Episode 30 グロストVSゴードス 後編 想いを受けて
Episode 30 グロストVSゴードス 後編 想いを受けて
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「なぁ、このままでいいのかよ。」
グロストに命令されて軍の拠点を守ることになった兵士たちだが、グロストは今も1人で戦ってる。
それを前衛兵士たちはただ指をくわえて見ているしかないなど、到底納得のいく物では無かった。
「…そりゃ俺だって納得いかねぇよ。だけど…あんな戦いにどうやって割って入れって言うんだ。」
戦いは激しすぎてもはやグロストにしか対等に戦える者が居ない。
グロストの言う通り、傍にいるだけで危険だ。
しかし、その戦場に身を投げる存在が1人、戦場を走っている。
「グロスト!」
「なっ、ウィル!?」
ウィルがグロストの戦う場所に向かってまっすぐ走り抜けていく。
「…やっぱダメだ。あんな前衛でもない少年が命を懸けて助けようとしてるんだ。俺たちだけこんなところで呆けてていいのかよ…かっこわりぃよ…!」
前衛兵士、サイノは叫ぶ。
そして武器を集め、兵士たちに配る。
「…行こうぜ。俺たちも。」
「…あぁ。」
兵士たちはそれぞれ武器を受け取る。
そしてそれを後方から見ていたのは、レイリーだ。
「行くのか。」
レイリーは兵士たちに言う。
「あぁ、このまま見ているなんて出来ない。」
「…分かった。この場所は我々後方支援隊に任せろ。」
「頼むぞ。」
全員ではないが、前衛兵士たちは武器を持ち戦場に戻っていく。
「残った者たちと後方支援隊で守るぞ!!」
レイリーの呼び声と共に残された人々は人を分散させ、軍を守るために動くことにした。
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声が聞こえる。
(お前の命を削ってでも目の前の平和軍を倒せ。お前は…破壊軍将軍ゴードスとして使命を全うしろ)
「貴様か…!ゴードスの心を操ったのは…!姿を見せろ。」
(てめぇに見せる姿はねぇ。ま、せっかくだからゲームでしようか。)
「…なんだと…?」
(お前がこの脳無しドラゴンを倒せたら姿を見せてやる。)
「…俺はこれがゴードスの意思でないことを知った。それを知った俺にゴードスを…倒せというのか。」
(お前は軍に仇名すものを倒す。平和軍として。例えお前の仲間だとしても、そうだろー?グロスト…)
「…この…下衆が!」
(楽しませてみろよ。)
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!グロストッ…ワシヲ…コロセッ!!!」
「グッ!!」
ゴードスの重い一撃がグロストの身体にクリーンヒットした。
「ガッ…ハッ…!」
その重い一撃に含まれた膨大な闇の力がグロストの身体を蝕んでいく。
「グゥゥゥゥ…ルルルルル…!」
「ガッ…!」
巨大な足に踏まれ苦しむグロスト。
「コロセ…!コロセ!!ワシヲ…コロセッッ!!!」
首を絞められ、もがくグロスト。
「グアッ…アァ…!」
闇が侵食してくる。
グロストの本来保っていなくてはならない光の闇のバランスが崩れる。
このままではグロストは…再び力の制御を失い。暴走してしまう。
身体に、全身に侵食してゆく黒い棘のような線がグロストの体中に浮かぶ。
激しい激痛と、失われていく光の力。
「…ゴードス…!!」
「スマヌ…!スマヌッ…カラダガ……グゥアアアアアアアアアアッ!!!」
「っ…おおおおおおっ!!」
グロストは今、使える光の力を最大限に放出した。
「グォッ!」
ひるみを見せたゴードス、その隙にゴードスに一蹴り。体制を立て直した。
しかしグロストの身体は闇に侵されすぎた。
もはやこれ以上動くことすら難しい。
「ハッ…ハッ…」
激しく息切れをし、苦しそうなグロスト。
これは、かつて自分が力を制御しきれなかったあの時の発作と同じものであった。
光と闇のバランスが大きく乱れているからである。
均一に保っていなければならない2つの力。その片方の闇の力が先の侵食で大きく増してしまい、光の力が弱まっている。
「…ゴードス…!」
大きく体制を崩したゴードスが、体制を整えてグロストめがけ突進してくる。
(身体が動かない…!)
このままでは再びグロストは闇に侵食される。
「ここまでか…!?」
諦めを悟ったグロスト。だが…その時。
「グロストっ!!」
グロストに浮力の魔法がかかった。
ゴードスの突進を宙に浮くことによってかわすことができた。
「えいっ!!」
そしてグロストに治癒魔法がかかった。
「身体が…少しだが…」
楽になった。
「グロスト!大丈夫!?」
ウィルだ。
「ウィル…!?どうして…!」
「心配だったから…!でも間一髪でよかった!」
身体を動かせるようになったグロスト。
そしてそれと同時にグロストの光の力が少しだけ戻ってきているのを感じた。
それはおそらくウィルが来たからだろう。
ウィルの存在がグロストの大きな原動力となっているのだろう。
「ウィル、ここは危険だ。戻れ…と、言いたいが今はそんな余裕はない…サポートを頼めるか?」
グロストはウィルを頼った。
「ここに居るだけで良い。それが俺の力になる。」
「…うん!僕は君と一緒に戦う!そのために僕は魔法を使えるように勉強したんだ。」
「ガアアアッ!!」
とてつもない威圧感だ。
平和軍将軍。そしてグロストと双璧を成す最強のドラゴン。
今、そこに居るのはそのドラゴンのなれの果て…といっても過言ではない。
「ウィル…俺はゴードスを…殺さねばらんかもしれん。」
「…うん…でも…出来るなら、助けたい。」
「俺も同じだ。なんとか止めて見せる。」
「僕も魔法を出し惜しみしないよ。」
「「「俺たちも手伝います!!」」」
「!」
ウィルを追いかけてきた前衛兵士たちがやってきた。
「サイノさん、皆…!」
「お前たち…!」
「レイリー隊長が言ってたことを実践しにきただけだ!数は多い方が良い!!」
「割って入れるほどの実力は無くても、何か出来ることがあるはずです!」
兵士たちはグロストとウィルをサポートするためにありったけの武器を持ち駆けつけた。
「…全く、仕方のない奴だ。ならば全力でサポートを頼むぞ!そして…絶対に死ぬな!」
「「「了解!!」」」
ゴードスを止める戦いが始まった。
―――
「ウィル!」
「うん!」
ウィルは治癒の魔法と、速度を速める魔法をかけた。
「ウオオッ!」
グロストとゴードスのぶつかり合いが始まった。
光闇の雷と闇の炎の激しい衝突。
「それ!グロスト!」
ウィルはグロストにあらゆる補助魔法をかけ続ける。
グロストの身体能力は大きく上昇している。
(ウィル…お前はそれほどまでに強くなったのだな…!このような怪物を前にひるむことなく戦うその勇気…)
グロストはついニヤリと笑ってしまいそうだった。
ウィルの見間違えるほどの成長が嬉しかったのだ。
必死に支えてくれる仲間が居る。
「これほど頼りになる者はいない!」
グロストの光の力が大きく増した。
安心して戦える。全力をもって今、目の前で苦しむゴードスを救うことに全力を注げる。
「グルアアアアッ!!」
ゴードスは全身を使い周囲の兵士たちを巻き込む攻撃を行おうとしている。
「やらせねぇ!!」
サイノは持っていた盾でゴードスの攻撃を前に出て受ける。
「ッ…!防御魔法頼む!」
「はい!」
ウィルは防御魔法をサイノにかけ、サイノは全身をかけてゴードスの攻撃を受けきった。
「うおおおお!!!」
「グォッ!」
ゴードスの攻撃を防ぎ切ったサイノ。バランスを崩したゴードスにグロストが畳みかける。
「ゴードス!」
グロストの力が込められた拳がゴードスの腹部へと放たれた。
「ガァァァッ!!!?」
「ウオオオオオオオオ!!」
「ゴードス将軍の気を逸らせ!全方位から攻撃だ!」
兵士たちが散り散りになり、それぞれが遠距離攻撃を中心に行う。
「ゴードスさん!!」
「ゴードス!!!」
グロストの光の力。
そしてウィルの思いの籠った魔法。
その光はゴードスのすぐ傍に居たグロストとウィルを巻き込んで包み込んだ。
(何…?)
神と名乗る者にすら見えない強い輝きが辺りを染め上げた
「…これは…」
光の中で、グロストとウィルは見た。
それは遠い昔。
ゴードスが経験した物語。
そこに居たゴードスの長くて険しいその人生が見えた。
その約450年の人間や竜人にとっては長い長いその時の中で、ゴードスが経験した悲惨な光景。
そして愛した妻を失った悲しみ。
平和軍将軍になってから歩んできた道。苦悩や苦労が見えた。
そして…
このような事態に至るまでの経緯。
これは光の力が見せているものなのだろうか。
ゴードスの記憶がこの光の中で満ち溢れている。
「ゴードスさん…あなたは…」
「ゴードス…お前は…」
「…大したものではない。これもまた、一つの竜生じゃ」
「ゴードスさん!」
ゴードスが目の前に居た。
しかしその姿は、かつてのゴードスだった。
もう闇の気配を感じない。
「すまなかった…ワシは多くの兵を傷つけ、殺した。」
「…ゴードス…お前は…」
「この光が消えるころ、ワシはもうその魂尽きているじゃろう。」
「そんな…!助けられなかった…!?」
ウィルはショックを受け、涙を流した。
「まだなんとかなる!諦めちゃだめです!」
ウィルはゴードスに治癒魔法をかけた。
「これはワシの魂という幻じゃ。肉体はとうに死んでおるよ。」
ゴードスの身体は消えかけていた。
「…ッ…駄目だ!死なせない!」
涙で目がかすんでもウィルは魔法をかけ続ける。
「ウィル、ありがとうの。」
ゴードスは微笑んだ。
グロストはさっきから何も言わず、下を向いている。
「グロスト、あとは任せたぞ。神と名乗る奴は強い。おそらく破壊軍の統率者で間違いないじゃろう。じゃがお前さんなら…」
ゴードスが言葉を言っている途中、グロストは顔を上げた。
「させん」
その言葉がゴードスの口を止めた。
ウィルはグロストを見る。
その目はなぜか怒りに満ちていた。
「今お前は何故そのようなことを言う。」
「グロスト…?」
ゴードスの身体がどんどん薄くなっていく。
「勝手に死にゆくなど…俺は許さん。」
グロストは手をかざす。
体中に宿る光の力が収束していく。
「お前の愛した者は死にゆく際何と言っていた?忘れたわけではあるまい。」
「この世界に…平和を…そして…」
(私は…あなたを世界で一番……愛しています)
その言葉が鮮明にゴードスの記憶から蘇る。
「お前はその約束を放棄するのか…!罪を負ったお前は死をもってその責から逃げるのか…!俺も逃げずに戦っている。だというのにお前は逃げるのか…!」
光の力がゴードスを纏う。
その光でゴードスの魂が肉体へと戻ろうとしていた。
そして肉体もまた、魂を受け入れる器として再生されてゆく…
だが、一歩届かない。
それは、ゴードスの心だ。
彼が諦めているからだ。これでは再び魂は輝きを失うだろう。
「グロスト…」
「頑張れと問いかけてくれたのだろう。お前がここで力尽きることをお前が愛した者が望むと思うか!」
「ワシは…ワシは…じゃが…もう…」
「希望を持て!生きることを願え…!その想いと俺の光の魔法を受け入れろ!奇跡を起こして見せる。」
「…僕も!僕も信じるよ!僕の魔力もあなたに注ぎます!だからゴードスさんも信じて!!僕たちと一緒に…生きてください!!」
「…何故じゃ…何故お前たちはそこまで…」
「今更何を言うのだ」
「そうですよ。僕たちは…」
「「仲間だから。」」
「…!」(…あぁ…そうか…)
(リリア…ワシは何故…今までこんなにも苦悩しておったのじゃろうな…)
ゴードスは受け入れた。
生きることを。
グロストや、ウィルが望んだ希望を。
(困ったとき、苦しんだとき、そこにはいつも…仲間がおったではないか…)
手を差し伸べて来る仲間が居た。その手を受け取らず、一人でずっと苦悩していた。
しかし、その手を彼はやっと受け取った。
“あなたは一人ではないのですよ、ゴードス。”
(リリア)
“目を開けて。そして、生きてください。仲間たちと共に。”
「まだそっちには行けぬか…リリア。」
光に包まれていたこの空間が一瞬ではじけた。
飛び散る光が降り注ぎ、眩しくて目を閉じていたウィルは目を開けた。
そこには、全身痕が残るほどの深い傷だらけではあるが、ゴードスの生命の鼓動を感じた。
「…」
「…生きているようだな…」
グロストはガクッと座り込んだ。
「…あぁ…生きておる…ワシは……生きておる…」
「…ゴードスさん良かった…グロスト…僕、うまくできたかな…」
「あぁ、ありがとう、ウィル…」
「…よかった…」
ウィルはフラリと地面に倒れた。
グロストも、ゴードスも、ウィルも。
3人とも動けなかった。
「将軍!」
「将軍-ッ!!」
兵士たちが駆けつけてきた。
「酷い怪我だ…すぐに治療を!!」
3人はすぐに兵士たちによって治療部屋へと搬送された。
(チッ、役立たずが)
世界のより深い闇の底…舌打ちをした不愉快な声が聞こえた気がした。
すぐに治療に入る後方支援隊の兵士たち。
前衛の兵士たちは、軍の立て直しをしていた。
ゴードスの襲撃で亡くなった兵士たちを弔い、壊れた建物の修繕などを短時間で仕上げた。
途中、破壊軍兵士の襲来があったが、兵士たちでなんとか防衛することに成功した。
これは、破壊軍兵士の数も大きく減っていることが防衛に繋がっていた。
そして数日が経った…
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「すまなかった、軍の仲間たちよ…」
グロストの光の加護もあり、重症を負ったものの、早期の回復を果たしたゴードスは動けるようになり、真っ先に、自身の手で殺してしまった兵士たちの墓標に謝った。
届かないかもしれない。しかし、言わずにはいられなかった。
自分の心の弱さが招いた悲劇に、ゴードスはただ謝ることしかできなかった。
「ワシは罪を背負う。昔行った残虐な行為、そして今起こしてしまった行為…全て背負う。そしてワシは生きる。」
その決意をウィルとグロストは後ろから聞いていた。
「ゴードスさん…」
「ウィル、それが奴の覚悟だ。俺も同じものを背負っている。」
グロストも多くの仲間を巻き込んで殺した。
ゴードスの罪とグロストの罪は同じなのだ。
故に、生きることでその罪を背負うのだ。
生き残った兵士たちも、ゴードスを受け入れた。
ウィルやグロストの説得もあり、ゴードスはここにとどまることを許された。
「…グロスト、ウィル。感謝する。ありがとうの。」
「いえ…それよりゴードスさん…身体はもう大丈夫なんですか?」
ウィルが見たゴードスの身体はとても大丈夫そうには見えなかった。
全身に痕が残る傷があり、翼もひどく傷んでおり、翼膜はボロボロに剥がれている部分が多い。
右目…赤の眼の部分にもひどい傷があり、少ししか右目が開けられないようだ。
「…戒めじゃ。これはワシが操られている際に自身を抑え込むために付けた傷…所謂自傷じゃ。そしてこれもまた、ワシの罪なのじゃ。」
「…ゴードス。お前を操っていた奴。神と名乗っていた奴のことを聞かせてくれ。奴が破壊軍の統率者であるならば…」
グロストは決意の表情を浮かべた。
「この長き戦争に…終わりが見えてきたのかもしれぬ。」
戦いの終わり。
その終わりがついに、訪れようとしている…
その結末はまだ、誰にもわからない…
Episode 30 END
【怠惰】
…ふーん
なかなかやるじゃねーか
俺の呪縛を絶つとはな…
ずっとその辺の死体の魂を骸の鎧に閉じ込めて動かしてたが…
それもなんか飽きてきたな
そうだ、同じ形だからおもしろくねーんだよ。
前に作った竜型とかそういうの作って…
いや、そういうことすんのもくだらねーな
こうなれば俺自身が動くまでだ。
まぁ、俺自身の全てを世界に具現させる事は出来ないから…そうだな、俺の”半身”を送り込むとしよう
今度こそ終わりだ…!
この世界を滅ぼし…そして俺も消えるんだ…
もう
耐えられねぇんだ
終われねぇ物語を終わらせるんだよ
そのためだったら…俺は…悪魔であり続ける




