第194話 ダンジョンの役割
デルタさんからの報告があり、どうやらダンジョンの修復が終わったようですが……つまり大穴も全部塞がったわけで。
これ、先にギルマス……つまりマウト女史に伝えた方が良かったのかな?
ダンジョン内で活動していた冒険者が混乱しそうですし、そもそも何か変化があれば報告すべき事柄だった気もします。後で話しておかないといけないな。
「あの、ダンジョン内に居た冒険者達は影響がなかったのでしょうか?」
心配なので確認します。
「それでしたらご安心下さい。誰も傷ついておりません。勿論死んでいません。修復前に全フロアへ警告を発しました。その後穴の周囲を発光させ、更に警告音を鳴らすことでダンジョン内に居た全ての冒険者は穴から離れました。」
よかった。
まあ何かしらの異常があれば、そこから離れて様子を見るのが普通でしょう。もし興味本位で近づいてしまうような冒険者だったら……命がいくつあっても足りません。
「ありがとうございます。それにしてもあの大穴を全て塞いだのですか?」
「ダンジョン内の魔素を用いれば造作もない事です。」
1層から99層の穴を全て塞いだとか、凄すぎです。
改めて考えると、あれだけの規模の穴が連なっていたんですよね。それを1週間足らずで……。
あの大穴をいとも簡単に修復してしまえるデルタさん。いや、正確にはデルタさんではなくダンジョン内の修復装置なのですが。
しかしダンジョンって、一体どういう存在なのでしょうか?
それはこの場に居た4人全員が感じたことのようで、真っ先にレイナウトがデルタさんに質問します。
「デルタさん、ダンジョンって何でしょう?そしてこのダンジョン、あのような大穴が開いていたにもかかわらず、それを1週間足らずで塞いでしまう修復装置という存在……あなた方は何者なのですか?」
デルタさんは暫く俺達4人を見つめます。
何か答えを選んでいる、とでもいうような間でした。
「申し訳ありません、只今の質問はいくつか禁則事項に抵触いたしますので、全てをお答えするわけにはまいりません。しかしダンジョンの存在意義はお答えできます。ダンジョンは魔素の濃い場所にある、というのはご存知でしょうか?」
それは聞いたことがあります。
「それは知っています。」
レイナウトが答えます。
ただ、これは誰もが知っている事柄なので、冒険者であれば誰でも答えられます。
「では何故上層よりも下層で活動する魔物の方が、強さ・種族ともに強い個体が存在する理由もご存知ですね?」
魔物は、どういうわけか魔素の濃い場所を好みます。
そしてより強い個体は魔素の濃い場所に住む傾向にあります。
この世で最も強い魔物である【ドラゴン】は広大な縄張りを持ち、その中で最も魔素の濃い場所に住みます。
それと同じ理由でダンジョン内の魔物も、強い魔物は下層に存在している。
一説によれば、その強大な力ゆえに魔素がないと生きていけない。そして己の身体を維持するにはより深い下層で活動する必要がある。
しかし下層に行けば行くほどより強力な魔物が陣取るわけで、結局魔物は己が活動できる限界まで上に向かわねばならず、これが魔物の住み分け……というのが過去の冒険者の活動と識者の研究によって導き出された結論です。
レイナウトもデルタさんに対して、俺の知っているのとほぼそっくりそのままの知識を答えます。
ちゃんと勉強しているんだな、と改めて思いました。
「よくご存じですね。概ねそれで合っておりますわ。では何故ダンジョンが魔素の濃い場所に存在しているかという事にも関わってくるのですが、ダンジョンの役目は魔素の変換装置でございます。」
うん?変換装置って言った?
変換……魔素を何かに変換するの?
俺は思わずデルタさんの顔をじっと見てしまいました。




