第5話:これが勝負でした03
お昼休憩が終わり、午後第一部のランダム対戦会が始まった。
名前の通り、どこの誰と対戦するかはくじ引きで決めて、どんどん色んな人と対戦していく。
ただし、同じ高校の人とは当たらないようになっている。
午前中のように、みんなで勉強しようという趣旨ではなく、色んな対戦相手を経験しようといった目的があるらしい。
今回は部室を使わないので、体育館に全員が集まり、並んでいるランブルギアの筺体を囲む。
司会進行の虎森高校の部員がくじを引いて、呼ばれた順に席に着いていき、全部の席が埋まったら対戦を開始する。
そして、すべての対戦が終わったら、くじを引き直す。この繰り返し。
さっさと負けてしまうと目立つし、接戦で長引くと全員から見られる形になる。
複数同時対戦とはいえ、この大人数の前で対戦するのは、どうしても緊張してしまう。
僕は、いつか呼ばれる自分の名前にビビッて、目の前で行われている対戦が見えていなかった。
「えーと次は、虎森高校の現内さん」
「は、はい」
対戦が3週目に入り、ついに僕の名前が呼ばれた。
「よし、現内。がんばれよ」
「期待してますよ。現内さん」
屋良さんと栄樹さんからエールをもらって、僕は対戦台へ向かった。
すると、僕の席へ向かう別の男子がいた。
その男子は席の前に立つと、僕と向かい合ってきた。
「君が俺の対戦相手か」
男子は僕を見上げると、余裕の笑みを浮かべる。
「君、午前中ここにいなかったよね?ということはDグループだね?」
「は、はぁ…」
多少たじろいでしまったが、同じ格ゲーマーとわかっているだけで、すごまれても問題なかった。
むしろ、ここにいる3/4を把握しているか?と疑問に思う余裕すらあった。
「俺は次のトーナメントも控えているんだ。変なことして、俺の調子を狂わせるなよ?」
どうやら、相当腕に覚えがあるらしい。
「おい、やめないか!」
鳥塚高校の方から、その男子の行いを止める声が聞こえた。
「まったく、あいつは…」
「そこの君、遠慮なく叩きのめしていいからねー」
今度は、鳥塚高校の女子二人からそんなことを言われる。
「ちっ」
わざわざ挑発しに来た男子は、舌打ちをして自分の席へと戻って行った。
他の事ならいざ知らず、プレイを見ていないのに格下扱いされるのは、気分が悪かった。
みてろよ。
ネット対戦でなめプレイをされた直前くらいに、僕は燃えていた。
席に着き、スタートボタンを押す。
選ぶキャラクターは当然シハラ。長年の相棒。
対する相手もシハラ。まさかの同キャラ対戦となった。
いざ対戦が始まる。
先ほどのイキった態度とは裏腹に、相手は慎重な立ち回りをみせてくる。
不用意に上を取らせないようにしつつ、攻めるきっかけを探っている。
言うだけのことはありそうだ。
僕は、ちょっと強引だが前に出るチャンスがあったので、空中ダッシュ攻撃を仕掛ける。
が、不運にも相手のバックステップと重なってしまい、攻撃は届かず、隙を晒してしまう。
すると、相手がここぞとばかりに強襲を仕掛けてきた。
なんとかガードをして凌ぐが、相手はゲージを消費して、なおも攻めを継続してくる。
そして、ついに画面端を背負ってしまう。
相手はリターン重視で大技を振るようになってきた。
ここでその大技に引っかかってしまうと、大ダメージをくらってしまう。
ここは慎重にガード。
と相手が読んできて、投げを取りに接近してきた。
僕はそれに反応して投げ返す。
多彩なラッシュに投げを混ぜて相手のガードを崩すのが、シハラの大事なテクニックの一つ。
しかし、大振りな攻撃からの投げは、防御側にも反応の余地を与えてしまう。
投げからダウンを奪い、今度はこちらが画面端に追い込む。
同キャラ対戦は、キャラ性能差が無いので純粋な実力差で決着が着く。
そういっても過言では無いのだが、プレイヤー同士の相性が一番出るとも言える。
自分が使っているキャラなのだから、相手がやろうとしていることに感づきやすい。
故に、時には慎重になりすぎてしまい、格下相手にペースを握られてしまうこともある。
だから僕は、攻める時と守る時のメリハリを意識して、相手の安易な逃げやガード崩しをかならず阻止できるように心がけている。
しかも、加藤との対戦の時と同様に、相手は僕を格下と認識している。
加藤と違う点は、画面端を背負っているのに僕の攻めにわざわざ付き合ってくれていること。
おそらく、カウンターを取り返したいのだろう。
が、同キャラとはいえ、シハラのラッシュはそう簡単に切り返せるものではない。
投げに行くとみせかけて、しゃがみD攻撃を出す。
喫茶店で栄樹さんに教えた事の一つ。
僕の狙い通り、投げに反応した相手からカウンターヒットが取れた。
画面端・密着状態・カウンターヒット。
格ゲーマーなら誰もが念入りに練習するシチュエーション。大ダメージを与えるチャンス。
僕はきっちりコンボを叩き込む。
その後、相手に画面端から逃げられてしまい、何度か刺し合うことになるが、画面端コンボ分有利だった僕が1本目を取った。




