Episode 24 夢の中で
Episode 24 夢の中で
辺りは真っ暗だ。
自分が何処に居るのかも分からない。
体が軽い。
そうか、俺は死んだのか
真っ暗な空間に投げ出された。
妙だ。全体が見渡せるような気がする。
いや、そもそも俺に肉体が存在していない。
どういうことだ。
思い返せ、俺はどうしてここに居るのかを。
しかし思い出すとそれはとても酷い話だった。
俺は…力にまた振り回されて、そして暴走し、敵の爆発に巻き込まれた。
その後、途方もない激痛が一瞬自分の身に降り注いだところまでは覚えている。
その後、薄れる意識の中、ウィルに…そうだ、俺はウィルに…ゴードスに…兵士たちに…
俺は、とんでもないことを、してしまった。
(クソッ…何故だ…!何故俺は…!!いつも……クッ…)
俺は自分を悔やんだ。
しかし悔やんだ所で、もう手遅れだ。
俺は死んだのだ。
皆を残して。
「まだ終わっていないよ。」
「!?」
肉体が…甦って行く?
腕が動かせる、辺りがはっきり見える
「…これは、どういうことだ…!?」
「僕が君の魂を抜き取って、ここに呼んだ。肉体も精神も、ほとんどをこちらに持ってきた。」
「どういうことだ、お前は誰だ?」
俺は呼びかける。
すると目の前から緑色の光が出現した。
その光はみるみる輝きを増し、人の姿へと変わった。
4枚の羽。大きさは…ウィルより小さいぐらいか…?
なんとも奇妙な…一体こいつは…
「僕の名前はエテルネル…君たちの世界を守る神様…世界の中心を守護しているって言ったら分かるかな。」
「エテルネル…教えてもらおう、俺を何故ここに呼んだ?そして俺はどうなった?魂だのなんだのと…訳の分からない言葉ばかりでは分からんぞ…」
「そうだね。君に分かるように言わないとね。率直に言うと…君はまだ死んでいない。」
「俺は…生きているのか?ではこれは夢だというのか?」
これが夢ならすぐに醒めるまでだ。
こんな所に居る理由など無い。
「うーん…夢、と言えば夢。けど、夢じゃない。」
「…?」
「君の身体は大きな損傷を受けた。このままだと君は命を落とすところだった。だから僕が助けた。でもそのためには君の元の身体が君の魂を受け入れるだけの力を取り戻さなければならない、それは今、君の世界の仲間がしっかり努めているようだ。」
「…つまりだ…俺はお前に助けられたが、すぐに戻ることは出来ないと…そしてここは俺の世界では無い…そう言いたいのだな?」
「そうだね、ここは世界と世界の間にある狭間のようなものだから。」
元の世界にはすぐに戻れないようだ。
…誰かが俺の肉体を治すまでは…ウィル。やはりお前は俺の傍で見ているのか…?
すぐに戻れない悔しさがこみ上げた。
「…お前は先程世界の中心を守護していると言ったな…?お前が世界の支配者ならば、俺の世界を正しき方向に動かすことなど造作もあるまい。何故俺たちの世界を放置する?」
こいつは世界の神のようなもの。
ならば、何故俺たちの世界は血を流さねばならない?
「…それは…君たちの世界の管轄では…無いからだよ。」
エテルネルは言う。
管轄?
他にも神のような存在がいるということなのか…
「管轄…つまり俺たちの世界を管轄する奴が居るんだな?そいつが俺たちの世界をこうしてるのだな?」
「…そうだね、それで間違いは無い。」
「ならばそいつと今すぐ会わせろ。そいつを殺せば世界は救われる。」
「だっ、駄目だよ!それは駄目だ。」
エテルネルは焦りながら俺に言う。
「…管轄している者が死ねば俺たちの世界が滅びる…そういうことか…?」
「…そうだね…そしてこれは僕にもどうすることも出来ない。でも…破壊軍を倒す方法は…無いわけじゃない。」
「…教えろ。破壊軍を倒す方法を。」
俺は問い詰めた。
こいつは破壊軍を倒す方法を知っている。
ダメもとでも吐き出させなければ。
「…少なくとも今の君では不可能だ。」
「何!?」
ならばどうしろと言うのか
段々と怒りが込み上げてきた。
「まずは君の力を最大限引き出せるようにするんだよ。」
「俺の力を…」
「君の魂が肉体に還るのにそんなに時間はかからない。だけど…君は戻れない、今のままでは。戻ったところで結局今の君では同じ目に遭いかねないよ。」
「…」
何も言い返すことは出来なかった。
自分の力が足りなかったから大怪我をした。
自分の過失が招いたけっかなのだ。悔しいが、その通りだった。
「グロスト、君の手で世界を救いたいなら…君の力と向き合う必要がある。」
「…向き合う…だと?」
「君は聞いたはずだよ。君がこの力を受け継いだ時に…声を。」
「声…」
確かに聞いている。
あの時は憎しみでどうにかなっていたが故、力をくれるというのだから、どうせその結果自分が死んだとしてもどうでもいいと思っていたから。
だから自分はリスクも考えずに受け入れた。
あの時の声を…俺はまた聞けるのか?
「グロスト、君が力と向き合う為に必要なことを知るんだ。君の中の光と闇を―――」
「!待てッ!」
エテルネルの姿が消えていく。
「ごめん、もう時間だ…皆が待ってる。」
「皆…皆とはなんだ!俺をこんなところに放置して…お前は俺に何を…!」
「あとは任せたよ。光と闇の子たち。」
「まッ…!」
エテルネルはそう言い、姿を消してしまった。
一人ぽつんと取り残された俺は辺りを見渡した。
しかし、誰も居ない。風も感じない、地面に足がついている実感もない。
ただ、黒く果てしない何もない空間。
「―――くそッ!」
俺は声を出して怒りを見せていた。
ただ治るのを待つだけの何もない時間。
そしてエテルネルが言う意味の分からない言葉。
光と闇と向き合うだと?
くだらん。
それが――なんだというのだ。
―――いや、本当にそうなのか?
俺は思い返した。
かつての暴君だった頃の自分と、ウィルと出会い変わったことを。
俺はただ目の前の敵を滅ぼすだけで良かった。
復讐こそが俺の生きる意味。それ以外は何もいらないと思っていたが故に、何も考えてはいなかった。
だが、今こうやって何も出来ない、何もすることがないからこそ…
俺は、しっかり自分と向き合うべきではないのか。
俺は――――
(グロスト!)
(グロスト。)
((グロストさん!))
目を閉じると浮かぶ、ウィルやゴードス、そして兵士たちの顔――
そうだ、俺はもう、1人ではないのだ。
だから、知らなければならない。この力の秘密を。
この力を100%自分のものにするために、俺に必要なことを。
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意識を今、この場の状況に委ねる。
きっと何か起こるはずだ。エテルネルの言うことが本当ならば……光と闇の子…とやらが俺の前に現れるはずだ。
しかし…過るのは悪いことばかりだ。
静かで、暗くて、孤独。
こんな場所にじっとしていると、良くないことばかりが頭を過ってしまう。
俺にあらゆるビジョンが甦る。
「俺は…また…」
自分の中にある光が消えていくのが分かる。
全ての光がグロストの中から消えていく。
残っているのはグロストの負の感情。つまり闇だ。
「……俺は何をしていたのだ…初めから…この戦いは、無謀だったのか…?」
何をしても制御出来ない力
手を差し伸べてくれる者が居ても素直にもなれない
兵士たちの声にも耳を貸さず、ゴードスの言葉にも耳を傾けない。
そうだ、アイツらは臆病者だ。考えてばかりでは、逃げてばかりでは何も変えられない。ならば俺が道を切り開く。俺が俺を信じて戦った。
だが…結果はこのザマだ。
結局敵を刺激し、大爆発を引き起こし、俺は大怪我を負って…兵士たちもただでは済まなかっただろう。
傍に居たゴードスとウィルにまで危険な目に合わせてしまった。
大見栄を張った割に、俺は…何も出来ていないではないか。
「俺は…今まで何をしてきた…?」
自分は何をしていたのだ。これまで、ずっと。何を…?
何かを変えられたか?
否、何も変えられていない。それどころか…俺は今までどれだけの自己中心的な戦いをしてきたのだろう。
「俺は……あの幼き日、母と共に死ねば良かったのではないか?力など、受け取らず…あそこで全てを終わりにすれば良かったのではないか?」
自分の存在すらも拒絶したくなるほどの絶望を感じる。
「俺は無力だ…復讐の刃を振りかざしても何も変えられん…」
目の前にウィルやゴードス、元の世界の仲間たちが浮かんだ。
いや、本人たちではないがその姿が目の前に現れたように見えた。
「ウィル、ゴードス…俺は……駄目だ。これ以上はもう進めない…馬鹿な話だろう?俺が今までしてきたことは全て無意味だったのだ…どんなに身体を鍛えても、どんなに誰かを信じたくても完全に信じることが出来なかった。終わりだ…もう、何もかもが、終わりなのだ…」
(本当に、そう?)
「あぁ…」
(本当に?)
「……」
(分かりやすいな。)
「…聞き覚えのある声だな…」
ウィルとゴードスの幻影が消え、その後目の前に現れたのは、紫色の光と、白い光。
(久しぶりだな。実に40年以上ぶりか?)
(ええ、そのぐらいになるかしら。)
「…あの時、俺が…力を得た時の…」
完全に消えてしまったと思っていた。
だが、こうして彼らは再び俺の前に姿を現したのだ…
Episode 24 END




