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加護ナシな無能令嬢は回帰したので弁が立つ 〜再会した愛しの従者が何故か前世よりも重い愛で囲ってきます〜  作者: 黒糖あずき
第一部

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13 仕方がないから強行突破。

「この子を私つきの見ならいじゅうしゃにします」


 レティシアの言葉に周囲は騒めいた。


「ダメだ!」

「はじめにお父さまが言ったのですよ。今日この日は私の言うことはぜったいだと!」

「くっ」


 父がレティシアの誕生日の前日に言及したのは「当日」に限った話だったが、先程 “誕生月はフィーバータイム” というトンデモルールを父自身が受け入れてくれた(まんまと流されたとも言う)ので、気にしない。


「さいわい私には、ごえいきしはいれど、じゅうしゃはいません」

「侍女がいるだろう!」

「兄さまは、じじょもじゅうしゃもいます!」

「んんん……………………うぅ、わかった! だが、お前の傍だけは絶っっっ対ダメだ」


 娘の罠に嵌った父は苦渋の決断を下した。


「アーロン! こいつのことはお前に全て任せる。当主の私に楯突くくらいだ、見込みはあるだろう。徹底的にしごけ」

「拝命されました」

「レティシア、これが父様ができる最大限の譲歩だ」

「ありがとうございます」


 騎士団長が一歩前へ出て頭を垂れる。

 一か八かだったが良かった。


(誕生月、強い)


 ゴリ押しして父が動揺していてくれたおかげで何とかなった。

 これで言質は取ったことになる。

 娘に関する事柄に殊更阿呆になるのが幸を成した。


「初めまして、僕のお姫様。ルキウスといいます。歳は十二だ。覚えておいて下さいね」


 奇跡的(?)に大人しく、事の成り行きを見ていたルキウスが口を開いた。

 レティシアがこの場に現れてから今この瞬間まで、彼の目には自分しか映っていないようだった。


「……レティシア・リマヴェーラよ」


 ()()()()()か。

 本来より二年も早く彼の姿を見れたことで、自分とと同じく記憶を持っているのかと期待していたのだが、そうではなかったらしい。

 少し寂しく思いながら返事を返す。


(てっきり会いに来てくれたのかと)


 態度といい、所作といい、引っかかる所はまぁあるが、そんなに都合がいいことが起こるはずもない、か……。

 一瞬期待したから、方を落とさずにはいられない。


「いずれ必ず貴女に侍るから、それまで待っていてください」

(は、侍る!?)

「近いうちに」


 レティシアと目を合わせたルキウスは念を押すように言葉を強める。


「ち、近いうちに……」

「はい」


 騎士の誓いのポーズをとったルキウスがレティシアの指先へ唇を落とす。


「わぁ」


 思わず腑抜けた声が出た。

 ドレスの裾から手の指へ。

 この短時間で距離の詰めようがすごい。


(前はよく手のひらにしてたわね……)


 しみじみと思い出すのは、回帰前のルキウスの行動である。

 従者マナー講習で主人への忠誠の仕方を学んだと、よくレティシアの手のひらに熱心に吸い付いていた。

 内緒と言われたので意味は知らないし、決定的な言葉こそなかったが、あの視線が、あの行為が、全てを物語っていた。

 今世のルキウスがキスの意味を知っているわけが無いがしかし、偶然にしても心臓に悪い。


(恐ろしい子だわ……)


 恭しく手を取り口付けるまでの一連の動作はそこらの騎士に引けを取らぬ、板のつきようである。

 こんなキザなこと出来る少年だっただろうか。

 回帰前、拾ったルキウスの当時の年齢は十四。前の人生での彼はこんな感じじゃなかった、はずだ。


(もっと初々しさがあった気が……)


 十二歳の彼からダダ漏れる色気にあてられる私の後ろでは、困惑半分好奇心半分で囃し立てる野次馬とは別に何かが噴火するような熱さを感じる。


「却下あああああああああああ」


 父の悲鳴とも取れる怒号が辺り一帯に響き渡る。

 それは、広大も広大な敷地面積を誇るプリマヴェール侯爵領の端の端にまで届く程のものだった。


 まさか領主の声だとは、領民らは知る由もない。


「レティシア様――僕の全て……」


 とりあえず。

 早期()()を果たした(元)従者の様子がなんだかおかしい。


(うーん――)


 恍惚としたルキウスの視線をよそに、レティシアは雲ひとつない晴天を見上げた。


(大丈夫かしら……?)


サブタイトルにとうとう足を掛けました!

ここまでお読みいただきました皆様に感謝です _ _))

引き続きどうぞよろしくお願いいたします!


(( ちまっと雑談②

騎士が令嬢にキスを落とす場所別の意味

ドレスの裾=「敬愛」

指先   =「愛情」 New!!

手のひら =「?」

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