞いた。

「護衛の冒険者たちは、一目散に逃げていきました」

「あきれた冒険者たちだ」


 ヒュンケルは隊商の男から

「ケルンタウンまで護衛を頼めないでしょうか」

と頼まれた。

「守ってやりたいが、他に連れがいるんだ。きみたちを助けたのは、たまたま近くに居たから」

と断ろうとした。

 そこへアリサたちの馬車がやってきた。

「キャラバン隊が襲われたんですか?」

「この方に助けてもらった」

 隊商の男がヒュンケルに感謝した。

 アリサは倒れている者たちを見て

「この者たちは、敗戦した国の軍人だと思います。雇い主を失って、野党に成り下がったんだと思います」

と言った。

「嘆かわしい連中だ」

「ケルンタウンに行くなら、場所は一緒ですから、護衛を兼ねて同行させてもらえますか?」

 アリサからキャラバン隊に申し出た。

「望むところです」

 キャラバン隊を護衛しながらケルンタウンに向かうことになった。


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