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導きの灯り〜阿門甲斐吽〜  作者: 阿門 甲斐吽


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【第25話】星辰の導き


 神楽坂(かぐらざか)弘恵(ひろえ)力強(ちからづよ)言葉(ことば)()けて、阿門(あもん)甲斐吽(かいうん)(こころ)にあった孤独(こどく)重圧(じゅうあつ)(たし)かな決意(けつい)へと()わっていた。


 先祖(せんぞ)代々(だいだい)から()()いできた南九州(みなみきゅうしゅう)守護(しゅご)という使命(しめい)


 それを一人(ひとり)背負(せお)()むのではなく、霧島(きりしま)神域(しんいき)(まも)神楽坂(かぐらざか)()()彼女(かのじょ)(とも)()()かう。


 二人(ふたり)(きずな)(かさ)なり()うことで、この未曾有(みぞう)危機(きき)()()かうための強固(きょうこ)霊力(れいりょく)(むす)びつきがようやく(ととの)った瞬間(しゅんかん)だった。


()かった。時間(じかん)はない。霧島(きりしま)神域(しんいき)鹿児島湾(かごしまわん)(つな)霊脈(れいみゃく)完全(かんぜん)()()られる(まえ)に、(わたし)たちの()でその(みなもと)()つ。準備(じゅんび)はいいな、弘恵(ひろえ)


 甲斐吽(かいうん)(あらた)めて()いかけると、弘恵(ひろえ)(まよ)いのない(ひとみ)力強(ちからづよ)(うなず)いた。


「いつだってできているわ。()きましょう、甲斐吽(かいうん)(さま)!」


 二人(ふたり)はすぐさま室内(しつない)霊具(れいぐ)一式(いっしき)(あらた)め、それぞれの役割(やくわり)確認(かくにん)()った。


 甲斐吽(かいうん)神棚(かみだな)(まつ)ってあった阿門家(あもんけ)代々(だいだい)(つた)わる仕込(しこ)(づえ)と、強力(きょうりょく)呪詛(じゅそ)()(やぶ)るための数多(あまた)御札(おふだ)(ふところ)(おさ)める。


 一方(いっぽう)弘恵(ひろえ)は、(しろ)(しゅ)巫女装束(みこしょうぞく)(すそ)をしっかりと(むす)(なお)し、神聖(しんせい)(すず)()(ひび)かせる神楽鈴(かぐらすず)と、邪悪(じゃあく)()()()るための破邪(はじゃ)神剣(しんけん)(たずさ)えた。


 阿門(あもん)(じゅつ)神楽坂(かぐらざか)神楽(かぐら)


 この(ふた)つの血脈(けつみゃく)(そろ)うことで(はじ)めて発動(はつどう)できる特別(とくべつ)神域(しんいき)結界(けっかい)準備(じゅんび)(ととの)え、(かれ)らは(よる)(まち)へと()()決意(けつい)(かた)めた。


 しかし、(そと)()(まえ)に、現在(げんざい)鹿児島(かごしま)状態(じょうたい)がどのように変化(へんか)しているのかを正確(せいかく)把握(はあく)しておかなければならない。


 (てき)がどこから侵食(しんしょく)し、どの霊脈(れいみゃく)(ねら)っているのかを()るための「星辰(せいしん)(みちび)き」を(さず)かる必要(ひつよう)があった。


出発(しゅっぱつ)する(まえ)に、まずは現在(げんざい)霊気(れいき)潮流(ちょうりゅう)正確(せいかく)位置(いち)特定(とくてい)する。(わたし)(つづ)け」


 甲斐吽(かいうん)円卓(えんたく)中央(ちゅうおう)にずっしりとした(おも)みを()青銅製(せいどうせい)(うつわ)()えた。


 (うつわ)内側(うちがわ)には、霧島(きりしま)神域(しんいき)から()()げられた(きよ)らかな神水(しんすい)がたっぷりと()られており、(なみ)(ひと)つない水面(すいめん)蝋燭(ろうそく)(ひかり)(しず)かに反射(はんしゃ)している。


 弘恵(ひろえ)円卓(えんたく)対面(たいめん)()ち、()()った神楽鈴(かぐらすず)をそっと()らした。


 チリン、という(きよ)らかな(すず)()空間(くうかん)(よど)みを(ふる)わせ、(そと)から(しの)()不穏(ふおん)(くろ)気配(けはい)一時的(いちじてき)()(かえ)す。


神楽坂(かぐらざか)神域(しんいき)波動(はどう)と、甲斐吽様(かいうんさま)(じゅつ)同調(どうちょう)させます。夜空(よぞら)星々(ほしぼし)配置(はいち)と、地下(ちか)(なが)れる霊脈(れいみゃく)共鳴点(きょうめいてん)をこの水鏡(みずかがみ)(うつ)()してください」


 弘恵(ひろえ)言葉(ことば)()わせて、甲斐吽(かいうん)青銅(せいどう)(うつわ)(ふち)にそっと指先(ゆびさき)()え、真言(しんごん)(ひく)(とな)えた。


 その指先(ゆびさき)から(そそ)がれた霊力(れいりょく)水面(すいめん)波紋(はもん)(ひろ)げ、(しず)まり(かえ)った水鏡(みずかがみ)(なか)には夜空(よぞら)(ほし)(うご)きと連動(れんどう)するように、鹿児島市内(かごしましない)立体的(りったいてき)地図(ちず)幻想的(げんそうてき)(ひかり)として()かび()がってきた。


 その(ひかり)地図(ちず)凝視(ぎょうし)すると、天文館(てんもんかん)(はな)やかな街並(まちな)みの地下(ちか)、そして鹿児島湾(かごしまわん)(めん)した(ふる)岸壁(がんぺき)周辺(しゅうへん)に、無数(むすう)呪詛(じゅそ)(おも)われるノイズが(はし)っているのがはっきりと()かった。


 (とく)に、桜島(さくらじま)裾野(すその)から海中(かいちゅう)()かって()びる一本(いっぽん)(ふと)霊脈(れいみゃく)が、何者(なにもの)かによって(はげ)しく()()けられ、(くろ)粘液(ねんえき)のような(かげ)侵食(しんしょく)されている。


「ここだ……。鹿児島湾(かごしまわん)海底(かいてい)(ふか)く、かつて大地(だいち)急所(きゅうしょ)とされていた地層(ちそう)亀裂(きれつ)。そこに外部(がいぶ)からの強烈(きょうれつ)()波動(はどう)集中(しゅうちゅう)している」


 甲斐吽(かいうん)(するど)指先(ゆびさき)水鏡(みずかがみ)一点(いってん)()(しめ)すと、弘恵(ひろえ)はその場所(ばしょ)をしっかりと()()()けた。


霧島(きりしま)峰々(みねみね)から(なが)()(きよ)らかな霊道(れいどう)が、まさにその海底(かいてい)亀裂(きれつ)でせき()められ、逆流(ぎゃくりゅう)させられているわね。だから、(まち)のあちこちで人々(ひとびと)幻聴(げんちょう)()いたり、異常(いじょう)恐怖心(きょうふしん)(おそ)われたりしているのよ」


 原因(げんいん)特定(とくてい)()んだ。


 だが、そこに()かうまでの(みち)のりすら、すでに呪詛(じゅそ)気配(けはい)()ちているはずだった。


「この(さわ)ぎを()こした何者(なにもの)かは(わたし)たちの(うご)きを察知(さっち)している可能性(かのうせい)(たか)い。現地(げんち)(おもむ)くまでの(あいだ)(すこ)しの油断(ゆだん)命取(いのちと)りになる。(たが)いの気配(けはい)をしっかりと(むす)びつけ、結界(けっかい)(たて)()りながら(すす)むぞ」


「ええ、()かっているわ。(わたし)神楽鈴(かぐらすず)(おと)(とど)範囲(はんい)であれば、どんな悪霊(あくりょう)呪詛(じゅそ)であっても(ちか)づけることはないわ」


 二人(ふたり)(ふか)(いき)()()み、精神(せいしん)極限(きょくげん)まで統一(とういつ)させた。


 阿門家(あもんけ)血脈(けつみゃく)()冷静(れいせい)分析力(ぶんせきりょく)と、神楽坂家(かぐらざかけ)血脈(けつみゃく)()清浄(せいじょう)巫女(みこ)(ちから)


 その(ふた)つが完全(かんぜん)融合(ゆうごう)したとき、周囲(しゅうい)空間(くうかん)には()()えない強固(きょうこ)防壁(ぼうへき)展開(てんかい)された。


 準備(じゅんび)(ととの)った。


 これ以上(いじょう)、この(うつく)しい鹿児島(かごしま)大地(だいち)人々(ひとびと)を、正体(しょうたい)不明(ふめい)(くろ)(わざわ)いに蹂躙(じゅうりん)させるわけにはいかない。


 甲斐吽(かいうん)円卓(えんたく)(うえ)水鏡(みずかがみ)から()(はな)仕込(しこ)(づえ)をしっかりと(にぎ)りしめた。


 弘恵(ひろえ)もまた、神楽鈴(かぐらすず)胸元(むなもと)(かか)()み、まっすぐに()()見据(みす)える。


()くぞ、弘恵(ひろえ)


「ええ、(まい)りましょう、甲斐吽(かいうん)(さま)!」


 二人(ふたり)(なら)んで木製(もくせい)()()()(はな)った。


 (そと)(ひろ)がるのは、(ほし)(かがや)きが(うす)れつつある不穏(ふおん)初夏(しょか)夜気(やき)だったが、(かれ)らの足元(あしもと)には、(うしな)われかけていた神話(しんわ)結界(けっかい)()(なお)すための(たし)かな(ひかり)宿(やど)っていた。


 血脈(けつみゃく)(きずな)(むね)に、(やみ)源流(げんりゅう)へと()かう二人(ふたり)背中(せなか)が、(しず)まり(かえ)った路地裏(ろじうら)(やみ)(なか)()()んでいった。






(だい)25()(かん)









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