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Episode 27 狂乱の爆炎

Episode 27 狂乱の爆炎







「これが…力を制御したグロストの…」


「凄い…!とてつもない力を感じる…!」



グロストは、夢で得たことを継承し、帰って来た。

最初は不十分ではあったが、使いこなし方を知っていたグロストにとって、再び力を制御下に置くことなど、造作もなかった。


「進むぞ。」


グロストの雷は自由自在にその姿を変え、周りの破壊軍を一掃していく。


グロスト本人はただ歩いているだけだ。

周りの雷が周りの破壊軍兵士を包み込み、魂ごと灰へといざなう。


破壊の力が破壊軍を次々と消滅させていく。


それだけではない、それと共に溢れる光の力は、戦場の平和軍兵士を癒しの光で包み込んだ。


「グロスト!」

ウィルは駆け寄った。

「…ウィル、何でもいい。お前が思うサポートを俺にしてくれ。」

「分かった…!」


破壊軍が大量に迫ってくる。

「グロスト!」

ウィルは魔法をかけた。

グロストに緑色のオーラがまとう。


「…なるほど。」

グロストはフッと姿を消した。


「!」

驚いたウィル。


そう…一瞬で無数の破壊軍がグロストの手によって葬られていた。




「僕がかけたのは速度を強化する魔法…けど、一瞬でここまで出来るほどの力はないはず…」

「いいや…お前の魔法で、より早く動けるようになった。礼を言う。」


グロストはスピードを速め、多くの破壊軍をなぎ倒していく。


まさに無双とはこのことだ。

「グロスト…君の秘めていた力は…こんなに計り知れないほど強大だったのか…!」


破壊。

そして癒し。

闇と光を完全に制御するというのは、こんなにも恐ろしく強いものなのか。

ウィルは驚きを隠せなかった。


それからも、グロストに攻撃してくる破壊軍の攻撃をウィルが防御魔法で防いだりしながら、2人はどんどん先へと進む。



「俺たちも続くぞ!グロスト将軍ばかりに戦わせたらいけない!」

「「「「おおおお!」」」」

平和軍の兵士たちも、グロストの力に唖然として動けなかったが、我に返り、グロストの後ろへ続いた。

取りこぼした破壊軍兵士の魂を、平和軍兵士たちで倒していった。

ウィルだけがグロストのサポートをしていた。それだけで十分なのだ。

それほどまでにグロストが秘めていた力は強大だったということだ。



「!グロスト!」


ウィルが危険を感知した。

耐炎魔法をグロストの頭上に張った。


「!」

グロストの頭上に爆炎が降り注いだ。


「なんだ…!?」

グロストはとっさに光の壁をウィルや兵士たちの頭上に展開した。

これも光魔法の一種だろう。

しかし、そこまで耐久があるわけではない。

いや、上から降る爆炎が強い力を持っているからだ。


ようやく平和軍の足が止まる。




頭上には誰も居ない。

ただ上空から無数の爆炎が降り注ぐ。

それは平和軍だけではない。破壊軍の頭上にも降り注ぐ。

バリアもなにも張っていない破壊軍だけが、その爆炎に焼かれていく。


「…これがウィル。お前が言っていた…」

「うん、これだ。この現象が起きてから僕たち平和軍と相手の破壊軍も…大きな損傷をしている。」



突如降り注いだ爆炎は、グロストのかけた光魔法を貫通し、平和軍兵士たちを爆炎で包み込んでいく。


「バリアが!」

「ウィル!」

グロストは再び光の壁を展開。兵士たちを守り続ける。

そしてウィルに展開するまで間に合わず、グロストはウィルをかばって爆炎を受けた。


「グロスト!!」


「案ずるな…誰も…死なせはしない!」

グロストの雷が天を貫くようにはじけ飛ぶ。

天に白い雷と黒い雷が交差する。



「強い闇の気配を感じる…しかしこれは…この気配は…!」


天空で雷がはじける。


何かに命中したようだ。

それから、爆炎は降ってこなくなった。



「…破壊軍は今ので撤退したようだ。ひとまず…我々の勝利だ。」


「「「オオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」」」


決定打はあの爆炎によるものだったが、この戦いは、平和軍の勝利だ。

まずは一手、破壊軍の領地を取り戻した。


次に拠点を構えることができる場所まで、平和軍が破壊軍をせん滅できれば、大幅な躍進となるだろう。




軍の士気は大幅に上がった。


世界の救世主が戻って来た。それも大幅なパワーアップをして。

平和軍に大きな希望が舞い降りた。


平和軍の快進撃はここから始まるのだ。




その日の夜。


グロストの復活に喜ぶ兵士たちの姿がうかがえるようになっていた。


一部の兵士は、眠っていたせいで酷い目にあったと、冷たい態度を見せる兵士も居た。


「…グロスト、大丈夫?」


「…ッ…」

グロストは再び、緊急用のベッドへ搬送された。


古傷からにじむ血が濃くなる。

包帯が意味をなさないレベルの出血がグロストの腹部から溢れた。


「…」

ウィルも癒しの力をグロストにかけ、緊急用の応急魔法もここの医者にかけてもらっている。


だが、グロストの力が強大すぎて、応急魔法も打ち消してしまっているようだ。

魔法があまり効いていない。


顔色が悪く、うなされるグロスト。



「…とにかく、強めの魔法をかけておきます。ウィル、あなたも休みなさい。次の戦いに彼は参戦出来ない。」

「…わかりました。」


ウィルはグロストを心配そうに見つめ、自分の持ち場で休息を取りに戻った。


「…グロスト…この力はあまりにも諸刃の刃過ぎる…その命を燃やしてもなお…この世界を救いたいのか…いいや、あなたの場合は…復讐なのか…仲間を悲しませぬよう…今は完治させることだけを考えなさい。」


聞こえているかは分からないが、医者はグロストに呼びかけた。





一方ウィルは、眠れなくて散歩をしていた。


「…グロストが帰って来た。でも、まだ万全じゃない。それまで彼やここを守るのは僕たちだ。」

決意を固め直すウィル。


(グロストに頼るだけじゃダメだ、僕らが力を合わせて頑張らないと。)



ガチャ。

扉を開く音。

この近くには司令部があったはずだ。



「…!」


ウィルの先にいたのは、司令部から出るドラゴンの姿。


「…!!」(な、なんだあれ…!)


明らかに様子がおかしい。

そう、そこに見えていたのは、間違いなくゴードスだ。

だが、明らかにおかしいのだ。


「グハァ…グハァ…ハァッ、グルゥゥ…」

焦点の合わない眼。

荒ぶる呼吸。溢れる恐ろしい殺気。しかし、それと同時に感じるは、深い悲しみ。深い怒り。


(ゴードスさん…だよね…!!どうして…あんなことに)


「グァッ!」

ゴードスは、空を舞った。

そして、破壊軍の領地へと空を飛んだ。


このときウィルは見た。

ゴードスの眼から“青”が消えていたことに。


そして、いつも着ていたマント、首から下げていたブローチもしていない。


「…ゴードスさん…どうしてあんな姿に…!破壊軍が何かをしているのか…?」


ウィルは司令部の扉へと向かった。


「魔方陣が…解かれている…」

中に入れる。


ウィルはゴクリと息をのみこみ、中へ入る。



明かりも一切ない。月明りだけが頼りの真っ暗な司令部を進むウィル。


指令室。ゴードスの部屋の扉まで来たウィル。

ドラゴン用の扉の横にある人間用の扉から入るウィル。

ここにも鍵が掛かっていない。



音をなるべく立てないように歩くウィル。


(…みたところ何もなさそうだけど…)


ウィルはドラゴンサイズの椅子をよじ登り、机の上に着地した。


そこには大きな書類が無造作にちりばめられていた。


(…少しだけ。)

ウィルは、魔法で微弱な光を杖に光らせた。


「…!!」


ウィルは暗くて見えなかったが、この指令室はとんでもないことになっていた。




壁は爪の痕でボロボロ。床も何かを引き裂いたような傷。

それだけではない。

血痕だ。


無数に散りばめられた血痕が壁、床。机、椅子。本棚。


何もかもが悲惨なことになっていた。


「…」(ゴードスさん…どういうことなの…これ!)

いきなり恐ろしいものを見てしまったウィルは脅えてしまった。


心臓の鼓動が激しくなる。


ドクドクと音がする心臓の鼓動。ウィルは多量の汗をかきながらも、我に還る。

(出ないと…!ここから!)

ウィルが飛び降りた瞬間…



「!!!」


何かに掴まれる。


大きな手がウィルの身体を勢いよくつかみ、手ごとウィルを壁にたたきつけた。


「…ガッ…!!」


目の前には赤く光る瞳を浮かべたゴードスの顔。

目の焦点が合っておらず、まるで野獣のような荒い呼吸に、零れ落ちるよだれが床へと垂れ堕ちる。


「…ゴ…ドス…さ…ウ”ァ”!!」

ギリギリと押しつぶされるウィルの身体。


この目は駄目だ。

完全に殺す気でいる。完全に我を失っている状態に等しい。

恐ろしい殺気と、激しい憎悪がウィルを包み込む。


「あ”…あ”…!!っ!ぎっ……!」

意識が薄れていく。




ギリギリと押しつぶされているが…

(おかしい…!彼が本気を出せば僕なんて一瞬でつぶせるはず…!)


徐々に力が増しているが、一瞬でとどめを刺さないのだ。


「ゴー…ドス…さ…僕だ…ウィル…だよ…!!」


(ゴードスさんはまだ…完全におかしいわけじゃない…!)


力がだんだんと強くなる。

「わかっ…分からないの!!?僕や、グロスト!!平和軍のみんなのこと忘れたの!?」

必死で声を出すウィル。


「…グゥゥ…」

小さな唸り声を出すゴードス。



「…ッ…」(駄目だ…もう…声が…!)

薄れる意識の中、ウィルは死を覚悟した。


その時だ。





「ゴオオオオオオオオオ!!!」




轟く方向と共に、壁の向こうから竜人が突き破ってきたのだ。


「グロ…ス…」


グロストだ。

雷を全身にまといながら、抵抗するゴードスと交戦を始める。


「どうしてここがわかったの…?」


「感だ。嫌な予感がしたのだ。間に合ったようでよかった。」

ゴードスの身体を抑えるグロスト。



「ウィル!逃げろ!こいつは以前のゴードスではない!」


「…体が…動かないよ…」

ウィルの体力は限界だった。動くことができない。

「ウィル!」

グロストの身体が白く光りだす。

ウィルを包む光が白い雷の球体を作り出し、そこにウィルを閉じ込めた。


「そこに入っていれば安全だ。話はこいつをおとなしくさせてからだ。」


「…暖かい…」

球体の中には治癒作用もあるようだ。体の痛みが和らいでいく。

グロストの光の力だ。雷は防護用のようだ。




「貴様…どういうつもりだ。平和軍の長たる貴様が何故仲間であるウィルや…平和軍の兵士を傷つける!!」


「ガアアアアア!!」

我を失い暴れるゴードス。

大きな地響きが平和軍の駐屯地を襲う。



グロストではなく、周囲のものを破壊しまわるゴードス。

苦しそうだ。頭を抱え、蹲る姿で、とてつもない温度の灼熱が部屋を包み込む。



「…!」


暴れた挙句、ゴードスは窓のガラスを突き破り、夜空の向こうへ飛び去って行った。



「…ウィル、大丈夫か…!」

ゴードスはゴードスが戻ってこないのを確認し、ウィルの元へと駆け寄った。


「…平気…むしろ元気になったみたい。」

ウィルの傷はほぼ完治していた。

グロストの光の力のようだ。

ウィルを覆っていた球体は解かれ、着地した。


「凄いよグロスト…この力…誰かを治す力もあるんだね…」

ウィルは安心しきった顔をした。


「…しかしこの光は俺自身を癒す事は出来ないらしい。効いていれば…俺も…万全でいられているはず…だ…」

グラッと倒れるグロスト。


「グロスト!」

まだ身体が万全でないのに、また力を使ったからだ。


「ウィルーーー!!」


レイリーや兵士たちが集まって来た。


「ウィル、これは…グロストまで…どうしたというのだ。」

1番に駆け付けたレイリーは困惑する。


「隊長!みんな!力を貸してください!」

グロストは皆の協力で再び自身のベッドへと運ばれた。


「…無理しちゃ駄目だよ…」

「…すまないな…いつも迷惑をかける。」

グロストは力なく言う。


「でも…グロストが来てくれなかったら僕は死んでいた。ありがとう…」

「…」

グロストは小さく微笑み、眠りについた。


「…ゴードスさん…あなたは一体…何故あんな…あんな顔を…」


ウィルは見ていた。

そのゴードスがウィルを押しつぶそうとしているときの、つらそうな顔。そして悲しそうな顔。思いつめた顔。それでいて、何かの覚悟を決めたような面影。

色々なゴードスの心を感じたウィル。


「…信じていますから…僕らは…あなたを見捨てない。だから…」




(何か…わけがあるんだよね…ゴードスさん…)


不穏な夜。静寂な夜が、ただむなしい風が吹き…

まるで、この先に待っている運命の不穏さを語っているような…



何かが起こっている


今までになかったことが…









Episode 27 END



【語り手と語り手の竜】



グロストは不思議な世界、夢世界から帰還し…平和軍の希望として再び戦場に立った。


しかし、このときゴードスはある別のものと戦っていたんだ。






…これから君が知るのは、この戦いの末期だ。



これから起こることは、今までよりも過酷で


そして、残酷な未来が記されている。




ここまで話を聞いてもらって今更かもしれないんだけど。







君はこの物語の終わりを知りたいと思うかい?






…そうか。分かった。おじいちゃん、良いかな?この先はおじいちゃんにとってもきっともっとつらいものだと思う。







ワシは構わんよ…それもまた、ワシ自身が犯した罪じゃ。

それに耳をふさぐことなど出来んよ。









それじゃぁ開こうか。


戦いの終わりへと進む物語の終盤を。





あやつめ…ワシがあの時経験した時のことを詳しく書いておる。

まぁ…それもまた一つの歴史ということか…








さぁ、次のページをめくろう。

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