Episode 34 最終決戦Ⅰ 最果ての塔で…
Episode 34 最終決戦Ⅰ 最果ての塔で…
「早く来いグロスト。貴様を完膚なきまでに倒し、この世界を終わらせる。」
大陸南部のさらに奥にそびえる最果ての塔。
ディスタバンスはグロストの登場を待っていた。
「…もうすぐだ…もうすぐ俺の苦悩が終わる…ハッハッハ…!“お前”が望んだ世界は消えるんだ。」
破壊軍の兵士たちは塔の内部、その周辺の荒れた荒野と砂漠に散りばめられていた。
全く動く様子が無い。
その姿には、人型だけではない、色々な形をした破壊軍の兵士がただ茫然とまるでがらくたのように突っ立っていた。
「…感じるぞ。気配を。」
ディスタバンスはスッと手を前に出した。
「約束はここまで。行け。グロスト以外の平和軍を殲滅するのだ。」
ギンと赤く目を光らせ多くの破壊軍が動き出す。
その数1万…5万…10万…いや、それ以上だ。
今までの何千倍もの数の破壊軍が一斉に動き出す。
数の少ない平和軍を徹底的に倒し、そしてグロストを倒し…平和軍は壊滅する。
「見えた…!あれが天を貫く塔…!」
グロストは海を飛ぶ。
「…あれは…!」
破壊軍が。無数の破壊軍が、北へ向かっている。
「…ディスタバンスめ…俺が戦っている間に平和軍を落とすつもりか…!」
グロストは力を使おうとした。
だが、ここで力を使ってしまうと、ディスタバンスとの闘いに全力で挑めない。
(…ディスタバンスを倒せば破壊軍は止まるはず…)
グロストは、破壊軍を軍勢を潜り抜け、塔を目指した。
破壊軍はグロストを襲わず、ただ、北を見て歩き、飛び続けていた。
ディスタバンスが呼んでいる。
ここで破壊軍に襲わせ、体力を奪ってくると踏んでいたグロストだったが、どうやらディスタバンスは全力のグロストでも倒せるほどの余裕があるようだ。
(ここからだと平和軍の拠点にたどり着くまでに時間がある…ゴードス。平和軍の皆。俺は必ずディスタバンスを倒す…信じて待っていてくれ。)
グロストは叫んだ。
「出てこいッ!!ディスタバンス!!」
それと同時にグロストから白き雷と黒き雷が暴発した。
その雷はグロストを纏い、暴れ狂うように激しく音をバチバチと鳴らす。
「来たなグロスト。待っていたぞ」
ディスタバンスだ。
余裕の表情をしているが、その背で纏っている、とてつもない力をグロストは感じた。
「…一つだけ聞かせろ。貴様を倒せば破壊軍は止まるのか。」
「その通り。破壊軍は俺が生み出した人形だ。そしてお前たちが助かる可能性は1つ。俺を倒すことだ。まぁ安心しろよ。俺が滅んでも世界は残る。衰退して数万年もする頃には何もない世界になり果てるだろうがな。」
ディスタバンスは「最も、てめぇが俺に勝つなど万が一でもねぇがな。」と笑う。
「…生憎俺は貴様以外の神に心当たりがあるのでな。貴様を殺したとて、そいつにこの世界を管理させてやる。」
「…チッ、エテルネルか。胸糞わりぃ。」
ディスタバンスは舌打ちする。
(まぁ最も、俺も保険はかけてあるのさ。)
ディスタバンスはそう思いながらもグロストを上から見つめる。
「まぁ良い。なぁグロスト。何故俺が破壊軍をお前に仕向けなかったかわかるか?」
「…全力の俺だろうとお前にとっては大したことは無い…そう思っているからだろう。」
「分かってるじゃないか。だがそれだけじゃねぇ…!」
ディスタバンスの全身に赤黒い炎がまといだす。
「この世界で最強である完璧なお前を俺が倒す。それは…つまりこの世界の死を意味する。どうせ世界を壊すならば…絶望を与えてから壊したほうが良いだろう?世界の希望を失ったこの世界のゴミ共はどう思うかな?楽しいだろう?」
その瞬間。ディスタバンスの身体がガクンと動く。
壁に強く叩きつけられるディスタバンス。
グロストの手がディスタバンスの首をつかむ。
「…もういい、しゃべるな。」
「いいぞ?もっと怒りを見せろ。もっとお前の力を見せろ!それを俺が潰す!その希望ごとなァ!」
ディスタバンスはその気迫と力の衝撃でグロストを吹き飛ばした。
グロストはすぐに体制を立て直し、雷を放つ。
無数に飛び交う雷がディスタバンスを襲う。
「遅いな。」
その雷は簡単に避けられる。
だがグロストは攻撃の手を緩めない。
「そうだ、もっとだ。もっと見せてみろ。」
「早い…!」
「ほら、避けられるか?」
ディスタバンスは遊んでいるのようにグロストをもてあそぶ。
そしてその放つ火球はグロストに襲い掛かる。
グロストの身体よりも大きい火球だ。
「クッ」
グロストの背に背負うマントを前に出す。
(変われ!)
マントの材質を耐火性へと変化させた。
そう、この将軍の証であるマントは、さまざまな材質に変化させることができる。
「ほーそんなマントでもかなりの魔力が秘められてやがる。」
ディスタバンスは感心した。
「だが、これならどうだ?」
一瞬でグロストの眼前に来るディスタバンスは肉弾戦に持ち込んだ。
「ッ!」
その一撃は重い。
グロストはマントを即座に鉄製に変質させるが、それすらもその剛拳は打ち砕く。
「ガッ!?」
「まずはここだ。」
ディスタバンスの火を纏った剛拳がグロストの腹部に直撃した。
「ーーーー!!」
言葉を出せぬほどの激痛。
「ガ…ァ…!?」
今の一撃ただ一発で、内臓が破裂するかのような一撃。
赤い鮮血が口から吹き出る。
「クッ…!」
グロストの体内が白い光で包まれる。
「ほう、治癒能力か。あの時は見せなかった力だな」
「…あの時は…怒りで我を忘れていた…」
「…あぁ、そうだった。お前の力は感情…つまり心に影響されるんだったな」
「今度は負けん…俺は必ず貴様を倒し…この戦いを終わらせる!!」
(たとえ刺し違えても…俺は救って見せる…!)
「グロスト、もっと本気を見せてみろよ。」
「クッ…!!」
(強い…!光と闇の力をもってしても…神には勝てぬのか…!?いいや、俺は諦めん…!)
「俺は…諦めんぞ!!」
「そうでなくちゃ面白くねぇ!」
しかし、状況は絶望的だ。
こんなとき…ウィルが傍に居れば…仲間たちが居ればどれだけ心強いだろうか。
そう思うグロスト。
だが、その声は…グロストの耳に、心に、魂にハッキリと伝う。
(頑張れ!)
(頑張れ!)
声が聞こえる。
この声は…皆の声だ…
その応援はグロストの力となった。
「オオオオオオオオオオオ!!!」
「…力が増した…?」
「まだだ!まだ俺は折れていない…まだ戦える!!」
ありがとう。今、お前たちの力は、俺の力となっている。
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一方、ここは平和軍の拠点。
ゴードスは兵士たちに事情を説明した。
「…というわけで、グロストは一人で向かった。」
「!」
「ええ!?」
「そんな…!」
兵士たちはざわついた。
あのディスタバンスを一人で相手するなど…
「ワシも正直不安でならん。じゃが…信じよう。そして…」
ゴードスは南の方角を見る。
「……破壊軍の気配がするのじゃ。悪しき魂が10万以上…」
「10万!?」
「え!?」
「む、無理だ…!」
兵士たちは絶望を感じた。
10万の破壊軍の軍勢。
到底勝ち目はない。こちらの人数はもはや200人を割っている。
実に500倍以上に差がある人数差にどう立ち向かえというのか。
「…グロストが頑張っておるのじゃ!ワシらも…戦わねばなるまい。」
ゴードスは、将軍として、周りを落ち着かせようと試みる。
「皆、世界が平和になったら何がしたい?」
ゴードスは問う。
「…わ、私は…家族を弔いたい…そして、この世界を復活させたい。」
「ウム、死んだ家族も報われよう。」
「僕は…穏やかに暮らしたい。」
「ウム、それも良いじゃろう。」
「自分は…この戦争を伝えたい。未来へ。」
「ウム、ワシも協力しよう。」
「自分は」
「僕は」
「私は」
兵士たちは夢を語った。
世界を救ったあと、どうしたいか。
戦いが終わったらやりたいこと。
兵士たちは平和な未来を望んだ。
「ワシは、ワシの手で殺してしまった仲間たちの分もその業を背負い生きたい。そしてこの戦いを後世へと語り継ぐものになりたい…そのために……平和を実現させるため、ワシらは戦わねばならん、グロストの未来、囚われた兵士たちの未来、そしてワシらの未来。それが守れるのは我々だけ…今こそ戦おうではないか!」
「おおおお!!!」
「うおおおお!やってやる!未来をつかむんだ!俺たちの手で!!」
ゴードスは将軍たる資格はないのかもしれない。
だが、今ここで兵士たちを仕切れるのはゴードスのみ。
将軍でなくても、ゴードスには皆を束ねる力がある。
それはゴードスが今まで積み重ねてきたこと。それが今活かされているのだ。
「破壊軍が来るまでまだ時間がある。決戦に備えるのじゃ。」
(グロスト、ここは任せておくのじゃ。じゃから…必ず帰ってくるんじゃぞ…)
戦いは本格化してゆく…
グロスト、ゴードス。平和軍の兵士たち。
そして囚われたウィルと兵士たち。
それぞれが様々の思いをかかげ、それぞれの戦いが始まる。
全ての戦いに、決着を…
未来は平和軍に全てかかっている。
Epsiode 34 END




