75話 帰り際のアクシデント
土日に投稿できなくてすいません。
実は仕事の忙しと、現在書籍化している代表作の次巻の修正作業を行っていました。
今後はなんとか投稿していくので……。
どうにか御手洗先輩と彼女さんの仲睦まじい現場から百地を遠ざけたその後、俺と星良はお互いに警戒を維持し続けた。
二人で常の周囲を警戒し、百地があの二人を目視しないように神経を張り巡り続けていた。
そんな俺たちの苦労など露知らず、心から遊戯を楽しむ百地。
だが運のいい事にそれ以降は御手洗先輩の姿を見る事はなかった。
「はー……遊んだ遊んだ。二人とも今日はありがとね。たくさん遊んですっきりしたよ! これで明日からは立ち直れそう」
満面の笑みを浮かべながら百地は俺たちに礼を述べた。
「満足したみたいだな。よし、それじゃあそろそろ出るか」
「そうだね。時間的にもそろそろ暗くなる時刻だし」
「あっ、最後にもう一度だけレースゲームしていい?」
「いや、もう小遣いだって大分浪費しただろ。今日はもうここでお開きにした方がいいって」
確か御手洗先輩を目撃したのはレースゲームのエリアだったはずだ。
流石に今も彼があの場に留まっているとは思わないが、それでも遭遇のリスクを考慮すると今すぐ外に出たくて仕方なかった。
「ほら、もう帰るぞ。今度また時間ができたら付き合ってやるから」
「私もまた時間があればいつだって付き合うよ。だから百地さん。今日はもう帰ろう?」
何も知らない百地とは違い、御手洗先輩はまだこの施設内に留まっている筈だと俺たちは思っていた。だからこそ、百地には一刻も早くこの場を後にしてほしかった。
せっかく百地は完全に立ち直れたんだ。ここで傷を抉る事だけはさけないと。
何としてもあのカップルと遭遇させるわけにはいかず、俺たちはゲームセンターをすぐに出ようとする。だがその態度があまりにも露骨だったのか、百地にこんな疑問をぶつけられた。
「ん~? なんか二人とも少し様子がおかしくない? なんだか私をこの場から早く退散させたいように感じるけど……」
顔に出さぬよう心掛けていたが、誘導が露骨になっていたらしい。
どこか腑に落ちないと言わんばかりの怪訝な視線を向けられる。その視線に対して、頭に浮かんだ即興の言い訳を口にしようとするが、それよりも早く百地は勝手に結論を出した。
「あ、分かった。二人ともあれでしょ? 放課後の二人きりの時間を潰されたから不機嫌になっちゃったんでしょ」
「え……あ~……どうだろうなぁ?」
「あはは……百地さんの想像に任せるわ」
見当はずれな指摘をされたが、俺も星良もあえて明確に否定はしなかった。
何故ならここで強く否定すれば、『じゃあどうしてそんな必死なの?』などと追及されかねない。それならば彼女のこの考えを否定も肯定もせず、有耶無耶にした方がいい。
星良も同じ考えに行き着いたらしく、俺と同じように百地の憶測を強く否定はしない。
とにもかくにも俺たち3人は無事にゲームセンターの外へと出る。
あとはこのままそれぞれの帰路につくだけでよかった。
だがここで店を出てすぐに百地が驚きの声を上げたのだ。
「あっ、あれぇ?」
「ど、どうした百地?」
「な、何かありましたか?」
まさかこの期に及んで御手洗先輩を見つけてしまったかと焦るが、すぐにそれが杞憂であったと知る。
「財布どこかに忘れちゃったよ。うぅ~どこに置いたっけ?」
どうやら財布をどこかで落としたらしい。
御手洗先輩を発見した訳でないと一瞬ほっとするが、財布の紛失は決して笑って流せる事ではない。
「最後に財布を取り出した場所とか憶えているか?」
「ん~……あっ、思い出した! ほらあれ、クレーンゲームの時に千円を両替したでしょ。その時に取り出し口の100円だけ取って、両替機の隣に財布を置いたんだった!」
彼女は完全に思い出したのか、一切迷いなく財布の現在地を割り出した。
そのままゲームセンターの中に戻ろうとするが、それを星良が遮りながらこう言った。
「それなら私が取って来るよ。二人はここで待っていて」
「え、取りに行くなら私が行くよ。私の不始末なんだし……」
「え、えっと、その、実はちょっとお手洗いに行きたかったの。だから財布を取りに行くついでに……」
どう考えても苦しい言い訳をする星良だが、幸いにも百地は深く突っ込まずに星良に任せてくれた。
その際に彼女は俺に目配せをしてきた。
――『御手洗先輩が来ないか見張っていてね』
外での遭遇を警戒するように目で訴えてくる彼女に、俺は無言でコクリと頷いた。
こうして星良は再びゲームセンターの中へと舞い戻っていき、俺と百地は店前で彼女の帰りを待ち続ける。
この時、星良が戻って来るまでの時間は僅かなものだった。
その短い時間で、俺と星良の身にはそれぞれ予想外の事態が巻き起こる事となるのだった。




