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88話 幼馴染が私についていた嘘(百地視点)


 私の目の前では真剣な顔つきの蓮司が立っている。

 何やら私と一対一で話がしたいとのことで、一緒に居た星良と誠也君の二人も帰ってしまった。


 「悪いな百地。わざわざこうして時間を取ってもらって」


 「ん……別にいいよ……」


 今までならば蓮司と二人きりの状況に居心地の悪さなど微塵も感じなかった。それどころか意中の幼馴染と一緒にに過ごす時間はとても心地よかった。

 

 でも……今の蓮司にはもう素敵な恋人が居るんだよね……。


 この事実が私の中では重く重く圧し掛かる。

 ようやく自覚できた恋心を伝える機会もなく、私の初恋は終わりを迎えたんだ。


 もちろん失恋したからといって、私と蓮司が幼馴染である事実は消えない。それでも今までの様に彼と二人きりで過ごす事は精神的に苦痛だった。


 「それでさ、わざわざ二人きりになって蓮司は何の話をしたいの?」


 心なしか自分の言葉にも棘がある気がした。

 失恋をきっかけに彼に対する接し方も変わる。そんな器量の狭い自分自身にも嫌気がさす。別に彼は何も悪い事をしたわけでもないのに……。


 「俺さ、実は彼女と別れたんだ」


 「……は?」


 予想もしなかった第一声に私の口からは変な言葉が漏れ出た。

  

 え……蓮司が恋人と別れた? あれだけ仲が良かったのに? いや、そもそも私にそんな報告をする理由は?


 様々な疑問が渦を巻き頭がグルグルと回りだす。

 そんな狼狽状態に陥りかけている私に彼は半笑いで話しかけてくる。


 「悪い悪い。いきなりこんな話をされたらそりゃ混乱するよな」


 「そ……それはね。まさか過ぎるカミングアウトにもう頭がクラクラだよ」


 どうにか乱れつつある精神を統一させ、改めて何があったのか具体的に尋ねてみた。


 「そのさ、どうして別れたの? だって教室で一瞬だけ見たけど、凄い仲睦まじげだったじゃん」


 「ん……実はさ……」


 そこから彼は破局までの流れを一通り説明してくれた。


 驚いたことに私が星良たちとゲームセンター内で遊んでいる頃、同じ施設内で蓮司も恋人と一緒にデートをしていた真っ最中だったらしい。


 そしてデートの過程で彼女の本性を知ったらしい。


 「俺が離れた隙にアイツってばスマホで友人と楽しそうに盛り上がっていたよ。俺がつまらない男だの、顔だけが理由で選んだのとさ……しかも二股までしてたんだってよ」


 話を聞くにつれて私の中でドロドロとした感情がこみ上げてきた。


 一体全体あの女は何様のつもりなんだ?

 

 ずっと蓮司の幼馴染として一緒に居た私は知っている。

 彼がとても優しく、そして頼りがいのある素敵な男性であることを。だからこそ私だって彼に対し幼馴染以上の感情を持ったのだ。

 だが蓮司の恋人でありながらその女は彼の外見だけしか見ておらず、挙句には内面を貶して陰では浮気までしていた始末。


 「さいってい! どうして何の落ち度もない蓮司にそんな仕打ちができるのよ!?」


 蓮司から話を聞き終え、私の中でやるせない気持ちが蔓延する。


 とても悔しかった。蓮司の心が傷つけられたこともだけど。……私はそんな女のせいで自分の想いすら伝えられなかったことも……。


 「それで……どうなったの?」


 「実はその時にな、偶然にも北條さんがその場に居合わせたんだよ。それで俺と北條さんの二人に本性を知られた茂江、いや山中は素顔を暴露してそのまま破局って感じさ」


 全てを話し終えた蓮司はどこか吹っ切れたような感じだった。

 

 星良と蓮司の二人が一緒にゲームセンターから出てきた事は理解できた。

 ただ、私にはまだ理解できない点が1つだけあった。それはこんな非道な裏切り行為を受けておきながらも、どこか蓮司の表情はスッキリとしているのだ。


 気が付けば私は自らの疑念を声に出していた。


 「どうして蓮司はそんな落ち着いていられるの?」


 「え? そう…見えたか?」


 「見えるよ。だって失恋直後だっていうのにさ、蓮司、思ったよりもショックも受けてないし……」


 「まぁ……なぁ……」


 普通ならば失恋したばかりでここまで平静な顔などできる訳がない。

 蓮司からは一切の悲壮感が見て取れないのだ。長年幼馴染として一緒にいたから分かる。決してやせ我慢をしている訳でもない。


 「それにさ、その左頬が腫れている謎も未だに解明されてないじゃん。もしかして逆ギレした山中先輩にでもはたかれた?」


 「いやそれは違う。これは北條さんにやられてな」


 「え、な、何で星良に叩かれたの?」


 話を聞く前以上に私の中では謎が深まりつつある。

 もう少し詳しく詳細を確かめようと口を開こうとするが、それよりも一瞬早く蓮司がとんでもない発言をぶっ刺してきた。


 「北條さんが俺を叩いた理由、それは俺が大事な幼馴染に嘘をついたからなんだ」


 「嘘って……私に対して嘘をついたってこと?」


 どうやら蓮司が私に何かしらの嘘をついており、それを知った星良が激怒した?

 しかし当の本人である私には蓮司から嘘をつかれた自覚はない。


 いったい彼は私にどんな嘘をついたか考えていると、その答えを彼は明かす。


 「ずっと好きだった幼馴染に本当の想いを隠し、そしてその恋心を忘れるために別の女性と交際した。それが百地に対して俺がついた嘘なんだよ」



 

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