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導きの灯り〜阿門甲斐吽〜  作者: 阿門 甲斐吽


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【第28話】怨念の島


 ()(くる)漆黒(しっこく)波濤(はとう)()()くようにして、柏木(かしわぎ)(みなと)(あやつ)小型艇(こがたてい)はドス(ぐろ)鳥居(とりい)(いただ)(しま)へと()(すす)んでいた。


 全員(ぜんいん)無言(むごん)(しま)見据(みす)えている。


 潮風(しおかぜ)(てつ)(どろ)(にお)いを(まと)い、(はだ)()すように(つめ)たい。


 (みなと)海面(かいめん)(いろ)潮流(ちょうりゅう)のよじれ()()らして見据(みす)え、荒々(あらあら)しい(なみ)(なか)でも確実(かくじつ)船首(せんしゅ)()せられる、(なめ)らかな岩肌(いわはだ)着岸(ちゃくがん)しやすい場所(ばしょ)慎重(しんちょう)(さが)()てた。


「ここなら()ける……! 翔平(しょうへい)(ふね)(おさ)えてくれ!」


 (みなと)指示(しじ)()わせ、(たちばな)翔平(しょうへい)()()って船体(せんたい)固定(こてい)する。


 船首(せんしゅ)島影(しまかげ)浅瀬(あさせ)岩場(いわば)(しず)かに()()げた瞬間(しゅんかん)阿門(あもん)甲斐吽(かいうん)(だれ)よりも(はや)跳躍(ちょうやく)し、()れた岩肌(いわはだ)へと()()った。


 それに(つづ)き、(みなと)手際(てぎわ)よく頑丈(がんじょう)なロープをしっかりと(いわ)突起(とっき)(むす)()け、係留(けいりゅう)完璧(かんぺき)完了(かんりょう)させる。


 全員(ぜんいん)足元(あしもと)がしっかりと(くろ)大地(だいち)(とら)えたとき、(しま)中央(ちゅうおう)から、言葉(ことば)にできないほどの重苦(おもくる)しい怨念(おんねん)波動(はどう)津波(つなみ)のように()()せてきた。


無事(ぶじ)()いたようだな。……だが、ここから(さき)一歩(いっぽ)(すす)むごとに我々(われわれ)精神(せいしん)肉体(にくたい)(むしば)死地(しち)だ。()()くな」


 甲斐吽(かいうん)仕込(しこ)(づえ)(つか)右手(みぎて)()え、(するど)眼光(がんこう)(しま)(おく)へと()びる(けわ)しい獣道(けものみち)見据(みす)えた。


 その緊張感(きんちょうかん)()ちた空気(くうき)(さっ)し、(みなと)翔平(しょうへい)一度(いちど)(いき)(ととの)えてから、ふと(となり)()(しろ)(しゅ)巫女装束(みこしょうぞく)(まと)った(うつく)しい女性(じょせい)へと視線(しせん)()けた。見慣(みな)れないその姿(すがた)に、(みなと)不思議(ふしぎ)そうな(かお)をして(たず)ねる。


「あの……阿門(あもん)さん、この(かた)は?」


 その()いかけに、甲斐吽(かいうん)(かる)(うなず)いてから紹介(しょうかい)(うなが)す。


 弘恵(ひろえ)(すず)(かる)(にぎ)(なお)すと、(りん)とした表情(ひょうじょう)二人(ふたり)()(なお)った。


「はじめまして。(わたし)神楽坂(かぐらざか)弘恵(ひろえ)阿門(あもん)(さま)(とも)に、この()渦巻(うずま)災厄(さいやく)(しず)めるために(とも)行動(こうどう)している(もの)です。あなた(がた)がこうして(ふね)()してくれたこと、(こころ)から感謝(かんしゃ)します」


(おれ)柏木(かしわぎ)(みなと)です。こっちは(たちばな)翔平(しょうへい)(まち)異変(いへん)(かん)じて、(なに)(ちから)になりたくてここまで()ました。よろしくお(ねが)いします、弘恵(ひろえ)さん」


「おう、よろしく(たの)むぜ! こうなったら最後(さいご)まで()()うからよ」


 翔平(しょうへい)()さくに(わら)ってみせると、弘恵(ひろえ)(すこ)しだけ表情(ひょうじょう)(やわ)らげ、「ええ、(たの)もしい仲間(なかま)()えて心強(こころづよ)いわ」と微笑(ほほえ)んだ。


 初対面(しょたいめん)挨拶(あいさつ)()わしたのも(つか)()四人(よにん)背後(はいご)不気味(ぶきみ)気配(けはい)急速(きゅうそく)()さを()していく。


感傷(かんしょう)(ひた)っている(ひま)はないようだな。()くぞ」


 甲斐吽(かいうん)警告(けいこく)(したが)い、四人(よにん)(しま)中央(ちゅうおう)()けて(あゆ)みを(すす)めた。


 (しま)(おお)地面(じめん)はゴツゴツとした(くろ)岩石(がんせき)構成(こうせい)されており、所々(ところどころ)不気味(ぶきみ)紫色(むらさきいろ)気泡(きほう)()かび()がり、プツリと(おと)()てて(はじ)けている。


 その(たび)に、かつて鹿児島(かごしま)(おそ)った大災害(だいさいがい)(いのち)()とした()もなき人々(ひとびと)悲鳴(ひめい)のような幻聴(げんちょう)脳裏(のうり)(ひび)いた。


 やがて、(かれ)らの(すす)(さき)に、(しま)全体(ぜんたい)圧倒(あっとう)するような禍々(まがまが)しい(かげ)()ちはだかった。


 ぽっかりと(くち)()けた空間(くうかん)に、異様(いよう)威圧感(いあつかん)(はな)つドス(ぐろ)鳥居(とりい)(そび)えている。


 そして、その鳥居(とりい)をくぐり()けた瞬間(しゅんかん)周囲(しゅうい)空気(くうき)一変(いっぺん)した。


 ただの瘴気(しょうき)ではない。


 (しま)()()ちていた怨念(おんねん)がまるで意思(いし)()つかのように具体的(ぐたいてき)(かたち)をなし、無数(むすう)不気味(ぶきみ)触手(しょくしゅ)となって、地表(ちひょう)からぐにゃぐにゃとうねりながら()()してきたのだ。


「なんだこれ……!? 悪意(あくい)(かたまり)みたいなのが、うねりやがった!」


 翔平(しょうへい)()見張(みは)り、反射的(はんしゃてき)身構(みがま)えた。


 鳥居(とりい)()こう(がわ)から(ひろ)がるその光景(こうけい)は、人間(にんげん)認知(にんち)()えた悪夢(あくむ)そのものだった。


()をつけて! あれは(たん)なる幻影(げんえい)じゃないわ、(わたし)たちの恐怖(きょうふ)精神(せいしん)(すき)()いて(から)()ろうとする(のろ)いの実体(じったい)よ!」


 弘恵(ひろえ)素早(すばや)神楽鈴(かぐらすず)(かま)え、ジリリリッと(きよ)らかな音色(ねいろ)(ひび)かせて(しろ)聖域(せいいき)展開(てんかい)する。


 しかし、()()触手(しょくしゅ)(かず)尋常(じんじょう)ではなく、鈴音(すずね)(ひかり)()びてもなお、不気味(ぶきみ)粘液(ねんえき)()らしながらうねり(つづ)けている。


(みなと)翔平(しょうへい)()がっていてくれ! ここからは一歩(いっぽ)()けない総力戦(そうりょくせん)だ!」


 甲斐吽(かいうん)仕込(しこ)(づえ)()(はな)ち、黄金色(こがねいろ)(ひかり)(まと)わせた刀身(とうしん)最初(さいしょ)触手(しょくしゅ)両断(りょうだん)した。


 しかし、()()った(はし)から(べつ)触手(しょくしゅ)次々(つぎつぎ)再生(さいせい)し、四方八方(しほうはっぽう)から容赦(ようしゃ)なく(むら)がり(おそ)いかかる。


 圧倒的(あっとうてき)質量(しつりょう)と、(のう)()()るような精神的(せいしんてき)重圧(じゅうあつ)


 (しま)上陸(じょうりく)した四人(よにん)()()けていたのは、あまりにも過酷(かこく)な、絶望的(ぜつぼうてき)なまでの除霊戦(じょれいせん)幕開(まくあ)けだった。






(だい)28()(かん)





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