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加護ナシな無能令嬢は回帰したので弁が立つ 〜再会した愛しの従者が何故か前世よりも重い愛で囲ってきます〜  作者: 黒糖あずき
第一部

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38 美に妥協は許されません。

 屋敷で起こる出来事は、我が家ではまず母に共有される。

 ルキウスの闖入から彼の身元が騎士団預かりになったまでの話ももちろん母の耳に入った。

 話を聞き付けた母は早速メイドに揉まれる彼がいる部屋へ乗り込んだ。

 そして、身綺麗になったルキウス姿を見て特例措置を講じたそうな。


「『ふくをしたてる』って言ったの?」

「はい!」

「お母さまが?」

「はい!」

「はつあんしゃ?」

「はい! 直々にご提案いただきました!」


 援助はしていたと思ってはいたが、まさか言い出しっぺ本人だとは。


「既にある制服では勿体ないと」

「で、一から作ったのね」

「おっしゃる通りです」

「あの時のが……これなんだ」


 ルキウスがリアの回答に「そんなことあったな……」と乾いた声で笑う。きっとフルオーダーのための採寸時のことを思い出しているのだろう。


「奥様はインスピレーションが湧いたと仰っていました」


 ルキウスを見た母はすぐさま、フラゴーラの上級テーラー・メリッサを招いたのだという。


「メリッサ様も使用人(男の子)用の服はあまり担当されたことがないそうで、ノリノリで協力してくださいました」

「メリッサ様から美は常に最新のデータが重要だとご教授いただきました!」


 そうして開始された高級執事服作りは、なんとも大掛かりだったようで。

 三日三晩、あーでもないこーでもないと寝る間も惜しんで練られたデザインの制服がまさにこれらしい。


「そして、今日は! そのお言葉を胸に、張り切りました!」


 よほど楽しかったのだろう。両手で拳を握り早口で捲したてるミアは興奮が冷め切らないようだった。

 そして、その話の間にルキウスはいつの間にか自分の横から姿を消し、最終的にトーリの座るソファの後ろまで後退していた。


「さっきもまたサイズ測られたんだ」

「そうだったの……」


 ソファーの背からこちら覗くルキウスの表情にはすでに疲労感が漂っていた。

 今から従者としての仕事が始まるのだが――大丈夫だろうか?

 なんだか可哀想になってきた。


「せっかく初仕事に間に合って届いたのだからと思ったのだけど……」

「ルキウスくん、ごめんね。嫌だったよね……」


 ルキウスの表情に流石に悪いと思ったのか、リアとミアが悄気(しょげ)る。


「あ、いや、別に……」


 哀愁漂うリアとミアの雰囲気にルキウスはタジタジだ。


「ほんとう!? そう言ってもらえるなら良かったわ! ね、ミア!」

「うん! 良かったわ! リア!」

「まだ成長期だし、当分は月イチでこれからも採寸するからね!」

「え」

「最新のデータが物を言うのよ!」

「え」


 なんとも切り替えが早いリアとミアは、ルキウスの言葉に元気を取り戻しこれからの計画を話し始める。


「えぇ……」


 ルキウスから向けられた助けを求める視線を彼が連行された時に助けなかった負い目もあり、レティシアは流石に無視できなかった。


「そんなにひんどは、おおくなくても良いんじゃない?」

「お嬢様! 美に妥協はダメなんですよっ。特に成長期の男の子は、すぐにサイズの測り直しが必要になるんです!」

「ルキウスくんはですね! 着飾らせてくれないアシェル坊ちゃんにヤキモキしていた侍女やメイドたちの救世主なんです!」

「そ、そう」


 わぁ……。

 メリッサの教えに忠実なリアと本音がダダ漏れるミアの勢いに押されて、反論を断念する。

 無理だった。


「ルキウス! お前も男だろ、腹くくれ。お嬢様にお仕えするんだから、それ位耐えろ」


 メイドが用意した紅茶を啜りながらソファに腰かけてこちらを静観していたトーリがルキウスに喝を入れる。


「って、スルーしそうになったけど、あなたはどうなのよ。トーリ」


 今更な気もしないでもないが、なに優雅に紅茶なんて飲んでる。


「あ、今日は内勤なんで、俺の服まだ汚れてないからソファ無事ですよ!」


 「剣も床だし~」と親指を立てるトーリに物申したい。

 違う、そうじゃない。


「まったく……」


 自由奔放な側仕えたちに呆れながらも、そんな空間が嫌いじゃないから怒れない。


「まぁいいわ。とりあえず、今日はお日さまがきもちよさそうだから、にわに出ようかと思うのだけど」


 当面の間、諸々の授業が免除となってしまったため、暇を持て余していた。する事と言えば、絵を描くことぐらい。

 お陰様で、メキメキ上達中だ。


「かしこまりました、お嬢様。日傘を持って参ります」

「私は軽食の準備をシェフに頼んできます!」

「よろしくね。ルカは――」

「僕は絵を描く道具を持ってレティシア様に同行致します」


 庭に出るとしか言っていないが、考えを読んだかのようにスケッチブックや画材道具一式を一人で器用に抱え込み準備万端なルキウスに驚く。


「レティシア様、今日はこちらにいたしましょうか?」

「レティシア様、見てください! フルーツいっぱいもらってきました!」


 リアが今日の装いに合わせた日傘を用意して、ミアがカゴいっぱいに詰めた軽食やフルーツを持って来る。


「ありがとう。じゃあ行きましょうか」


 リアとミア、ルキウスが側に仕え、護衛のトーリがその後ろに控える。こうしていると本当に回帰前に戻ったようで、なんだか泣きそうになってしまう。


「ルカ。貴方はこれから試用期間中、常に監視されていると思って行動しなさい。私の従者になりたいのなら、気持ちを引き締めて臨むように」

「はい。ご忠告痛み入ります」


 マナーを完璧に(おさ)えた礼をとったルキウスに安堵する。


(この感じなら、大丈夫そうね)


 浮かれないように気を引き締めなければ。と、レティシアも心を新たにした。

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