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57話 初デート


 幼馴染である双葉との問題にも完全なる決着がつき、ようやく俺は平穏な学園生活を取り戻した。

 長い時間を一緒に過ごした相手との完全な決別にはやるせなさも残ったが、決して引きずったりなどせず前に進めることはできた。


 そして俺は今、駅前の広間で1人の人物を待ち続けている。


 「う~ん、待ち合わせ時間まで随分と早く来てしまったな」


 広間の中央に設置されている時計を落ち着きなく確認しながら、待ち合わせ相手である星良の到着を俺は待ち続けていた。


 そう、今日は星良と初のデート日和なのだ。


 期末考査も無事に終了し、ひとしきり落ち着くと彼女の方からデートのお誘いがあったのだ。

 もう既にキスまで済ませているのに、今更デートとは順序が逆だとは思ったが、この誘いはとても嬉しかった。

 思えば双葉の件でバタバタしていて、交際してからも恋人同士の時間はほとんど過ごせなかった。学校の昼休みに一緒に昼食を取ったり、放課後に一緒に下校はしていたが、恋人同士で一日を過ごした経験はなかったのだ。


 だからこそ、平穏が訪れてすぐに彼女はこんな不満をぶつけてきた。


 『ねえ誠也君、いつになったらデートに誘ってくれるの?』


 『え、いつになったらって……』


 『だって双葉ちゃんとの問題も解決したし、期末考査だって終了して一区切りついたはずでしょう。せっかく時間が空いているっていうのに、全然誠也君の方からお誘いもないし、ちょっと不満なんだけど』


 『ああごめん。別に星良を蔑ろにした訳じゃないんだよ。たださ、もうすぐ夏休みだって始まるし、時間ならいくらでも作れるからその時に誘おうと……』


 『ダメダメ、そんなの待てないよ。と言うわけだから今度の日曜日、私とのデート日和に決定です。異議は認めません』


 こうして今日の日曜日、星良からデートの約束を強引に取り付けられたのだ。

 半ば強制的にセッティングされた本日のデートであるが、俺としても一切の不満などない。むしろ、恋人同士の長い時間を過ごせる事に喜びしかなかった。


 それから待ち続ける事しばし、約束の時間の30分前となると聞き覚えのある女性が名を呼んでくれた。


 「お~い誠也く~ん。お待たせー!」


 声の方を振り向くと、こちらへと満面の笑みで星良が駆け寄って来ていた。


 「30分前に来たのに、もう先に誠也君が来ていて驚いちゃった。もしかして待たせちゃったかな?」


 俺の目の前で立ち止まると、彼女は首を傾げる。

 現れた彼女の姿は、まさしく天使と言っても差し違えがないほど、とても麗しかった。


 彼女の服装は上半身はホワイトのノースリーブブラウス、そしてスカートも白を基調としたミニスカートをはいており、更に肩にかけている鞄も御洒落で高級そうな装飾がされている。髪型の方もいつもと違い、これまた白いリボンで纏められたポニーテール。


 その姿はあまりにも眩しく、俺は思わず視線を逸らしてしまった。


 「ん、もしかして変だったかな?」


 どうやら俺の対応が奇妙で、星良はあらぬ誤解を持ち始める。

 そんな不安そうに呟く彼女にハッとなり、慌てて俺は本音をぶちまけていた。


 「違う違う、むしろその逆だよ。星良がその…あまりにも綺麗で可愛かったから直視できなかったって言うかさ……」


 そう言うと彼女は目を丸くする。

 だがすぐに俺にだけ見せる悪戯っ子の顔になると、わざと挑発的な行動を取って来た。


 「そう言ってくれて嬉しいな。でも、気合を入れてきたのは服だけじゃないんだよ?」


 そう言うと彼女は俺の腕に抱き着きながら、ちらっと胸元を開いて見せた。引っ張ったブラウスの谷間からは洋服と同じく純白のブラが一瞬見えてしまった。


 「ちょ、何してるんだ!?」


 「下着の方も気合入れてみたんだ。大丈夫、角度的に誠也君にしか見えてないから」


 「そういう問題じゃないだろ。たくっ……」


 相変わらず俺の前だけでは優等生の仮面を脱いで、かつての男友達時代のノリを見せてくる。だが普段通りの彼女の態度に、気が付けばデート前の緊張感は抜け、すっかりいつも通りに接する事ができていた。

 だが星良の奔放ぶりに溜息を吐いていると、耳元で囁くように彼女はこんなことを言ってきた。


 「今日のデート、誠也君がその気なら大人の階段だって上る気満々だよわたし?」


 「ッ!?」


 先程まではお茶目な表情でからかっていた彼女が、この時はどこか期待の籠った眼差しを向けながら妖艶な空気を纏う。

 不意打ちで困りたじろいでいると、彼女はクスリと笑って俺の手を取って歩き出す。


 「さっ、早くデートを始めましょう。昨日からずっと楽しみにしていたんだから」

 

 俺と手を繋ぎ嬉しそうに微笑む彼女に、こちらの心も温かくなる。

 

 こうして恋人同士となってからの初デートの時間を、俺たちは心から満喫するのだった。




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