第192話 運用方法の模索
「お!できたのか?これは立派な……のか?見た目に変化がないからわからない。」
マウト女史が出来上がったカバンを見て首を傾げています。
まあ、見た目は普通のカバンですからね。精霊が宿っているとは分からないでしょう。
「光と闇の精霊が宿っています。何かあれば光の精霊が一瞬にして連絡をしてくれるようです。」
「そうなのか。しかし見た目は変化していないな。鑑定しても?」
「はいどうぞ。」
マウト女史はさっそく鑑定します。
「おお!凄いじゃないか?これを貸してくれるのか?」
さてどうしよう。
冒険者限定の使い方であれば報酬の仕組みは比較的シンプルなんですが、もし商人が荷物の運搬目的で使いたい、となった場合はどうするか。
今回は商人には貸さない方向にしようかな。もし貸すとしても、もっと条件を詰めないといけない。
「マウト女史、これは冒険者に貸してもいいです。しかし収納かばんを持っていない冒険者に限定します。普通の冒険者は戦利品を持ち帰るのに自分で運ぶか、荷車や馬車になりますよね。でも収納かばんは能力いっぱいまで入れられます。なので報酬は時価にしたいと思います。」
「時価?それはどういう事だ?」
マウト女史が首を傾けています。
「つまり、普通には持ち帰れない戦利品、ダンジョンならドロップアイテムを収納かばんの限界まで持ち帰れます。その内容ですが、収納かばんで持ち帰った中身を売り払った額の半分とします。数が半分ではなく、売値の半分ですよ?」
数で半分にしてしまうと、価値のないアイテムだけこちらに回して、良いものは自分で持ち帰る、という抜け穴が生まれてしまいます。それを防ぐには金額ベースにするのが一番です。
「は、半分だと!それはいくらなんでも高過ぎはしないか?」
「では何か案はありますか?下手に安くしてしまうと後々問題になりますよ。」
「しかし半分か……いやしかしそれぐらいにしないと厳しいか?うーん……」
悩んでいるようです。
「デルク、どうして半分なんだ?」
「もし稼げなければ赤字になると思うんだ。例えば金貨10枚で借りて、ダンジョンの奥へ向かい、身の丈に合わない階層で欲をかいて大怪我をしたとしたらどうなる?借りたお金が後払いなら借金が残る。治療代もばかにならない。だけど得られたアイテムの売値の半分を払う仕組みなら、稼げなくても無理に危険を冒す必要がない。むしろ自然とリスク管理ができるようになると思うんだ。」
「そうか。ちゃんと考えているんだな。だがそれだと借りたいと申し出る冒険者は多いのではないか?」
「その辺りは数を増やすなり、保証金を受け取っておくなりの対応が必要かな。」
「保証金?」
「いくら半分と言っても、そうですかと渡してもらえれば問題ないんですが、確認の手間もあるし、ある程度お金を払っておく必要があると思います。しっかり稼いだらその保証金は査定額から相殺される仕組みにすれば問題ない。それと、これはあくまで精霊鞄の中に仕舞ったアイテムの話です。自分で持ち帰れるものは自分のものですから、一番価値があると思うものは自分で持ち帰ればいい。」
「なるほど。デルクは冒険者の事も考えているんだな。」
「今思いついたことばかりなので、細かいところはまだ詰めが必要ですけどね。そういった運用面はギルドで考えてもらえたらと思います。」
上手くこのシステムが活用されたらいいんだけどな。
そして後日、この精霊鞄を複数作り、実際に自分達で活用してみて分かったことの一つに……このカバン、収納以外にも驚くような使い方が出来ることが判明します。
その機能だけでも国中大騒ぎになるのですが、それはもう少し後の話。




