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Episode 14 答えを見つける為に

Episode 14 答えを見つける為に








あの日から彼は誓っていた。


この力を、この命を、ただ復讐の為だけに使うことを。

しかし、今彼の心は、光を帯びようとしている。


その光は



“まだ完成されていない光”だった。







「ウオオオオ!!」


ウィルが見たグロストは、白く光を帯び、そして白き雷を纏っていた。


今まで、真っ黒な雷、真っ黒な光を帯びた姿しか見たことが無かった彼にとって、この時のグロストは違う人物にまで見えるぐらいだった。


破壊軍の団体攻撃を受け、血を舞い散らしながらグロストは破壊軍を順番に倒していく。


「ガッ!…ガアアッ…!ゴアアアアアア!!」


激しい咆哮と共に乱れ飛ぶ白い雷は破壊軍を焼き払った。

その雷は鎧ごと全てを焼き尽くした。


「…ハァ……ハァ…」

破壊軍が消え、グロストはガクッと膝を付いた。

帯電している雷がバチッ、バチッと音を立てて散る。



その場にいた後方支援隊の人たちは動こうとしなかった。

「彼を…はや…く…!」

ウィルは訴えた。


周りの人々は脅えていたのだ。

グロストに近寄れないのだ。


「どうして…グロストは…!」


「…ハァ…ハァ…もう…良い……大丈夫だ………」

ウィルが訴えようとするが、グロストはそれを止め、フラッと立ち上がった。


そしてグロストはウィルの胸に手を当てた。

「……お前は…一体何なのだ…!俺の心をいつもかき回して…いい加減にしろ。」


「ごめんね…でも…どうして……どうして来てくれたの…?それにあの白い…雷は…ウッ!」


「…喋るな。今は治療をせねばなるまい。」

ウィルは顔色が悪い。このままでは死んでしまう。



「…並みの治療では助からまい…少々荒療治となる、それでも良いか。」


「…」

ウィルは静かにうなずいた。


「……ハッ!」

ウィルに突き刺さる剣を右手で抜く。

「あぐっ!」

「ムンッ!」


「あああっ!!!」

グロストは出血する前にウィルの傷口を雷で焼いた。

「ぎっ…あっ…ああぁっ…うあああああああああっ!!!!」

焼けるように熱く、死んだ方がマシなぐらいに激しい痛みがウィルを襲う。


しかし傷は塞がれて行く。


「…よく耐えた。」


「八ッ…ハッ……」

ウィルの傷口は焼かれて塞がれた。

ウィルは声には出さないが、顔で示した。


“ありがとう”と。


「…ウィル…お前は…本当に…」


レイリーはその現場を見て言葉がこれ以上出てこなかった。

本当にグロストと心を通わせたのかと、信じられなかった。



「…何をしている、これは応急処置でしか無いことぐらい分かるだろう。さっさと治療をしろ。他の怪我人もだ。」

「…あっ、ああ…」

レイリーはグロストの声で我に返り、周囲の兵士たちに指示を出した。


「フン。」

そしてグロストは去って行った。



「…あいつ…人を助けた…あんなに人を殺すことを躊躇わなかったのに…」

後方支援隊のメンバーは驚きを隠せなかった。

あのグロストが人を助けた。


この噂はたちまち広まった。





そしてグロストが発した白い光と白い雷。

こちらもまた軍の細部まで通じた。

無論、ゴードスの元にも通じた。


「…ここにおったか。」


「…お前か…何の用だ。」

小さな森の奥。

グロストはいつもの場所で力を試していた。


しかしこの時の雷は黒い。時々白い雷が混ざるが、これは今までと変わらない。

あの時の白い雷は再び消えていた。


「お前さん、ウィルを助けたようじゃな。礼を言うぞ。」

「気まぐれだ。」


グロストはそれだけ言い、再び修行を始める。


「……白い光はもう出んのか?」

「……」

グロストは何も言わずにいる。


「お前さんの力は本当に謎につつまれておるな。しかし…お前さんはウィルと出会い、ちと変わりつつあるようじゃ。お前さんは自覚は無いかもしれんがの。」



「用件を話せ。」


「ちっとは小話にも耳を傾けんか。」

「早く言え。」

「つまらんのう。」

やれやれとため息をつくゴードス。


「ウィルの容態があまり良くない。出来る限るの治療はした。あとは本人次第じゃ。しかし…今日が峠かもしれん。」

ゴードスはグロストに、ウィルの状態を告げに来たようだ。

「…だからどうした?」

「なんじゃと?」

ゴードスの顔が変わる。



「だからどうしたと聞いている。」

「お前さん…彼がどうなっても良いというのか?」


「……構わん。あいつは俺の心をかき乱す。ここで死ぬならばそれも……」

ゴードスは魔法を放った。

灼熱の火球がグロストの頬をかすって宙に舞い消えた。


「何のマネだ」


「そのような言葉は許さんぞグロスト。彼はお前さんの心を開かせようとした。お前さんの心が開きそうだからこそ、後方支援隊へ向かったのではないのか。」

ゴードスは眉間にしわを寄せる。


「気まぐれだ。意味は無い。」

「そんなわけがなかろう。これ以上嘘を付くのはやめるのじゃな。」


グロストの拳がゴードスに飛ぶ。

ゴードスはそれをしっかりと受け止めた。

「…認めるのじゃ、グロスト。お前さんにはウィルが必要なのじゃ。」


「…俺は…誰にも頼らん…!」

拳が震える。


ただ拳を出し、それを受け止めているだけであっても、大地は揺れる。

「…よかろう、もう何も言わん…じゃがよく考えるのじゃグロストよ。お前さんがウィルにしたこと、そしてウィルがお前さんにしてやったことをな。」


ゴードスは拳を離した。

そして森を出ていく。

去り際にゴードスは

「お前さんにもかつてあったはずじゃ。愛する者に捧げた優しさがな。」


そう言い、ゴードスは去った。


グロストの心は大きく揺らいだ。

どうにもならなくなり、その拳を木へ向けた。音を立てて倒れる。



「…俺は…あいつを必要としている…?」





重傷を負った兵士が眠る場所が平和軍にはある。

ウィルはそこで絶対安静だ。

意識は戻らない。

このまま死んでしまう可能性もあった。


他の後方支援隊のメンバーもウィルを見舞うが、ウィルは目覚める気配を見せない。




その日は陽が沈むまで何事も起こらず、夜が始まった。



夜は破壊軍が出ない時間帯。

平和軍兵士が唯一落ち着けるのは太陽が沈んでからなのだ。


どんちゃん騒ぎの平和軍兵士たち。

酒を交わす兵士たち。



それでも重症の兵士が眠る場所は静かだった。


後方支援隊の兵士が見守る中、生死を彷徨う兵士たちが眠る。




すっかり月が昇った深夜。


「……ひっ!」


「黙れ。」


「な、何か…?」

「通せ。顔を見たい奴がいる。」

「こ、殺すなよ…!」

「早く通せ。」

「あ、あぁ…」



ウィルはまだ眠っている。


その傍に1人の影。


「…」

グロストだ。


グロストは深夜、人気の無い時に、ウィルに会いに来たのだ。


(…俺は何をしている…?俺は何故こいつに会いに来た…?)

グロストも分からなかった。

どうでもいいはずなのに、来てしまった。



(…俺は…やはり…こいつを…認めようとしてる…?いいや、そんなはずは…)


苦悩するグロスト。

かき乱されるグロストの脳裏はゴードスの言葉までもが混ざり込む。



【お前さんにもかつてあったはずじゃ。愛する者に捧げた優しさがな】



(そのような優しさはとっくに…捨てたはずだ…)


答えは出なかった。

ここに居てもしかたない。グロストが戻ろうと出口に向かおうとしたとき…奇跡が起きた。


「…グロスト……」

グロストは振り向いた。

ウィルの声だ。



「……何故分かった」


「…分かるよ…グロストの足音、グロストの呼吸の音もグロストの匂いも分かる。」

「気持ち悪いぞ。」

「えへへ…ごめんね。」


「…分からない…俺は分からないのだ。何故俺はお前を気にしてしまうのだ、何故俺はお前を助けたのだ…何故俺はお前の元に来たのだ…」




「…ごめん。僕が君をたくさんかき乱してる…」


「…………」


分からない。

複雑だ

だからこそ知らなければならない。

グロストはそう思った。


ならば決断は一つだ。

もう決めるしかないのだ。


ウィルの為では無い。

自分の為に。


「…お前と居ればその答えが分かるかもしれん…さっさと治せ。」

グロストはそれだけ言い、去ろうとする。



「…グロスト……」

ウィルは言う。

少し嬉しそうな声だ。


その後に聞こえたこの言葉は力の無い嗚咽と共に聞こえた。





「ありがとう」







ウィルは山を越えた。


グロストが来たことはもちろん知られていない。

それもそのはず、当時そこを監視していた後方支援隊の兵士には、攻撃的に口止めをさせたようだ。



それから1週間。

傷が癒えたウィルはようやく軍に復帰することが出来た。


そしてグロストと再会したのもここだ。



「…グロスト。」


「…遅いぞ。」

「あはは…ごめんね。」


グロストはあっさりとウィルを受け入れた。


「グロスト、改めて。助けてくれてありがとう。それと…見舞いも。」

「見舞い?何の話だ。」

「え?」

「そのようなことは覚えていない。」

「おっかしいなぁ…」


(…そうだ…あれは見舞いなどでは無い…)


ウィルはグロストのすっとぼけにも気が付かずに、夢だったのかなぁと首を傾げる。


「でもグロスト…僕は君の心をかき乱してる…だけど僕はここに居てもいいの?」


「……構わん。俺はお前のことをもう拒否しない。だから好きにしろ。」


「…ありがとう!」

ウィルは嬉しくてグロストの身体に飛びついた。

「なっ…!はっ、離れろ…!」

「…」

ウィルはグロストの足に触れたまま下を向いている。

身体が震えている。


「…っ…く…グロスト……ありがと…ありがと…っ……」

ウィルは涙を流した。


やっと受け入れてもらえた嬉しさ。


ウィルは今までずっと堪えて来たものを全て脱ぎ捨てた。


ずっと溜めてきた涙を今、全て流した。


「……今回だけだぞ…」

グロストはウィルが泣き止むまで、ウィルの傍に居続けた。






グロストはまだ悩んでいる。

ウィルに対して、自分がどうすればいいのか。

その答えが、分かるときが来るかもしれない。


こうやって一緒に居れば……



Episode 14 END


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