1話 幼馴染の嘘告
新作のラブコメとなります。
ざまぁ要素と、甘々なイチャラブを両立した作品が書きたいなぁ~と思い、気が付いていたら執筆していました。
高校1年生、1学期のこの日の出来事を、俺は生涯忘れる事ができないだろう。
「俺に用ってなんだ双葉?」
「ん、ちょっと話が合ってさ~」
放課後の学校終わり、幼馴染に呼び出された俺は校舎裏に来ていた。
俺がやって来ると、幼馴染の双葉は少し重い口調と共にこう言ってきた。
「あのさ誠也、私とあんたってもうかれこれ長い付き合いだよね?」
「え、ああそうだな。幼稚園児からの関係だしかなり長いけど、今更どうした?」
「私たちさ……付き合ってみない?」
一瞬、自分の聞き間違いではないかと錯覚すらした。
もしかしたら勘違い、そう思って本気かどうかを確認してしまう。
「えっと、それって交際しようってこと……か?」
俺がそう確認を取ると彼女は無言で頷いてくれた。
この時、俺は自分の心が舞い上がるのを感じた。何しろ目の前の幼馴染に対し、俺はずっと恋心を抱いていたのだから。そして同時に安心もした。自分はずっと嫌われていると思っていたから。
幼稚園時代から繋がりを持つ幼馴染、中学の中盤まではとても仲が良かった。だが中学時代2年の頃から少し距離を置かれるようになったのだ。そして高校に入学してからはほとんど話すらできなくなっていき、挙句には塩対応されるようになっていた。
――『あんまり馴れ馴れしくしないでよ』
――『アンタって本当に寂しいヤツよね~』
――『偽善者ぶってなに調子づいてんだか』
高校入学からはこのような罵声を浴びせられる回数も増え、その都度に胸が痛んだ。
何度も昔のように距離を縮めようと歩み寄ったが、返されるのは塩対応ばかり。時には露骨にシカトされることもあった。
だがその切ない過去はこの瞬間に払拭され、双葉が自分を完全に蔑ろにしていた訳でないと知り、とても嬉しかった。
だから俺が彼女へと返す答えは決まっていた。
「あのさ、俺も実はお前のことがす、好きだった!! だから俺と付き合ってくれ!!」
全身から発汗するほどの緊張感に襲われつつ、この俺、大道誠也は目の前の幼馴染の三日月双葉へ長年の想いをぶつけた。
校舎裏の壁に背を預けながら自分の想いの丈を聞いた双葉は一瞬驚いていた。しかしすぐに普段通りのよそよそしい顔つきに戻り、その口元はどこか愉快そうに歪んでいた。
「ふ~ん、やっぱり私が好きだったんだ」
「え、ああ……」
この時に俺の中に違和感が芽生えた。お互いに想いを伝え両想いだったと判明したのに、どこか双葉の表情が自分を小馬鹿にしてるように感じたのだ。
まるで玩具を見るかのような無邪気と悪意の混じった視線に射抜かれたと同時、複数人の女子達の笑い声が響き渡る。
「いやーマジで双葉のこと好きだったんだ」
「ぷふっ、顔真っ赤にして『付き合ってくれ』だってさ~」
近くの茂みから同じクラスの女子が3人こちらに歩いてきた。彼女達の顔には見覚えがある。というよりも同じクラスで、よく双葉と一緒にいる友人達だ。
彼女たちは心底面白そうにニヤニヤと俺と双葉を交互に見て、そして耳を疑うようなセリフを吐いた。
「いやー双葉お疲れさん。罰ゲームとはいえきつかったっしょ?」
「まーね、でもコイツの間抜け面見れて少しは面白かったからいーよ」
「え…え…罰ゲーム?」
「そ、罰ゲーム」
声が震える自分とは正反対に双葉はあっけらかんと言い放つ。
未だに動揺が抜けきらず呆然としている俺に対し、現れた双葉の友人達が次々と口を開く。
「あんたさ、マジで双葉と付き合えると思ってたの?」
「夢見すぎでしょモブ顔陰キャ君。キミと双葉のような美少女、どう考えてもぜ~んぜん釣り合ってないって気が付かないわけ?」
「まあでも私らも面白いもん見せてもらって満足したけどさ~。あっはははははは!!」
身の程知らずと自分を嘲る女子達、そしてそんな心が折れかけている俺に向け双葉はトドメをさしてきた。
「私があんたを好きになる訳ないじゃん。ただの幼馴染ってだけでチョーシ乗ってキモいって。罰ゲームでもなきゃあり得ないってそのオツムでも分からなかったのかな?」
「うそ…だよな……?」
「うん嘘だよ~。私はアンタのことなんて微塵も好きじゃないから。全部アンタの身の程知らずの勘違いで~す。残念でちたぁ~」
あまりのショックにその場で膝から崩れ落ち、そして意志とは無関係に涙が零れた。
なんで……なんでこんな酷い事を……!?
確かに双葉の態度が冷淡になった事は悲しかった。だがまさかここまで人の、幼馴染の心を抉って弄ぶなんて思いもしなかったし、そこまで嫌われているとも思いたくなかった。
「あはははは、アンタ泣いちゃってるの? きも! マジでキショイから死んで!!」
「「「あはははははははッ!!!」」」
友人と一緒にゲラゲラと笑って自分を嘲る双葉。
突き付けられる現実にその場で嘔吐すらしそうになり、目の前が暗くなって意識が朦朧とすらした。その姿が面白いのか双葉は更に俺という人間を貶して遊ぶ。
「アンタなんてありふれたモブなのよ。これからはモブはモブらしく分不相応に生きていけば? 少なくとも私の人生にアンタみたいなしょーもない幼馴染はいらないからさぁ!」
もう……やめてくれ……。
そう言い返す力すら失い、声を出して嗚咽が漏れ出るその時だった。
――『いったいそこで何をしているの?』
罵詈雑言を吐く幼馴染の言葉を遮るほどの、透き通る美声がその場に響き渡った。
1話目から重い導入ですがご安心を、2話から一気に主人公救済に移行します。ついでに双葉へのざまぁも始まっていきますので。
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