Episode 33 約束
Episode 33 約束
決戦の時はすぐそこまで来ていた。
ゴードスを奮い立たせた日の夜。
翌日の朝、グロストは一人でディスタバンスのところへと向かう。
これが、戦時中最後の夜になるかもしれない。
その日の夜。グロストは一人、軍の拠点から離れた場所。
ウィルの魂が奪われたあの直前に居た丘の上に居た。
「…」
(ウィル、今お前はどんな気持ちで向こうに居る?苦しんでいるのだろうか…俺が無力だった…だが、もう奴の好きにはさせない。俺が必ずお前を救って見せる。)
グロストは決意を新たに空を見た。
グロストの体力はあれからも治癒が進み、ほぼ万全の状態を期していた。
明日は絶好の状態で迎えられるだろう。
しかし…相手はグロストを圧倒し、敗北をした相手。
その力の差は、グロストの力をもってしても、とてもかなう相手ではない。
それでもグロストは行かねばならなかった。
例え可能性が1%もなかったとしても。
「…光の力、闇の力よ…答えてくれ。俺は…どうすれば奴に勝てる…?どうこの力を使えば世界を守れる?」
グロストは力を制御した時以来、何の反応も見せていない、内に眠る力に問いかけた。
すると…
(…ひとつだけある)
「…!」(聞こえる。お前は…闇の力か…!)
(グロスト、随分力を使いこなしているな。やはり貴様に託して正解だったようだ。)
(ええ、あなたが…この世界の希望になってる。それはとても喜ばしいことだわ。)
光の力、闇の力がグロストの心に語る。
(教えてくれ、俺はどうすれば神に勝てる?)
グロストは問う。
(…今のままでは無理だ。神の力はあまりにも強大だ。我々の力ですらも簡単に打ち消すであろう。)
(…それほどまでに神とは強大なのか…!)
(でも、あなたにだけ…あの神を倒せる手段があります。しかしそれを教えることは…できません。)
(…何故だ!)
グロストは怒り問いかける。
(まだその時ではない。時が来ればお前の脳内にその力を記憶させることを約束しよう。俺たちがそれを与えるのは、本当にその時が来たら…だ。)
なんとなく言いたいことが分かった。
おそらく、その最後の力とやらは…すべてを滅ぼすのだろう。
敵だけでない。
おそらく自身も…
(…分かった…)
グロストはあの時、ウィルとここでした約束を思い返していた。
「約束…か……ウィル…俺は…」
“お前との約束を守れないかもしれない”
―――
ゴードスは、無理やりにでも体を動かした。
他の兵士たちと共に、修繕作業にあたり、そして破壊軍がもしも攻めてきたときのための準備も滞りなくこなした。
兵士たちとあくまで平等の立場になり、自身の罪を受け入れ、それを形で示した。
「将軍、これで明日は完璧です。いつ破壊軍が攻めてきても、大丈夫です。」
「あぁ、ありがとう。これで…我々の戦いが終われば…」
「ええ、きっとこの空も晴れ…世界は元の輝きを取り戻すでしょう。」
ゴードスは汚れた夜空を見上げる。
(グロスト…今お前は…何を考えて今この時をすごしておる…?ワシは…今でも不安じゃよ…お前さん一人で…神に挑むなど…)
しかしゴードスにもやるべきことはある。出来ることがある。
(…ワシはワシに出来ることをやろう。ワシを信じてくれる兵士たちのためにも、必ずここを守り通して見せる。もう、弱い自分とは…いい加減決別すべきなのじゃ…)
ゴードスは決意を固めた。
皆の気持ちを。
皆の思いを。
グロストの拳を。
全てをゴードスは身に染めて、決戦の朝を待つ。
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そして…
世界の最南端。それよりももっと奥に位置する天高くそびえたつ塔。
誰が何のために建てたのか分からない。
存在すら知られていない幻の塔。
その最上階で、ディスタバンスは目を閉じて座っていた。
「…明日、攻めるか。まぁ良い…奴の力では俺を倒すのは不可能だ。」
(そんなことない!!)
「…何やら魂が騒がしいな。」
ディスタバンスに訴え続ける魂が一つ。
それはウィルだった。
「うっせぇぞガキ。魂の分際で。」
(僕は信じてる。グロストを信じてる!僕以外のみんなもグロストを信じてるんだ!)
ウィルは言う。
「…あいつじゃ俺には勝てねぇ。せっかくだから一対一で戦って、その力の差を見せつけてやるのさ。そしてこの世界はあいつの敗北と共に…ドカンだ。」
(どうして…あなたは神なんでしょ?どうしてこの世界を滅ぼそうとするの…?)
ウィルは聞く。
「理由?…たくさんありすぎて考えるのも覚えるのもやめちまった…俺はただこの世界が憎い…こんな世界に閉じ込めたこの世界のルールが憎い…!すべてが憎い…消してやる、何もかも…この手でこの世界を壊し…そして俺も消える。」
ディスタバンスの表情は歪んでいた。
あまりにも恐ろしい形相に塔の壁までもが崩れる。
(…なんて…悲しいんだ…)
「なんだと?」
(この世界には光がある…それを一番知っているのはあなたじゃ「そんな世界はもうねぇ!!!未来永劫なァ!!!」
(うっ…ああああ!?)
ウィルの魂に強い衝撃が襲い掛かる。
息が詰まるほど苦しい痛みがウィルを襲う。
「…てめぇには分からねぇ。神になった者の気持ちなど…!こんなクソみてぇな世界に縛られる俺の気持ちなんてよぉ!」
(ああああああああああああああああああああっ!!!!)
魂を握るように痛めつけるディスタバンス。
「このまま殺してもいいんだぞ…?死にたくなければ…これ以上俺を怒らせんな…」
(ハァ…ハァ…ハァ…グロスト…ッ…僕は…君が来てくれるのを…待っている………)
(ウィル、大丈夫か…!)
(へ、平気です…)
ウィルと共に囚われている兵士たちと意識を共有し合う。
(ウィル…無茶をするな…!)
同じく囚われているレイリーが声をかける。
(すいません隊長…でもディスタバンスは間違ってる…こんなこと…絶対に間違ってます…!)
(信じよう…我々には希望がまだ残っている。そうだろう?)
レイリーはグロストとゴードスを信じ、ウィルを励ます。
(…はい。)
(グロスト将軍、ゴードス将軍…頼んだぜ…俺たちは俺たちに出来ることを探すからな…)
同じく、囚われているサイノもグロストとゴードスを信じ、まずは自分たちに出来ることを探すことを考えた。
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夜中。
「…眠れんのか?」
グロストはまだ丘の上に居た。
ゴードスも眠れずに、散歩をしていた。
その時たまたま訪れた丘の上でグロストを見た。
「…あぁ…ここに居ると…落ち着くのだ。ここは…あいつが、ウィルが好きだった場所だった。」
「…そうか…すまん…ワシに落ち度が…「それ以上は言うな。」
グロストは謝ろうとするゴードスを止めた。
「…グロスト…お前さん…何か奴に勝てる勝機があるのか?」
「……いや…分からん。」
「……グロスト、お前さんには大切な友がおる。お前を受け入れてくれる世界がある…だから…死ぬんじゃないぞ。」
ゴードスはグロストに言う。
「………あぁ…」
グロストは濁った返事した。
自信をもって言えなかったのだ。
「…ワシはここをこの命かけてでも守る。じゃから…安心して行って来い。」
「あぁ。」
ゴードスはそう言い、拠点へと戻っていった。
(グロスト、お前さんが生きて帰ることを信じて…ここを守って見せるからのう……)
そして夜が更けた…
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「…」
予定の時間よりも、数時間早い。
日が昇る直前のことだ。
グロストは起き上がり、外へ出る。
濁った空が明るくなった。
「…行くのか?」
ゴードスが声をかける
「気づいていたのか。」
「お前さんのことじゃ。きっとワシらが眠っておる間に戦いに向かおうとすると思った。」
「…ゴードス…頼みがある。」
「…聞こう。」
「もしもだ。ウィルたちの魂が戻ってきて…俺がもし戻ってこなかったら…」
「何を言うんじゃ!そんなことは許さん!」
「ゴードス。」
グロストはゴードスをいままでに無い、切ない顔で見ていた。
“頼む。これが最後の頼みになるかもしれないのだ”
そう訴えているような顔。
その後ろで日が昇る。
ゴードスはそのグロストを見て、それ以降は何も言わなかった。
「ウィルに伝えてくれ」
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
…と。」
「…分かった。じゃが、それをワシの口からウィルに言わせんようにするのじゃぞ。約束するのじゃ。」
「…あぁ。分かった。」
グロストはそう言い、風を身体に感じだ。
気持ちのいい風だった。
濁った空と、濁った朝日。
だが、朝に吹く風は気持ちのいいものだった。
背に背負う平和軍のマントがなびく。
「…行ってくる。ここを頼んだぞ。ゴードス将軍。」
「あぁ。任せておくのじゃ。」
ゴードスは小さく微笑んだ。
グロストも小さく微笑み、空を飛んだ。
(ワシには何もしてやれん。じゃがグロスト。お前さんには…ワシらがついておる。離れて戦っていても心は通じ合っておるぞ。)
…
ゴードス、お前は優しい奴だ。
愛する者のために生き続け…
兵士のことを誰よりも苦悩しながらも考え
暴君だった俺までも、リスクを承知で受け入れた
それが故に将軍としてのプレッシャーを感じ、闇に堕ちることもあった
だがお前は立ち上がった
俺はお前を立ちあがらせることしかできなかった…あとはお前次第だ
そして…優しいお前だからこそ…
この世界の未来にはお前が必要だ
生きてくれ
“この世界の未来を頼んだぞ”
Episode 33 END




