表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/38

Episode 16 知るために、背負う覚悟と決断

Episode16 知るために、背負う覚悟と決断









(おい、聞いたかよ)


(あぁ、聞いた。)



(マジかよ…)

(有り得ないよなぁ…)










「…どこもこの話でもちきりだなぁ…」




とある日の夜。


軍全体にある伝達が伝わった。





それは平和軍始まって以来の展開であり、平和軍始まって以来の大混乱を軍の全兵士たちに陥れることとなった。


「…そうか…それほどまでに…」


「うん、やっぱり皆驚いてる。……不安がっている人がほとんど…だった。」




平和軍本部の傍にある小さな森の奥。


時刻は陽が沈んだ夜の事。


そこに居るのはグロストとウィル。



「…無理もない。だが…」


グロストとウィルはある話をしている。


それは…


「俺が将軍になるなど…俺自身が最も驚いている。」


グロストの将軍の話だ。

グロストは、ウィルと出会い、そして人を助け、今までにない、いいや、今まで忘れていた感情を少しだけ蘇らせた。


それは“優しさ”だ。

不器用な優しさではあるが、かつて昔、破壊軍に全てを奪われていなかったあの時代。

まだ幼く、母の為に一生懸命だった姿が約40年ぶりに甦った。



しかしずっと忘れていた感情だ。

すぐにどうしていいかも分からない。

そして、これが本当の自分なのかもわからない。



この恨みも、憎しみも。

そして優しさも


全てが自分だというのか、それも分からずに苦悩した。



これらの苦悩に対する答えを見つけなければならない。将軍になり、人の為に動く立場になれば、何かが変わるかもしれない。

そして、自分の持つ光と闇の力を制御するヒントも見つかるかもしれない。


あらゆる要因に苦悩しながら、出した結論が、将軍になる。

ということだ。


「誰かの為では無い。自分の為だ。」


グロストは今は自分のことでいっぱいのようだ。

「そうだね…今はそれでいいと思うよ。」

ウィルも感じていた。


グロストが将軍になることで、きっと変わると。

ゴードスにも確信があるようだ。指名をしたのは彼だ。彼にも確信があるのかもしれない。


今のグロストならば。







「そういえばグロスト。」


「なんだ…?」


少し不快…そうな顔。

ウィルにはすぐ分かった。

これは不快ではないと。


苦悩している顔だ。


「…ううん、なんでもない。」



「…おかしなやつだ」


「そうだね、あはは…僕、戻るよ。」

ウィルは森に出ようとする。


「…」

グロストは何も言わなかった

ウィルは去り際に言った。

「何かあったら僕に言って。僕じゃ何の力にもなれないかもしれないけど!それじゃぁね!」

ウィルは走って行った。


----------------------------------------


「……これで良かったのかのう。」


「うーん…どうなのでしょうか…でも…」


ウィルはゴードスの元に来ていた。


「僕は信じたいです。グロストならきっと出来ると。もちろん、僕も支えます。彼1人だけになんてさせません。」


「そうじゃの。ワシも協力を惜しむつもりは無い。問題は…他の兵士たちじゃ。」

「…そうですね、今、軍はグロストの件でいっぱいです。不安な人が…ほとんどです。」


「そうじゃろうな、彼の悪評はワシもよく知っておる。故に、ワシにも不安が無いわけでは無い。」

ゴードスは腕を組み、考えている。



「…奴も考えていることじゃろう。ワシらも考えてみよう。」

「そうですね、ありがとうゴードスさん。忙しいのに。」

「気にするな、お前さんのカウンセリングみたいなもんじゃ。」

ゴードスはニコッと笑いウィルの頭のポンと軽く叩いた。

----------------------------------------



「ウィル、グロストの話、聞いたよな。」

「えっ?うん。」

「ま、そりゃそうか…お前はずっとあいつと一緒だもんな…」

「そうだよな。」


ウィルの周りに兵士たちが集まって来る。



「どうなんだウィル」

「グロストはどんな感じなんだ」


「えーっと…」

ウィルは最近グロストのことを毎日よく聞かれている。


グロストが将軍になる。

この事実が伝わったからにはウィルはすっかりグロストの情報を提供してくれる人として通っている。


「グロストも、悩んでる。」

ウィルは周りの兵士に言う。


「グロストは将軍になることで、グロストの中の何かが変わるかもしれない。」


「うーん…」

「…ホントか?」


(…まだ信用性が無い…)


「…信じてあげて欲しいんだ。すぐには無理かもしれないけど…」

「うーん…まぁ…考えとく…」

「そうだな…まぁ…うー…」


----------------------------------------


グロストが将軍になる日まであと1日。




次の日の朝からグロストは将軍となる。



こういう時は前夜祭か何かがあるのが鉄板だが、もちろんそんなものはありもしない。

人がそろそろ静まる夜。


「グロスト、いよいよ明日だね。」

ウィルは変わらずグロストの元に来ていた。


「…あぁ。」


「…やっぱりまだ迷いがある?」

「やっぱりとはなんだ…俺は迷いなどない!」


グロストは強気で言う。


「分かりやすいよ。グロスト。」

「ム…フン…」


「…グロストでも自分の立場が変わると何か変えようとするんだね。それもまたグロストの本当の姿の1つなのかもしれないね。」

ウィルの言葉はグロストの胸によく刺さる。


「…俺の姿…」


「ねぇ、前にゴードスさんに聞いたんだけど、将軍になったら、マントを託されるんだって。」

「…あぁ…そういえばあいつはマントをしているな…あれか…」


「うん、あのマントには意味があって…」

ウィルはこれから将軍になるグロストに託されるであろうマントについて教える。


「あのマントは“覚悟のマント”…そう呼ばれているんだって。」

「覚悟のマント…?」


「軍を率いて戦う者たちの覚悟が刻まれたマントって言われてる、今まで先代の平和軍将軍たちが引き継いでいったものなんだって。刻まれた覚悟はもちろん人によって違うみたいだけど…」

「…覚悟…か…まさに、今が…その時なのかもしれん…」

「グロストの覚悟は…どんな覚悟?」


ウィルは聞いた。


「…それが分からない、知るために…本当の自分を、そしてこの力の全てを知るために俺は将軍となる。それ以外の事は何も知らないし分からない…」


「そっか…ねぇグロスト。」

グロストは何も言わずにウィルを見た。


「それもグロストの覚悟だよ。知る為に将軍になる覚悟。誰かの事とか、平和の為とか…そういうのは後からでもいいじゃないかな。きっといつか…それは知ることになるよ。きっと。」

「…」


「それに、僕は君の為ならどんなことでもやるつもりで居る。ゴードスさんもきっと協力を惜しまない。君はもう…1人じゃないからね。」


「1人では…ない…」


「そうだよ、僕は…たとえグロストが皆から恐れられていても、敵に回ったとしても…ずっと味方でいるから!だから…グロスト!」


「…もう良い。分かった。」

グロストはウィルの頭をポンと叩いた。

「…今日はもう戻れ。明日は早い。」

「…うん。」


ウィルは名残惜しさを抱えながら去ろうとする

「ウィル…」


「…」

グロストが去り際のウィルに背を向けたまま言う。


「…世話をかける。すまない。」


「…!ううん、気にしないで。また。」


「……」






(グロストからあんな言葉が出るなんて…)



ウィルは驚いた。


きっとグロストなら大丈夫。その言葉はその確信が持てたグロストの一言だった…



(出来るよ…僕も付いてるから…安心して…)



---------------------------------------





早朝、グロストはゴードスに呼ばれた。


「お前さんに渡すものがあっての。」


「…マントか?」

「んん?知っておったか。さてはウィルから聞いたな?」

ゴードスはニヤリと顔を緩ませた。


「…あいつが勝手に語りだしたのだ…」


「ほんとかの?」

「…焼き殺すぞ。」

「まぁまぁ。ホレ、着てみぃ着てみぃ。」

わりと煩雑に扱うゴードス。


ウィルから聞いた話はかなり大事そうに扱われているイメージだったので、ここまでズボラに扱われると妙な気分だ。


「…大事なものではないのか、煩雑だな…」

「覚悟のマント。そう呼ばれておる。じゃが…」


グロストはマントを装備しながら話を聞く。


ゴードスはニッと笑いこう言った。



「そんなものはクソ食らえじゃ。」

「……」


こいつは本当に平和軍の長なのか。

歴代ずっと受け継がれて行ったものを全て台無しにするような発言だ。


「覚悟とは、危険なこと、不利なことでも受け止める心構えをすること。じゃがそんなもの、お前さんはとうに出来ておるじゃろう。今更覚悟もクソもないわい!」


グロストの少しずれたマントを直しながらゴードスは言う。



「…今お前さんに必要なのは覚悟ではない。決断じゃ。」

「決断…」


「決断とは、意志をはっきりと決定すること。犯した罪も、過去も全て糧とし、、己のするべきことを決めるのじゃ。」

「…」

グロストは黙って話を聞く。



「そしてそこにお前さんの覚悟を合わせるのじゃ。犯した罪も、過去も全て糧にし、己のするべきことを決定し、そしてこれからの未来に起きることを受け止め、立ち向かう。それが出来れば本当のお前さんが見つかるはずじゃ、そしてお前さんの本当にしなくてはならないことも…な。」



「…まだ時間がある。少し1人になって考えてみぃ。じゃが、朝正式に表明する儀には遅れるなよ。」










グロストは森へ戻った。

まだ時間がある、グロストはマントを装備したままだ。

なんだか落ち着かない様子。


「…俺に必要なこと…俺の…するべきこと…」



グロストの脳裏に浮かぶのは、ウィルやレイリー。

あの時自分の怪我を直してくれたサイノ。そしてゴードス。母。


(俺はどうしたい…?将軍としてではない…俺がどうしたい?)


グロストは思い出していた。

ウィルが何年間も自分にしてくれたこと。


兵士が傷を癒してくれたこと。


ゴードスが与えてくれたチャンスや言葉。


それらは皆がグロストの為にしたことだ。

決して下心のない真っ直ぐな気持ちを皆がグロストにぶつけてきた。


「…これが…忘れていた暖かい気持ち…本当にずっと……忘れていたのだな…」


グロストはこれらの事に温かさを覚えた。



「……そうか…俺は…俺はあいつらにたくさん貰っていた………ならば…俺はそれに応えるべきだ…いや、応えたい。」

グロストの何かが変わった。




「…俺は、俺のやり方で将軍となってみせる。」


グロストに覚悟と決断が生まれた。


儀の時はすぐそこだ。





日差しが昇り、朝日照りつける時。

兵士たちは本部の前に集まった。ウィルも後方支援隊メンバーとして兵士に交じって並んだ。


「…グロスト…頑張って…!」

ウィルは願った。グロストの姿。誰もが脅えていた彼の将軍としての時間が始まろうとしている。その儀でなにも起こらぬことを信じて。





「皆の者、おはよう、本日から前から言っていた通り、グロストを平和軍2人目の将軍として任命する。」

ゴードスが現れ、その後ろから現れたグロスト。


風によりバサバサと靡く赤い髪と、灰色のマント。

実に貫禄のある巨体の竜人が今、皆の前に立った。



「ではグロスト、皆へ。」

グロストの言葉だ。

ウィルはグロストの語ること。必死に耳を傾けようとする。


(グロスト…!)










「……我は…平和軍将軍……グロストである。」





「我は今まで自分の為、復讐と憎しみの為に力を振るった。そしてその中で多くの平和軍兵士を巻き添えにした。」


グロストは下を向き、胸に手を置く。

兵士たちの表情は曇っている。仲間をたくさん殺したのだ。当然だ。


「だが…そんな我に付きまとう大馬鹿者が居た。」


顔をあげるグロスト。

その目はとても覚悟に満ちた目。そして決断をした目をしていた。


「そいつは我に忘れていたものを蘇らせてくれた…」

兵士の一部はウィルを方を見た。


「今までことを許せとは言わぬ。恨むのならばそれで良い。我はそれほどに愚かな行為をした。」




「だが、我は決めた。我は必ずこの世界に平和をもたらしてみせよう…!それが我に出来る唯一の償い…様々な優しさを受けた我が応えられることだ。」


グロストから伝わる覚悟と決断をした目に、兵士たちは真剣に耳を傾けようとしていた。


「我は将軍として貴様らの命を全て背負い、戦う。そして我の背中を貴様らに委ねる。」

今までのグロストから絶対に放たれることの無い言葉が次々と兵士の心を惹いてゆく。


ざわざわとしてきた兵士たち。

「ほ…本当に…グロストなのか」


「なんだか分からないけど…でも、グロストさんの覚悟…伝わった気がする。」

「あぁ、俺もだ。」

「今までのこと、水に流すわけじゃない。けど、これから…何かが変わるかも。」


兵士たちにも希望が生まれていた。グロストの覚悟に引き込まれてゆく。

ウィルも兵士たちの心が変わって行き、嬉しそうに辺りを見渡した。

そしてついつい…


「グロストーーーー!!!」

ウィルは喜んで叫んだ。



グロストはカッと目を開け、腕を組んだ。

バサバサと靡くマントと共に口を大きく開ける。


「これ以上!破壊軍の好きにはさせん!!我は必ずこの戦争を終わらせることを誓おう!貴様らも同じ気持ちであるならば…


我に命を預けよ!

我の背中は貴様らに任せよう!



…この戦いに勝利するのは…



我々平和軍である!!!!」






その咆哮とも言える声は兵士の耳に届いた。

「わ…」








「「「「ワアアアアアアアアアアアア!!!」」」」




大きな大歓声が響いた。

皆の士気が大きく高まる。


グロストの覚悟と決断はしっかり兵士の隅々までいきわたったようだ。


今までの事が許されるわけではない


穴埋めをすることも出来ない。

だがこれがグロストに出来ること。

その償いもまた、グロストの覚悟なのだ。


「我に着いてくる覚悟はあるか!!?」


「「「「「オオオオオオオオオオ!!」」」」」


「ならば決断し、着いてくるが良い!その先がたとえ地獄でも構わぬのならば!!」


「「「「「「ワアアアアアアアーーーー!!!」」」」」」


今はただ、不器用ながら今の心を伝えよう。


きっと最初はうまくいかないだろう。

その時、もうグロストは一人で抱えることはないだろう。


こんなグロストにも、多くの仲間が今、集っているのだから。


「ウィル、これがお前の目指したものなのだな」

レイリーはウィルに言う。

「いえ、これからです。これから…僕たちで築いていくんです。」

「…そうだな。私も…グロストを信じてみることにするよ。」

レイリーは隣にいたサイノと目が合い、二人は頷いた。


「信じよう。」

「あぁ。」




グロストの変わる為の、そして明るい平和へ向けての戦いが、ようやく、始まったのだった…



Episode 16 END





~語り手~




…こうして、グロストは様々な苦悩を受けて、ついに将軍になったわけだね。


自分の中にしまいこんでいた優しさが甦り、本当の自分が見えなくなっていた彼の心のピースが少しずつ埋まってきているのが分かるよね。


そして彼は自分の優しさと同時に、誰かがグロストにしてくれる優しさを知った。

その優しさを自分はどう受け止め、どうすればいいか。その答えを彼の優しさが教えてくれた。


“これからの苦悩、痛み、悲しみを受け入れ、未来を切り開く覚悟”と”罪や過去も糧とし、自分のすべきことをするという決断”をしたグロスト。


グロストはこれからもたくさん苦悩をしながら平和と、軍のため、そして自分のために戦っていくんだ。

全てを背負うのは彼だけじゃない。

彼だって一人じゃない。


ウィルやゴードス。そしてグロストの覚悟と決意を受け止めた平和軍の兵士たちが居る。


もうグロストは…一人じゃないんだよ。








って…





おじいちゃん!!?

寝てるーーーー!?


起きてよー!今すっごい良い所だったのにいいいいいいいいいっ!!!!





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ