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デュアルネクサス  作者: ミチバケ
結晶ハンター編
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8/13

第8話:剣刀攻防

「ここから押し切る!」


 合され防がれるなら、相手が綻(ほころ)ぶまで攻め立てるまで。

 そこから先は疾風怒濤。再度の踏み直しより間髪入れず、速撃の反振で斬華を操(く)る。

 下方からの斬り上げ、袈裟懸(けさが)け。

 胴打ちへ繋げて、一太刀目を囮とした霞の二段目。

 丸舞(がんまい)から斜弦吶抜(しゃげんとつぬ)き、突きを交えて下げ即座の斬り返し。

 全身込めの打ち落とし、そのまま逆袈裟(ぎゃくけさ)目掛け上げ、手首返して水平薙ぎ。

 一切異なる方向から手を止めずに連撃を叩き込んだ。

 一振り目より二振り目、三振り目より四振り目、腕を疾駆(しっく)させる度(たび)に速度を上げ、鋭利さも威力も高め続けて。


「サセハセン」


 対する骸骨武者(ヘイタイアリ)は悉(ことごと)くを迎撃してみせた。

 僕の剣筋へ的確に刃を重ね、狙い放たれた箇所へ滑り込んで阻み潰していく。

 尋常(じんじょう)でない集中の妙技(みょうぎ)。その連続。

 僕達の合間で何合も何合も、二つの刀身が激突し、弾き送り、再び衝突、即時に離脱を繰り返した。

 圧と火勢が喰らい合い、威力と赫速(かくそく)が結んで反(そ)らし、夜陰(やいん)の揺らぎに透音(とうおん)が巻いて挽(ひ)く。

 凄まじい剣戟(けんげき)が多段に積まれ、その度に衝撃が波もかくやと周囲をさざめかせた。

 僕の剣は相手を抜けない。正対する怪物が抜かせない。

 遠隔攻撃の手段を持たない代わりに、近接戦闘へ特化した手合いだ。


「しぶというえに手強い!」

「ソレハ、コチラノ、セリフダ」


 十数撃目の打ち合いが終わった時、僕の直剣は骸骨武者(ヘイタイアリ)が握る刀に抑えられていた。

 ただの一太刀すら敵には届いていない。全てを完全に合わされ、完膚(かんぷ)なきまでに防がれた。

 刃同士がぶつかるほど、僕の余力は消耗される。こちらも明確な手傷はないけれど、極限の集中と肉体の酷使(こくし)は負担が大きい。

 常人より基礎身体能力が上がっている強化兵士(ネクサス)でなければ、とうに息が切れて返り討ちだったろう。

 これ以上の疲労蓄積はパフォーマンスを落とし、戦闘継続が困難となってしまう。

 状況は悪い。未だに効果的な一撃が決められていないのだから。


「ココマデ、ネバルトハナ、ショウジキ、ヤッカイダ」

「その感想はお返ししたいね」


 剣を止められた状態から、僕は右脚を前へと蹴り出した。

 放った先の靴底が骸骨武者(ヘイタイアリ)の下腹部へ届き、重さと抵抗を外へと押し出す。

 しかし相手の体幹は小さく揺れただけ。逆にこちらが反発力で崩された。

 僕は乱れたバランスを下肢(かし)の踏ん張りで即座に堪(こら)え、返された反動の内で剣を寝かせ後方へ。

 力の対流に全身を預け、大きく弧を描いたところで、腕と脚の筋肉を瞬間的に引き絞る。奔騰(ほんとう)した力で自身に急制動を掛けると、腰を捻転(ねんてん)させて一気に戻した。

 一度越えた軌跡(きせき)を直(ただ)ちに戻り、振り出された上半身、更に両腕が、握る直剣を力の限りに払い断つ。


「ナンドキテモ、オナジコト」


 再び舞い戻ってきた一刃を目の当たりにしながら、骸骨武者(ヘイタイアリ)は素早く応じた。

 猛然と差し迫る僕の剣へ、自身が持つ毀(こぼ)れた刀を腕ごとに振り下ろす。

 それは瞬く間もなく直下へ降り、寸分たがわず真上から剣へと直撃。爆発的な強圧を噴出させ、力尽くで剣身を打ち落した。


「くっ!?」


 僕の両腕に激烈な痺れが走る。指先から掌、手首を通って肩までが電流を流し込まれたように震え、全ての感覚が遠退いた。

 その間に直剣は敵の一撃へ任せ大地まで運ばれて、斬撃それ自体を無力化される。

 こちらの攻め手を撃墜した矢先、骸骨武者(ヘイタイアリ)は手中の刀を改めて構え直した。

 冥瓏(めいろう)とした眼窩(がんか)に僕の瞳を覗き見て、刃の切っ先を定めた中心点に差し向ける。


「アキラメテ、シネ」


 感情の起伏がない単言と共に、骸骨武者(ヘイタイアリ)は素早く刃を突き出してきた。

 僕の顔面を貫くために繰り出された、最短距離を滑る刺突。無駄を削ぎ端的に、だからこそ速い絶死の冷撃だ。

 その動きを両目に映し、僕は奥歯を噛み締める。

 意識を刃の動きへ注ぎ込み、目はけして瞑(つぶ)らない。

 生存を求める欲求が神経の反射へ転じ、首を咄嗟(とっさ)に傾けた。次の瞬間、刀の突き刺しが襲い来て、僕の左頬を浅く裂く。

 高速の敵刃は顔の皮膚を擦り、血管を傷付けて、血の雫を宙に散らした。焼けるような痛みが生まれたけど、そこまで。

 殺意の一閃を寸でで躱(かわ)し、命を奪われるには至らない。


「コノ、マアイデ、ヨクゾ」

「うおらァッ!」


 危うい所で兇刃(きょうじん)を凌(しの)いだ直後、僕は腹の底から気合を発した。

 怒号を喝に戦意を猛(たけ)らせ、細胞全てを揮(ふる)わせる。闘争本能へ火を入れて、痺れも痛みも頭の中から振り払う。

 そうしてもう一度、剣を掴み取り、固く歯を食い縛った。

 骸骨武者(ヘイタイアリ)の刀が次の動きへ入る暇を与えず、僕は強引に両腕を動かす。下がった剣先で大地を抉(えぐ)り、潜らせながら土を掬(すく)い、力一杯吹き飛ばした。

 直剣の上方移動に合わせて足元が捲(めく)れて砕け、撃った土片が無数の礫(つぶて)となって飛び散っていく。

 大小多数の土塊が規則性もなく乱雑に、敵側へと放射された。剣風に乗せられて一斉に舞う範囲は広い。

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