婚約のお誘い
やっと貴族様の案内係が終わった。これでひと息つけると思ったら。後ろから声をかけられた。
「お前、とてもきれいな容姿をしているな。本当に孤児か?」
後ろを振り向くときれいな水色の髪にさっきの貴族様のような赤い目をした綺麗な少年が居た。
「はい、私は孤児です。きれいと言っていただけて嬉しいです。」
私はそう言ってニコッと笑った。
そうするとその少年が目を見開いてこういった。
「惚れた。」
え?なんて言った?掘れた?彫れた?ホレタ?
え、それとも惚れた?嘘でしょ。この何処かの貴族のご子息様に一目惚れされた?うそ?頭の中が全部疑問形になっていく。
どこかの貴族のご子息様?ああっーーーーーー!さっきのお貴族様の息子!!!!!
まさか。いやでも水色の髪に赤い目それにきれいな服、整った容姿!あっ、これさっきのお貴族様の息子さんだ。
「えっと?ほれたとは?」
怖かったが聞いてみることにした。
「ああ!その言葉の通りだ。僕はお前に心を奪われてしまったのだ。」
はぁっーー?何よそれ超厄介じゃない?貴族様に好かれたりなんかしたら他の貴族から援助してもらいにくくなるし自由がなくなっちゃうじゃない!
何ヘラヘラしてるのよ。これで貴族が務まるの?
こんな事を考えているとご子息様が
「なぁ、どうしてお前は孤児になったのだ?」
またこの質問か⋯
「えっと、両親が殺されてしまって。」
「可哀想に」
ほらまた可哀想だよ。じゃあお金でもくれればいいのにって考えていたら思ったのと違う言葉が耳に入った。
「でも僕ならお前を助けられるな!良かったな」
は?え?何こいつ。何言ってるの?
「よし今から父上のところに行くぞ!ついてこい。」
「ちょっと待ってください。前々から養子縁組の相談は度々来るのですがまだ両親のことが忘れられず難しいのです。」
私はあの可愛い子の涙には逆らえないというどの世界でも共通の理を利用して断ろうとした。だが失敗に終わった。私の攻撃が効かなかったのではない。効いてはいたがこいつが私の予想の斜め上を行く答えを出してきたからだ。
「じゃあ大丈夫だな。」
「は?」
「僕がお前と婚約するから!」
ええっーーーーー!ふ ざ け る な ぁーーーー!!!!!!
ばか、あほ、この間抜け!
私は心の奥でそう叫んでいたが私の気持ちとは裏腹にいつの間にか孤児院の談話室に居た。
配置はこうだドア側のソファにお貴族様親子、反対の窓側のソファに院長と私。
静かすぎて外の小鳥のさえずりやドアの外で私のことを話している孤児たちの声が聞こえてきた。
(気まずい_____________________)
沈黙が5,6分ほど続いた。
この気まずい空間を破る一言を発したのはお貴族様の大きい方だった。
「ルキハ急に押しかけてきてどうしたんだ。サスタはどうした?何故案内人の孤児を連れている?」
たくさんの疑問がお貴族様の小さい方に飛んできた。てか小さい大きいは面倒臭いから小さい方がルキハだとわかったからルキハ、名前のわからない大きい方をお貴族様と呼ぶことにしよう。
そんなことを一人で考えているとルキハがさっきの質問に答えた
「突然押しかけて申し訳在りません父上。サスタはどこにいったのかは知りません。そしてこの孤児を連れてきたのは、俺がこの孤児と婚約を結びたいからです。」
この一言でまたこの談話室は静かになった。
そしてまたこの沈黙を破ったのはお貴族様だった。
「婚約、どういうことだ?孤児を婚約者にするのか?我々の名を汚すつもりか?」
少し怒っているのがわかる口調だった。その調子でこの話はなしにしてくれ!!!!
「父上この子を助けられるのは俺しか居ないのです!両親を失ったこの子を俺は助けたいのです!」
「どうしてそこまでする?しかもその子には聞いているのか。どうせお前は何も聞いていないのだろう。」
「父上、この子は困っています。助けてあげるべきなのです。それに俺はこの子に惚れました。」
「何を馬鹿なことを言っている。そんなことはできん。惚れたなどの理由で貴族が結婚などできるわけがないだろう。少し考えればわかることだ。そんなことも理解していなかったのか。婚約などは断じて認められん。」
「な、父上!」
「この話はもう終わりだ。」
なぜか私は参加せず。私との婚約の話が行われていた。でもなくなったってことだよね!
良かった。一安心。
でも早くこのギスギスした空気は辞めてほしいな。
などというくだらないことを考えていたらルキハが要らないことを言った。
「なら、父上一つだけこの子に好きなものを買ってあげても良いですか。」
またこいつは余計なことを。
「お前が巻き込んでしまったお礼としてお前が払うのならばな。」
「ありがとうございます。では今からでも馬車を用意して店へ向かいましょう。」
え、なんか話が飛びすぎじゃない?こんなスラスラ進むかな?てか忘れてたけど隣りに座ってる院長がガタガタ震えてる。大丈夫かな。
確かに貴族様が目の前で喧嘩しだしたらそりゃそうなるよね。でも貴族で院長がこんなことになるの始めてみた。かなりの上級貴族とかなのかな?
なんだか甘い香りがする。
などと、考えているうちにまたもや馬車に乗せられてしまった。はぁーまたこの流れか。
私は転生してきてあまり外の景色を見たことがなかった。馬車に乗りながら外の風景を眺めていると本当に転生したのだなと改めて思う。
昔の海外の家のようでも有りでも見たことがない建物、
木々たちは命を持っているかのように動き、大きな鳥やトカゲのようなものもいる。
馬車に乗る前はスライムも見た。
それに何より太陽の真ん中に穴が空いておりそこだけは青でも水色でもなく真っ黒だった。
不思議だな⋯⋯
そんなぼんやりとした考えを吹き飛ばすかのように
「お〜い、お前。この森を抜けると貴族街に出るぞ。」
「そうなのですか。初めて行くのでとても緊張してきました。」
孤児院にいて馬車なんて乗ったことなかったけど車とかと違ってとてもガタガタする。道も平らになっていないのもあるけど馬車のタイヤが木で出来てるから固くて乗り心地は最悪。
「てか聞いてなかったがお前の名前はなんなのだ?」
いや聞くの遅すぎるだろ。まあいいか。
「リルと申します。」
「リル、か。」
こんなクソみたいに気まずい空間から早く抜け出したいな。
などと考えていると急に馬車がグラッと揺れて私が椅子から落ちそうになるとルキハが支えてくれた。
明らかに何かがおかしい。
急になんだか外が騒がしいし、なんだか暗い。先程まで入ってきた太陽の光も届かなくなっている。
気分が悪くなってきた。
なにこれ気持ち悪い。乗り物酔い?
「何がおきている!」
お貴族様がそう聞くと赤龍と外の衛兵が叫んでいる声が聞こえた。
赤龍!この世界に来て初めてこんな異世界っぽい単語を聞いたわ。と一人で盛り上がっているとお貴族様とルキハが顔色を変えて馬車から飛び出した。
「どうしてこんな森に赤龍が。我々だけで勝てる相手では無い!どういたしますか父上。」
「総員戦闘態勢へ。馬車の中にいるリルとルキハを守るのだ。」
「父上、僕も戦えます。」
「勝ち目が無い敵なのだぞ。お前はこんなところで死んではダメだ!いざとなったら我々が囮になる。そのうちに逃げるのだ。」
「くっ⋯はいっ。父上。」
苦虫を噛み締めたような顔でルキハが頷いた。
この会話で今の絶望的状況がよく分かる。
え、勝てないの!こんなに衛兵を連れているのに?
衛兵たちが慌ててこの場は混乱状態。
この混乱を鎮める一つの声が聞こえた 「おちつけ、おまえたち」
貴族様の声で場は少し静かになったがまだ混乱は完全には落ち着いていない。
ここで死ぬの?私?こんなにいい体に生まれたのに?
そんなの無理と思っていたら。
突然体の中からなにか温かいものを感じた。私はこう見えて日本では異世界アニメのオタクだったのよ。これがなにかはすぐに分かった。
”多分魔力よね?”
私に扱えるのかな?自爆とかしないよね?
まぁなんでもいい。生きていられるのなら。
私はそう思って勢いよく馬車から飛び出て目を瞑ったまま赤龍が氷漬けにされることをイメージした。
その瞬間体の中で暖かかったものが急に冷たくなって出ていった。あたり一面に広がってまわりから冷気を感じて真冬かよって感じがした。
温かさは何も感じない。先程までの赤龍の熱も、太陽の熱も、
私はまわりが静かになった頃くらいに恐る恐る目を開けた。
氷漬けにされた赤龍を見て。
へぇ赤龍ってこんなにも大きくて強そうなのと今更腰を抜かしそうになった。
赤龍の全長は6〜7m位でとても大きかった。角が生えておりキラキラ光る深い赤色の鱗をまとっていた。
使えるかはほとんど賭けだったけど転生者なんだからこれくらいはできるわよね。良かった。
私が氷を出せるなんてちょっとびっくり。でも魔法だしね普通でしょっと思っているのと裏腹に今はまわりからの視線が痛かった。
何?思いながら周りを見てみるとみんな目を見開いて驚いた顔をしながらこちらを見て居た。
もしかして私は混乱を止める天才なのかも!などと考えたくなった。
え、何。やらかした?と一人でいろいろ考えているとルキハがこっちに来て
「すごいね!」
と興奮気味に言ってきた?
何?魔法が?孤児で魔法が使えるのはすごいの?
衛兵たちがレッドドラゴンを解体していく。でも上手く切れないみたい。レッドドラゴンの鱗が硬いのかそれとも刃物が悪いのか。解体作業はあまり捗っていなかった。
(解体してもあんなに大きいのにどうやって持って帰るのかな?まさか魔法で燃やすの?地球温暖化が、、、てここ地球じゃないじゃん。大丈夫なのかな?)
などと思っていたら。衛兵たちが空気中に穴を作ってそこににしまっていった。
まさか収納魔法?それともそういう魔法の道具?ブラックホールみたい。気になる!
そんなことを考えているとお貴族様が焦った顔で
「今すぐ馬車の中に戻りなさい。家に連れて行く。そして今ここにいるものに次ぐこのことは口外禁止だわかったな。」
そうするとまわりの衛兵たちは顔を青くしながら頷いた。
私なにかダメなことでもした?
殺されるの?そんな事を考えているとまたいつの間にか馬車に乗せられ大豪邸の前に居た。
貴族様からのお誘いをゲットしたリル!普通なら喜ぶのにな⋯
私も欲しいそんなお誘い!
なんだか考えるの楽しくてとても先のことまで妄想している。
だからこの話にも結構な伏線が張ってあります。ぜひ考えてみてね。




