キャラ現る!!
2 キャラ現る!!
ピン ピピン
停電していた浴槽の蛍光灯に灯りがともる。
「お?ブレーカー戻ったみたいだなあ。さっさと風呂から上がるか。」
ザパーン
俺は湯船から上がり浴槽を出る。
バスタオルで身体を拭きパジャマに着替える。
雷が家の二階に直撃したのではないかと心配になり早め二階自室を確認しにいく。
ボソボソ
俺の自室から話し声が聞こえる。
テレビやパソコンは消してありほぼ無音の部屋の筈。母親ならキッチンで夕食の準備をしている。
「あれ?おかしいなあ··。ちゃんと部屋の家電は消してたはず。」
俺は恐る恐る自室の扉前に立ち扉を少し隙間をつくるように開く。
「ふあ~、びっくりしたあ。起きちゃったよ~。折角気持ち良く眠っていたのに。」
扉の隙間から覗くとそこには水色の髪をした近未来的なドレスを着た少女がベッド横に座っていた。
見覚えのある少女だった。手の平サイズのハート型の携帯ゲーム機の液晶に映っていた萌えっちの初期キャラである。
ドバンっ!!
「何じゃあ!!そりゃあーーっ!!。」
俺は思わず扉を強く押し開け突っ込みを入れてしまう。
「ふあ~またびっくりしたあ~!?。あっ!静妬お帰り。」
水色髪の少女は何の茂もなく屈託のない笑顔を俺に向けてくる。
「お前萌えっちの初期キャラで確かルピネだったよなあ。」
「そうだよお~。静妬が私の育成プレイヤーでしょ。」
萌えっちの初期キャラルピネはマイペースに返答する。
「何で実体化しているんだよ。これもこの携帯育成ゲーム機萌えっちの仕様か?。」
ルピネは独特な髪飾りをしている水色の髪をふりふり揺らす
「違うと思うよ~。雷が落ちてルピネも出てきたからびっくりしたよ~。」
ルピネの話から察すると萌えっちの初期キャラルピネが実体化したのはどうやら雷のせいのようだ。
何てテンプレな展開だよ。昔のアニメや漫画ではよく雷が落ちてテレビの画面からアニメキャラやゲームキャラが実体化するという話がよく定番にあったがまさかそれが実際自分の身にふりかかるとは···。自分の場合は手の平サイズ位の携帯育成ゲーム機だけれど。
「ルピネ、睡眠中だったからまた寝るね。」
「ちょ、おい!」
もぞもぞ
ルピネは俺に構わず勝手に俺のベッドの中に潜り込んで眠ってしまう。
スー スー
ルピネは俺のベッドの中で直ぐにスヤスヤと熟睡してしまった。
「この状況どうすんだよ···。」
暫く静妬は有り得ない携帯育成ゲームの初期キャラの実体化に呆気にとられ途方に暮れていた。
明日···
ピヨピヨ
カーテンを閉めずに窓から朝日が射し小鳥の囀ずりが響く。
「う~ん。」
静妬は毛布にかけたられた身体を揺り起こし上半身を起き上がらせる。
「あたた、そういえば床で寝たんだっけ。」
先客にベッドを奪われ。しかたなく自室の床で睡眠をとることにした。そのせいで腰に軽い痛みが生じる。
静妬は自分のベッドの様子を確認する。
ベッドの上には掛け布団のなかで気持ち良さそうにスヤスヤと熟睡する水色の髪の幼い少女が眠っていた。
「はあ~夢じゃないんだなあ。夢だったらどんなに良かったか。」
静妬はげんなりする。暫く萌えっちの初期キャラであるルピネの寝顔を観察する。
萌えキャラが現実に実体化するなどオタクなら心の底から手を叩くほど歓喜し喜ぶだろうが。実際本当に現実に起こってしまうと迷惑以外何物にもない。そもそも携帯育成ゲームはキャラが携帯で育成できることが強みであり。それが現実に等身大位の大きさまでキャラ現れたのなら最早それは携帯育成ゲームシステムの存在意義を失う。
このまま帰ってくれないかなあと静妬は思った。
パチッ
ベッド上で熟睡していたルピネが急に瞼が開いた。
ガバッ
スッと上半身の起き上がり此方を観る。
「静妬、お腹すいた。ご飯頂戴。」
「ご飯って·····。」
静妬は口元が引きつく。
主な携帯育成ゲーム機の欄にご飯を食べる項目やトイレに行く項目があり。システム上空腹にさせないようにしたり。病気にかからないように献身的にお世話をするのだが。
俺は机に置いたハート型の萌えっちにをとり。ご飯項目ないか捜す。キャラを育てるのだがらご飯項目やトイレ項目あると思われたが····無かった。
ご飯項目もトイレ項目も一切ないのだ。
「何で無いんだよ!?。」
はっと静妬は気づく。
よく考えたらたま○っちのようにマスコット的なキャラや動物キャラを相手にしているわけではないのだ。女の子萌えキャラを育成する携帯育成ゲームなのである。トイレ項目がないのもきっとアイドルはトイレに行かないみたいなそんなしょうもない理由なのかもしれない。実際携帯育成ゲームの女の子萌えキャラを操作してトイレに行かせるというシチュエーションさせたら変態いがいなにものでもない。
ただご飯項目はいれとけよ!。ご飯やデザートとか上げて好感度上げる位のシステムあってもいいだろうに!。
この萌えっちに大きな欠陥があるんじゃないかと静妬は勘繰ってしまった。
「静妬、早くご飯。」
ルピネは甘えるというよりは駄々こねたようにせがむ。
「解った。少し待ってくれ···。」
静妬は一階の台所に何かないか探してみる。
はあ~
携帯育成ゲームなのに何で本当に食事与えなきゃならないのだろう。食費がかさむだろうに。て言うかあの秋葉原の怪しい博士、テストプレイヤーならバイト代貰わないと割りに合わんわ。後で連絡して催促してみるか。連絡先は教えてもらっている。感想や内容など報告する段取りにもなっている。
トーストをトースターに入れて冷蔵庫からジャムとバターと牛乳を取り出す。
ガラスコップを用意し牛乳を注ぐ。
チーン
トースターから焼けたトーストが飛び出し。
焼けたトーストを皿に盛る。
冷蔵庫にあった野菜を適当に切って盛りサラダにする。
トレイに作った朝食をおさめ。トレイを持って二階を目指す。
「あら、静妬早いのね。朝食を作ろうと思ったのだけれど。」
廊下を通りがかりに母親に出会してまった。
静妬はばつの悪そうに顔をしかめる。
「ちょっと小腹がすいたから。朝食はちゃんと食べるから。母さん朝食は普通に用意して。」
静妬はそうすれ違い様にそう告げ急いで二階にあがっていく。
「あらあら、育ち盛りなのかしらねえ?。」
母親はおっとりした顔で首を傾げる。
ガチャ
「持ってきたぞ。」
「わ~~い。」
ルピネは両手を広げ大喜ぶ。
ムシャムシャ パクパク
ルピネは俺の自室で用意した折り畳み式テーブル前で座りながら朝食のジャム付きトーストとサラダを食べまくっていた。
携帯ゲームキャラなのに現実の食事とれるのかと疑問に思ったがそれを言ったらアニメや漫画やゲームにも似たようなご都合主義設定があるのでこれ以上突っ込まないようにした。
母親のつくった朝食をすまし。静妬は学校に行く準備をする。
自室で教科書を詰め込み手提げカバンを取る。
昨日は奇想天外な出来事がありすぎて学校に行く準備が出来ていなかった。
「静妬、何処行くの?。」
食事を終えた近未来的なドレスを着た萌えっちの初期キャラルピネがたずねる。
「学校、高校に行くんだよ。ルピネは俺の自室でお留守番なあ。部屋から出るなよ。まだ親達に事情も紹介もしてないから。」
親達にどう事情を話せばいいか迷う。ゲームキャラが実体化しましたっなんて事実を言ったら精神病院に入れられかねない。
「一緒に行く!。」
突然ルピネがとんでもないことを言い出す。
「悪いけど高校は部外者は入れないから。ルピネまだ年齢的にも高校生位の歳でもないんだし。」
幼い少女を一緒に高校に連れていったら色々問題になるだろうに。
「なら、静妬、萌えっちを持って行くといい。ルピネそこに入って待ってるから。」
「はあっ!?。」
意味不明な言葉に静妬は眉を寄せ困惑顔を浮かべる。それを尻目にルピネは何の茂もなく机に置かれたハート型の携帯ゲーム機の前にたつと。正方形の四角の画面から光が射し込みルピネが一瞬にして消える。
「静妬ー、いいよ~。」
ハート型の携帯ゲーム機から声が発せられた。
「ゲーム機の中に戻れるじゃねえかっ!!。」
静妬はおもいっきり突っ込む。
静妬はルピネがゲーム内に入っていれば硬い床で寝る必要性が無かったのだ。
「はあ~正直校内で萌えっち持って行きたくないんだが。」
校内でのゲーム機の持ち込みは認可されてはいないが生憎俺の部はオタク部である。悪友友喜に半場強引に入部させられたのだ。友喜にお使いを頼まれたゲームやフィギュア、同人誌、ポスター等も堂々と持ち込める。娯楽だけの部が何で校内で認可されいるかは実績があるからだ。ゲームやフリーゲーム等を実際につくっているし。賞にも入っている。小説、漫画やフィギュアも先輩達が幾多の大きな大会、コンテストなどに賞とるなど実績あるからだ。それほど実績あるなら漫画部や文系部、ゲーム制作部などに別れればいいだろうにと先生達が提案したが。そしたらそこのオタク部の部員達がこう言い放ったのだ。『そしたら自分達の趣味に没頭できないでしょうが!』それを聞いた先生方を半場呆れ顔で言葉を失った。はっきり言えばオタク部の部員達は色々と性格が濃いのである。俺は別に濃くないし普通だノーマルだ。断じてオタクではない。萌えっちの問題に関しても友喜に相談するいい機会だ。携帯育成ゲームなどは正直苦手な分野である。普通のロープレやアクションゲームならいいが育成ゲームに関しては殆どやらない。友喜は全てのジャンヌに詳しいから問題ないだろう。オタク部には友喜以外にもその分野に詳しい濃い後輩や先輩いるから問題ないはずだ。
はあ~でもやっぱりこのハート型の機体はないわ~。悪友の友喜やオタク部の濃い後輩、同級生、先輩もかなり退くだろうなあ~。
ハート型の液晶に映る近未来的なドレスの少女に話しかける。
「ルピネ、学校内ではおとなしくしてくれよ。」
『は~い。』
液晶の白い部屋に座る幼い青髪の少女ルピネが元気よく返事をする。
静妬は学生カバンのベルトを肩にかけ。頼まれた友喜の秋葉の買い物袋を持って自分の部屋をあとにした。




