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帰宅部仮入部

 はぁ………

 あっちゃんのバカ……

 なんであんな風なのよ……


 私は鈴木美幸。よもぎ大学附属高等学校の2年生にして帰宅部の部員。

 今日も私はひとりトボトボと帰る。

 石を蹴って転がしながら……少しずつ歩みを進める。

 いつもはこんなことなんてしない……

 流石に女の子がこんなことしてたら、良くないからね……

 でも、今はこうしてたい気がする……

 あっちゃんのバカ……

 この気持ちを何かにぶつけたいそんな感じ。

 私の誕生日を覚えててくれないし……

 私は一緒に帰れることを楽しみにしているのに……気づいてくれないし……

 あっちゃんと私は別に付き合ってるってわけじゃないから……仕方がないのかもしれないけど……

 小さい頃からそばにいて、小中学校は一緒。高校も一緒。

 それなのに、いつも側にいたはずなのに肝心な距離は縮まらない……

 ただの幼馴染……

 あっちゃんのことを好きになったのは中学校の時だった気がする……


 それまでは本当にただ近所に住んでいて、仲のいい男の子だった。

 あっちゃんが有名人と知っていても、わたしはあっちゃんを普通の男の子として見ていた。

 でも、ある時わたしが不良の子たちに襲われそうになった時、あっちゃんがわたしを助けてくれた。

 その時だった……


 胸にズキュンと何かが刺さった、そんな感じがした。

 体が熱くなって、あっちゃんが好きで好きでたまらなくなった……

 わたしはこの時、あっちゃんに恋をした。


 あっちゃんはわたしとは普通に仲良く接してくれる。

 でも、あっちゃんはすごい有名人。

 テレビには出てるし、雑誌には載ってる。

 だから、わたしはあっちゃんとは釣り合わない……


 あっちゃんはきっと綺麗な女優さんと恋をして結婚しちゃうんだろうな……


 わたしの胸がチクチク痛む……

 こんなに好きなのに……取られちゃう……

 いやだな……そんなの……


 それにあっちゃんには芸能人なのに普通の学校に通っている。

 だからあっちゃんは学校でもとてもモテる……


 わたしがあっちゃんの隣にいていいのかわからない……


 実際にあっちゃんのファンからは『なんであの子が隣にいるのよ』なんて言われることもある……


 わたしもそんなことわからない……

 今まで通りに一緒に登校する……

 あっちゃんのおさななじみ?

 …………

 

 あっちゃんの幼馴染はわたし以外にもいる……

 わたしもその子たちと仲良くなったんだけど、3人ともすごく個性があって可愛い……

 ナツちゃんにアキチャンにフーちゃん……

 

 まだ、その3人の誰かならあっちゃんのそばにいても、なんの問題もない……

 それくらいに、3人は魅力的な子達。


 わたしは……あっちゃんの……特別なのかな……


 幼馴染はあっちゃんにとって、特別なのかな…………


 わたしは別にあっちゃんの側にいなくてもいいんじゃないのかな……



 はぁ…………


 わたしは石を転がして、溜息を吐く。

 そんな後ろから、


「美幸さーーん!」


 男の子の声が。


「あ! 高橋くん!」


 後ろから訪れたのは、バスケ部の高橋智也くん。あっちゃんの親友。それに以前、怪我したところを見つけて、助けてあげたこともあったし、最近はあっちゃん経由で連絡先を交換して、誕生日にはお祝いのメッセージをくれた。

 かなり長文だったのには驚いたけど……


「美幸さんは今日ひとりで帰るの?」


「うん……そうだよ……帰宅部、部員なしだよ」


「ハハハ! 部員さんいないのか!」


 高橋くんはわたしの帰宅部ジョークに笑ってくれた。


「うん……あっちゃんが今日いないし……」


「そういえばそうだったな! 篤樹今日なんか用事がある、とか言ってたぞ!」



「うん……知ってる。あっちゃんに今日言われた」


「ん? なんて言われたんだ?」


「この頃、用事があるから一緒には帰れない! って……」


 別にこんなこと高橋くんにいう必要なんてないのにね……


「…………そうなのか……」


 ほら! 高橋くん微妙な表情してる……


「……うん……」


 完全に会話終わっちゃったな……

 はぁ……


 そんな時。


「仮入部ってのは、どうだ?」


「へぇ!?」


 驚いて変な声出ちゃった……


「だから、水曜日だけ帰宅部を仮入部するってことだよ!」


「うぅーんと……それはつまり水曜日にわたしと一緒に帰ってくれるってこと?」


「あぁ、そうだ!」


 まぁ、ひとりで帰るよりは楽しいし、別にいいか……

 あっちゃんは今日一緒に帰らないって言ってたし……


「いいよ。あっちゃんもいないし。水曜だけね」


「じゃあよろしくね! 部長さん!」


「あっ。 わたしが部長さんなの?」


「うん! そうだよ!」


 私は水曜日だけ高橋くんと一緒に帰ることになった。

 

  




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