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加護ナシな無能令嬢は回帰したので弁が立つ 〜再会した愛しの従者が何故か前世よりも重い愛で囲ってきます〜  作者: 黒糖あずき
第一部

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◇62 独白 ー突破口は。

「レティシア・ロザート様へのお目通り願い申す!」

「な、なんだ!?」

「僕は――」


 一時中断と休憩に入ったローザの騎士たちの輪へ乗り込んだルキウスは、この時のためにあったかのようなお立ち台に降り立つ。

 そして、まだ声変わりが済んでいないよく通る声で名乗りをあげた。


「僕は、いずれプリマヴェール侯爵令嬢の護衛兼従者となる者だ」


 時が止まったように誰一人として微動だにしない。


「よって、現プリマヴェール侯爵令嬢付きの騎士に決闘を申し込む」


 呆気に取られていた一同の視線が該当者二人に集まる。


「え?」

「まじ??」


 記憶の中よりも少しばかり若いトーリとノーランが困惑の声をあげた。


「捕らえろ」


 しかし、その異様な空気を一掃するように重みのある深い声が場を支配した。

 さすがと言うべきか。その声にビリリと背中に電気が走るようだ。

 騎士団長アーロンの言葉にスイッチの入った騎士たちが一斉にルキウスを確保すべく退路を塞ぐ。

 彼らの手に武器は握られていなかった。

 自分たちが体術に優れているという(おご)りと、相手が子ども(しかも見たところ皮と骨だけ)だからという油断から来るものだろう。


「あまいね」


 今の子どもの姿な自分が、一般人ではないローザ所属の騎士の彼らに束になられると敵わないことは明白であった。

 一度に相手にできるのはせいぜい三人までだ。

 ので、いなして、いなして、いなす。

 時には、相手の力を利用して地面へ引っくり返す。もちろん、急所をついて意識を飛ばすことも忘れない。

 ルキウスには彼らの動きが手に取るように分かった。


「お前、面白いな?」


 その中で一人、一気に距離を詰めてきた人物が呟いた。

 振り返った先にいたのは、木刀を握ったノーランだった。


「なんで、お前がトーリと同じ型の動きが出来るんだ?」


 目をぎらつかせたノーランはルキウスの動きを一発で見抜いた。


(そうだった)


 この男、普段は馬鹿だが時折こうして核心を突くことを言う。


「あ! 今絶対、失礼なこと考えただろ!?」


 容赦なく振り下ろされる木刀を、近場に転がっていた同じそれで受け止める。

 さすが、弱冠十六歳にして護衛騎士に任命されるだけあるか。


「ぐっ」


 ノーランの剣は重かった。

 しかし、ここで負ける訳にはいかない。

 力を抜きノーランの体勢を崩す。


「うわっ!?」


 隙ができたノーランの背後に回り込み蹴りを入れた。

 ノーランが地面へ顔面から突っ込んだのを見届けた直後、背中に殺気を感じた。

 その主はトーリだった。


「何者だ???」


 ローザの中でも特に体術に関して秀でた才能を持つトーリ。

 彼は不思議でならないと怪訝な表情のまま、攻撃を繰り出してくる。

 子どもにも容赦がない。

 しかし、同じ師を持つトーリの動きは筒抜けと言っても過言では無い。

 此方へ躊躇いなく振りかざされた腕を掴む。


「はっ?」


 トーリが宙を舞い、勝負は着いた。

 乱入はあれど、レティシアの現護衛騎士であろう二人を地面へ返したルキウスは、これ幸いと静観していたアーロンへ進言する。


「レティシアに会わせて下さい」

「――困った小僧だ」


 一瞬の出来事だった。

 気がついた時には、視界を占めるのはいっぱいの土だった。

 回帰前なら有り得ない失態だ。

 強制的に膝をつかされ、首筋は視線が下へ向くよう固定され、腕を後ろへ捻り拘束される。

 完全に動きが封じられた。


「レティシアに会わせて下さい」

「何故、侵入者の言葉を叶えねばならんのだ?」


 アーロンは冷静だった。

 やはり、この男は一筋縄ではいかない。


「僕が……」


 少しでも動揺を引き出すべく、演習場に辿り着くまでの道中で耳にした騎士たちの会話から単語を抜粋する。


「僕が黒髪だからだ」


 これでどうだ。


「そうか」

「…………そ?」


 ――それだけ?????

 帰ってきた反応は無に近かった。

 そうして、地面へ押さえつけられた状態でどれほどの時間を過ごしただろうか。

 体感的にはそれほど経たないうちに周囲の空気が冷たくなった。新たな人間の気配を感じ取った。


()()か」


 顔を上げることは叶わなかったが、自分を指しているであろう冷ややかなその声には覚えがあった。


「はい、何処から入ってきたか、レティシア様への面会を望んでおりまして。問題が――」

「黒髪だな……?」

「はい、黒髪なんです……」


 繰り返しになるが、視界は地面一色だ。しかし顳かみを押さえるかの人が想像出来るようだった。


「おい、お前。何が望みだ」


 首への負荷がなくなり視界に認めたかの人、改め侯爵家当主アルフレド・ロザートは険しい表情を浮かべていた。

 最初からレティシアに会えるとは思ってはいなかったが、まさか先にアルフレドに邂逅することになるとは。

 しかしルキウスはアルフレドの気迫に怯むことはなかった。


「レティシア――様に会わせて下さい」

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