Episode 35 最終決戦Ⅱ その命、終わるとき
【語り手と語り手の竜】
ついに始まった最終決戦。
ここに描かれているディスタバンスと呼ばれている存在。
それはこの世界の神と呼ばれている存在。
この本の作者はこの戦いを、自分が見たこと全てを記載しておる。
本当にここまでの記憶をよく持ち帰ったものじゃ。
そして、この先は…とても恐ろしく、生々しく描かれておる。
お主はまだ幼い。今ならば引き返すことも出来るぞ?
だめだよおじいちゃん、彼にはもうここまで知ってもらったんだ。
最後まで知ってもらいたい。僕はそう思っているよ。
…そう、君も見届けてくれるんだね。ありがとう。
さぁ、最後の戦いは始まったばかり。グロストの戦いを最後まで見届けてあげてね。
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Episode 35 最終決戦Ⅱ その命、終わるとき
「ウオオオオオオオオオオッ!!」
「…何処にそんな力が秘められてやがる…?」
ディスタバンスの表情が曇った。
「貴様には分からんだろう…俺の背中を押してくれる仲間たちの姿がな…!」
グロストの力はどんどん力を増していた。
全身に激しい雷を纏い、ディスタバンスにダメージを与えていく。
「俺に…傷を負わせるか…!」
「俺は屈しない…!この世界を守り…ウィルとの“約束”を果たすその時まで…!!」
グロストは約束していた。
ウィルと、前日の夜に…
それはとても平凡な約束かもしれない。
だが、グロストにとっては大切な約束なのだ。
「そう、ウィルとの約束が……」
(グロスト、約束があるんだ)
(何だ?)
―――
「この戦いが終わって平和になったら…これからも僕と一緒に…居て欲しい。これは軍の仲間としてじゃない。君の“友人”としてのお願いなんだ。」
「一緒に…?」
「うん、僕はこの世界が救われたらこの世界を復興させるために頑張ろうと思っているんだ…グロスト、僕と一緒に世界を美しい世界にしよう。そしてこの戦いを皆が忘れないように、後世に伝えていくんだ。これが今の僕の夢だ。」
「…良い夢だ…だが、俺が傍に居る。本当にそんなことで良いのか?」
「うん、僕は…君と一緒が良い。これからも…僕の大切な人であってほしい。」
「…分かった。良いだろう…約束だ。」
「…!ありがとう!!」
傍に居たい。
ずっと一緒に居たい。
平和になった世界を一緒に見たい。
ウィルの純粋な世界を、グロストを想う気持ち。
傍から見たら小さな約束かもしれない。
だが、グロストとウィルにとっては大切な約束で、絶対に守りたい約束。
そのために…世界を救う。
「…ならなお…てめぇを潰したくなってきたぜ。」
「…!?」
ディスタバンスの力が増していく。
今までよりもずっと遥か。
グロストの今の全力に覆いかぶさるほどの力。
途方もなくどうしようもないような力がグロストにプレッシャーとなって襲い掛かる。
ディスタバンスの顔は怒りに満ちていた。
「“神力解放”(じんりきかいほう)」
ディスタバンスの長い赤髪がふわりと逆立ち、額に紋様が浮かぶ。
そして背に生えた小さな翼のようなものが炎の翼となる。
ディスタバンスの本来持つ神としての本気の姿だ。
「…約束だと?」
「グッ…!?」
重圧がのしかかり、それはグロストの身体にのしかかる。
重く、そして熱く、見る者を震え上がらせるほどのとてつもない重圧がグロストを襲う。
「くだらねぇ」
「!?」
ディスタバンスが何をしたのか分からぬまま、グロストの腹部に灼熱の火球が当たる。
「グッ…オオオオオオオッ……!」
腹部に大やけどを負ったグロスト。
「……!」
皮膚が激しくただれ、その熱が全身を膨れ上がらせ、破裂する。
全身に飛び散る血液が無残に空を舞い、地に落ちる。
グロストはもはや声もあげることもできなくなるほどに重い痛みを味わった。
「約束なんて…そんなくだらねぇ綺麗事…俺が潰してやる…てめぇはもう潰れとけ。」
「!!」
ディスタバンスの手がグロストの左胸を一瞬で掴んだ。
その瞬間、激しい爆発がグロストの左胸ではじけた。
「グアアアッ………ァ……ガ……」
全身から肉片が吹き飛んでいく。
グロストの身体の組織は壊死してしまった。
もはや体動かすことは不可能。地へとまっさかさまに落ち、全身が激しく痙攣。
意識すらもう暗闇に堕ちる寸前だった。
「てめぇには世界なんて救えねぇんだよ…」
ディスタバンスは全身ボロボロのグロストを踏みつけた。
しかし…グロストはまだ諦めの眼をしていない。
「フー…フー…グルルルル…!!」
激しくディスタバンスの睨みつける。
「なんだその目は…生意気な奴だな。」
生々しい音が鳴り響く。
骨が折れ。その燃え盛る炎により皮膚が黒く焦げて壊死し、全身の水分が抜けてゆく。
意識はもはやなくなる寸前だ。
魂が、肉体に宿ることが出来なくなっていることを理解した。
それすなわち…死が目の前にあるということだ。
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「…!」
ゴードスは感じた。
とても険しい顔をしている。
「ゴードスさん…?」
兵士がそれに気づいたようだ。
「…来た。」
「ま、まさか…!?」
「非常事態の鐘を鳴らせ!10万の兵が攻めてきたぞ!!」
カーンカーンカーン!!
非常事態の鐘が鳴る。
兵士たちは平和軍の拠点の前に並んだ。
「良いか?ここを守り通さなければ我々は終わる。平和を勝ち取るために…ワシらでここを守るのじゃ。」
「はっ!!」
「お任せください!」
「じゃが。」
ゴードスは言う。
「死ぬな。」
ゴードスは優しく言う。
「未来を皆で見よう。未来を皆で作ろう。だから生きて帰ろう。それがワシらの目標じゃ。グロストを信じて、自分を、仲間を信じて戦おう。」
「「「「「「ワアアアアアーーーーーーッ!!」」」」」」
兵士たちの気合いは十分。
「行くぞ!全軍!生きて帰れ!出陣じゃ!」
こちらでも、最後の戦いが始まった。
しかしゴードスは言いだせなかった。
(グロスト…感じない…お前の命を感じない…まさか…いいや、ワシは信じる。ワシもお前を応援しとる。ワシの思い…受け取れ…!)
ゴードスは願った。
(グロスト。立ち上がれ。お前さんはここで終わる者ではない…)
ウィルたちは魂のまま、グロストとディスタバンスの戦いを見ていた。
だが…ウィルの泣き出してしまった
「あ…あああっ…」
グロストの状態はもはや死直前。
あまりにもひどいディスタバンスとの力の差。
そして、愛する者がボロボロにされてゆく様
ウィルにはもう見ていられない程に悲惨たるものであった。
深い絶望がウィルを襲う。
「グロストッ!グロストオオオオオオ!嫌だっ!こんなのは嫌だ…!誰か…だ…か…っ…!!」
「ウィル!落ち着け!グロストはここで負けるような奴じゃない!」
「ウィル!しっかりしろ!」
レイリーと兵士たちはウィルを落ち着かせようと声をかける。
「でも…でも…あんなの…」
「ウィル!!」
「…!」
サイノがウィルに言う。
「お前が一番グロストを信じてあげなくてどうするんだ!お前が願わなくてどうする!?お前が絶望したら…アイツは誰を糧に戦えばいい!?」
「…僕は…僕は…!」
「ウィル、願えよ。信じろよ。グロストを信じろ!グロストは必ず立ち上がる。俺達の願いを届けるんだ。」
サイノが必死でウィルに訴え、ウィルの心は平静を取り戻した。
「…はいッ!!」
(グロスト…!信じてる…僕は君を…だから…負けないで…!)
ゴードスたちも願っている。
ウィルも願っている。
皆がグロストの勝利を願っている。
その願いはグロストにしっかりと届いていた。
だからこそグロストは体がボロボロになろうが、意識が薄れようが、諦めない。
「終わりにしてやるよ」
炎がディスタバンスの腕に込められる
「こいつで終わりだ…!」
「…ヌアアアッ!!!」
全身から激しく雷をうならせ、破裂させるグロスト。
「ッ…ハッ…ハッ…ハッ…」
光の力である程度の修復を行ったグロストは距離を置くことに成功した。
だが、再びグロストは倒れた。
「…もう動けないはずだ。」
「…俺は………全世界の全ての命を預かっている…負けるわけには…いかん…!」
「うぜぇ…なんなんだてめぇは…往生際がわりィぞ!」
逆上したディスタバンス。その怒りの矛先を全てグロストにぶつけた。
空を舞い、力なく倒れ、ピクリとも動かなくなるグロスト。
その魂が抜け落ちようとしていた。
(…身体が…動かん……終わるのか…ここで…俺は………………)
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辺りはまっしろだった
ここはどこだろうか
見覚えのない景色にグロストはふらふらと歩き出した。
「あれは…かあ…さん…?」
目の前にはグロストのずっと幼き頃、破壊軍によって魂を奪われた母の姿。
そこにはグロストの封印していた幼いころの思い出が映し出されていた。
笑顔で笑いあう幼いグロスト少年竜と母。
「…俺にも…こんな時期があったな…」
その思い出が消え、奥には光が見える。
「…誰かいるのか…?」
目の前に白い影と黒い影。
「…お前たちか…」
「グロスト、来てしまったみたいだな…」
「あなたがここに来たということは、あなたの魂が終わり迎えてしまおうとしているということです。」
グロストの命が終わる。
死と生の狭間。
グロストは、再び光と闇と出会った…
Episode 35 END




