馬鹿なご主人
私の名前はろこといいます。
ごく普通のリル様のメイドを演じているものでございます。
今日のリル様はなにか怒ってらっしゃったな。
またご主人様がなにかなさったのでしょうか?
あの方のリル様への愛情はおかしいくらいに重く過激です。
はぁ。ほんとに辞めたいこの仕事。
でもリル様は可愛いし優しい、でも裏がある。それでもご主人様よりもマシだと思えてしまう自分が怖い。
それでも私がご主人様であるルキハ様に忠誠を誓ったのは深い理由があったからだ。
単刀直入に言うと私はエルフ族の末裔である。
魔法で耳などは隠しているが注意深く見たら気づかれてしまう。
今魔法は昔に比べて弱まってきている。神からの祝福が少なくなっているのだ。
エルフ族はそんな神からの祝福を多くいただく種族なのだ。
でも祝福が弱まっている人間族にどんどん捕まり、利用され今はほぼほぼ存在しない絶滅状態にある。
そのためエルフ族は大変高額で取引される。それは死んでいても同じ事。エルフ族の髪は魔力を溜め込んだ強力な糸となり魔法の武器などに使われ、目は精霊が見える作り物の目とされたり、そして厄介なことにエルフ族の心臓はそのものが死んでも動き続ける。そのため長生きできるように他のものの心臓となったりもする。
ある日私は森で人身売買をしている違法奴隷商人の専属の冒険者に見つかり逃げいていた。
そこから私は必死に逃げた。足をけがしてもコケても。エルフ族は非常にタフだ。
逃げ出すことはできたが隠れていたのはとある孤児院だった。
見つかる前に逃げなければならなかった。
私は裏門に回って逃げようとしたがその場で出会ってしまった、悪魔に。
それは運が良かったのか悪かったのかは今でもわからない。
良かったと思う点はまだその冒険者たちは私を追いかけてきていてそこで旦那様が助けてくれた。
そして私にエルフ族の特徴である耳の形を発動中変化させる魔法を教えてくれた。
そして悪い点はそれが私の弱みであり旦那様はいつでも私を売ることができる状態へとさせた。
私はこの事件以来旦那様の従者として役に立てるよう仕えている。
本日は旦那様に書類の提出に来た。
「旦那様、こちらがリル様の本が閉まっている箱でございます。」
私はもってきた瑠璃色の箱を旦那様の前の机の上においた。
「ありがとう。」
私は自分の胸ポケットから小さな鍵を取り出し箱にさした。
「でも君があんなミスをするとわねぇ。」
旦那様が面白おかしそうに笑いながらこちらを見てくる。
「鍵についてですか。複製したものを一緒に渡すのを忘れていただけです。決定的なミスにはなりえません。」
「まぁ急に頼んだことだからね。」
「ほんとにですよ。急に鍵の複製を作れなどとおっしゃったときにはどうしようかと頭を抱えたものです。」
今思い出すだけでも頭が痛む。
「ほんとにすごいよね。まさか鍵の型をとってその中に銀を流し込み固めるだなんてよく思いついたね。さすが僕の優秀なメイドだ。」
「旦那様、今私はリル様のメイドです。」
「そんな堅苦しいことはいいじゃないか。さっそく中を見てみよう。」
私は慎重に箱の蓋を開けた。中には一冊の本と複数枚の紙が入っていた。
旦那様は紙を取り出し見始めた、がすぐに笑い始めた。
なにか面白いことでも書いていたのだろうか。
「全くなんと書いてあるか読めない。」
急に真剣な顔になり紙を凝視する旦那様のせいで余計に紙の内容が気になってくる。
そんなことを察したのか旦那様が紙をこちらに向けて見せてくださった。
その紙には字が汚すぎて読めないと言うよりも他の国の文字なのか、というような文字が書かれていた。
本にも同じような文字が並べられているばかりで読めなかった。
「ねぇろこ、この文字解読してくれない?」
「はぁ?!」
「ろこならいけるでしょう。」
「馬鹿なのでは。」
「僕にもリルにするように「はい!そうですね。やれるだけやってみましょう!」って優しく言ってよ。」
「ふざけないでください。あれはあの方がよりスムーズに進むと感じたからです。」
「そうだねぇ。」
また適当に流された。私の苦労も知らないで、もぉー!
「はぁ分かりました。一月、一月だけ待ってください。」
「わかったよ。お願いするね。」
私はそのままリル様の部屋へと向かった。
実は一番の苦労人なのはろこなのかもしれませんね。
実は冷酷で、でも頼りになるそんな存在だったろこはこれからどんな無茶なお願いをされるのでしょうね。
頑張れ!ろこ!




