Episode 12 グロスト、揺れる心
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※10話、11話のグロスト視点
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あの復讐を誓った日から、ずっと1人で戦ってきた。
ずっと1人で居ることを望んだ。
そしていつしか俺は誰も寄せ付けなくなっていた
いいや
仲間など必要ない
そう思った
俺1人で破壊軍など絶滅させてやる…
そうだ
誰も頼らずともこの平和軍に居れば、好きなだけ破壊軍を殺せる
それでいい
さぁ来い破壊軍
俺が殺してやる…!!
破壊軍と戦い、殺し、それが俺の快感であり、生きる意味だ。
実に心地よい闇が俺の心を躍らせる。
鉄の破片と周りの雑魚平和軍共の真っ赤な血、そしてまとわりつく黒い灰。
これらに囲まれて戦って居る時がたまらなかった。
己の気持ちの行くままに殺す。
俺の憎しみは何千人殺しても消えることはない。
スベテハカイシナクテハナラナイ
殺さねばならない
そんな俺の時間をあいつは奪う
「…あいつは…何だったんだ…?」
突如俺の前に現れたアイツ…
名前は確か…ウィル。
人間の後方支援隊所属…
後方支援隊だと…?
そんな戦いもしない奴が俺に何をしようと…?
俺を救いたいだと…?
「ふざけるな…」
俺に救いなど必要ない。
俺はただ破壊軍を殺せればそれでいいのだ。
「グッ…オオッ!!」
俺は地面にひれ伏した。
また“アレ”が起こったのだ。
最近…1年ほど前からだったか。
今までの俺は、力を使いすぎると身体が動かなくなる程の激痛と戦う日々を送っていた。
だが、それだけでも大変だというのに、そこに更なる要素が襲い掛かってきたのだ。
「…グ…オオッ…!!オオオオッ!!」
定期的に起こる現象。
体内から雷が体外に大量に放出され、いてもたっても居られなくなる。
「グアアアアアッ…!」
噂を聞いたところによると、この時の俺は目を真っ赤に光らせて、まるで逆鱗に触れたドラゴンのように暴走し、暴れ回るらしい。
“らしい”というのも、もちろん気が完全に何処かへいってしまうので自分では状況を把握できなくなるのだ。
3日に1回はこれが起こる。
これが起こりはじめたきっかけは…ゴードスだ。
あいつが言ったのだ…
(お前さんの憎しみの心の裏には何がある?誰かを思い、信じ、愛する気持ちを自ら闇に閉ざしてはおらんか?)
俺を呼び、語りだしたゴードスの言葉。
俺の心は大きく揺れた。
とっくに忘れた感情が甦ってきたのだ。
今や昔の母と過ごした日常も。
キエロ
キエロ
何度も封印しようとした。
しかし生物とは腹が立つ生き物だ。
一度起こしたものはなかなか隠れようとしないのだ。
誰も…
俺の心を揺さぶるな…!!
心の揺さぶりは俺の雷を
俺の光闇の力を狂わせる
これが何を意味しているのかは分からない。
だがその力の暴走が戦いに影響を及ぼすことは珍しくない
気が付いたら全身が傷まみれになったまま立ち尽くしていることもあれば、身体に破壊軍の鎧が抱えられていたり、真っ黒な破壊軍の灰が全身に蔓延っていたり…
しかしこの揺さぶりはもう一度心を闇に閉ざすことで収まった。
しかしそこで“あいつ”が現れた。
「君を助けたい」
俺を助けるだと?
明日も来るだと?
貴様も…貴様も俺の心を揺さぶるか…!
俺の邪魔をするならば許さない
死ぬほど痛い目に合わせて二度と姿を現せないようにしてやる…!!
しかし、この時俺は1日徹底的にすればもう来ないだろうと思っていたのだ。
「こんにちは」
「また来たよ」
「ごめんね、また来た。」
「おはよう、今日の調子はどう?」
毎日だ。
毎日あいつは来るのだ。
「来るな…と言っただろう。」
「ごめんね、でもっ」
「帰れ…!」
「ぼく…はっ」
「帰れッ!!」
「きみ…にっ…」
「グッ…オオオオオオオ!!」
何度も武力行為で追い返した。
毎日、毎日。
力の支配の為、肉体を強化せねばならないのに、何故こいつは邪魔をする
目障りだ
そんな細くて弱い身体で何が出来る?
俺に何を出来る?
答えは“無”だ
それなのに奴は向かってくる
俺の前に立ち、俺と話そうとしてくる
俺の前に立ちはだかり、俺を変えようとしてくる
もううんざりだ
1週間も経てばそう思うようになっていた。
だが奴は何度追い返しても向かってきた。
気が付いたら1年も経っていたのだ
俺の心はもはや折れそうだった
うんざりだ。しつこい。
「…こんにちは、グロスト。」
「…いい加減にしろ。」
あの最初の日から1年。
365日、あいつは俺に声をかけ続けた。
元より心を許すつもりなどは無い。
だが
なんだ…こいつの恐ろしいまでの執着心は…!?
「ごめんね、それでも僕は…っ!」
まずは頬に拳を与えた。
いつものことだ。
もう容赦しない。
殺してやろうか
何度もそう思ったが、今度こそ限界だ。
もう終わりだ
しかしこいつは笑顔を絶やさない。
「ごめんね。でも僕は君に…変わっ…変わって欲しくて…」
同じことをこいつは伝えようとする。
俺は何度もこいつを殴った。
「……何故だ!貴様っ!貴様はどこまで俺を困らせる!?」
首元を掴んだ。このまま絞め殺してやろうか…!
「ぼくは…きみを…た…す……けたい…だけ…だ…よ……」
上手く喋れなくても伝えてくる…何度でも
何度でも
「来るなと言っているだろう…いい加減にしろ。」
俺はこの小さな体を地面に叩き付ける。
こいつは起き上がる。
「君の苦しんだ顔もいつもの苦しさだ」
こいつは何度も立ち上がり俺の前に立ち続けた。
「…去れ。」
「出来ないよ。」
傷だらけの張れた顔でニコッと笑う。
命がけでこいつはは俺に向かってくる。
また心が揺れる。
この感じは…
(グロスト、あなたは優しい子ね。)
(グロスト、あなたは一人では無いわ。私も居る。私がいつか死んでもあなたを助けてくれる人が居るわ。)
(グロスト!生きなさい…!)
脳裏に浮かんだのは、母の声だった。
とっくに忘れていた人の優しさや思いが俺の心を強く揺らした。
俺の拳はウィルを殴ることを止めた。
その行先は
「グッ…オオオオオオオオ!!!」
グロストの咆哮がウィルの身体をぶるぶるっと震わせた。
だが、その行先は…地面だ。
「…答えろ…」
「…グロスト…」
「答えろ…!貴様は何故俺にここまで付きまとう…?理由を聞かせろ…聞いてやる。」
しかしこいつが執着するのは何故だ…?
俺は聞いた。
聞かねばならないと思った。
するとウィルはこう言ったのだ
「誰かが苦しんでるのを助けるのに理由なんていらないよ」
「僕は君を助けるきっかけになれるなら死んだって構わない。でも僕は死なない限り、何度でも君に立ち向かう。何度でも君に会う。何度でも君に殴られる。」
…あぁ
こいつは殺さない限り何度でも来る
しかし、もうそんな気にもならん。
俺はもうこいつの好きにさせておこうと思ったのだ。
「…もういい…分かった。もう何も言わん…」
「…グロスト…!」
…なんて嬉しそうな顔をするんだ…
だが俺はこいつの言いなりになるつもりはない
ただ、あまりにもしつこいから野放しにしておくだけだ。
「だが俺は貴様に心など開くつもりもない。ここに来るなら好きにしろ。だが俺の邪魔だけはするな。絶対だ。」
「…あ、ありがとう…!グロスト…!」
涙を流してお礼を言うウィル。
「……だが…今日は去れ…」
「…分かった…グロスト、また明日ね。」
“また明日”
なんと不愉快な言葉だ。
はらわたが煮えくり返る程に腹が立つ。
だが何だこの腹がグルグルと回るようなこの感覚は…
その違和感を感じた矢先”あれ”が起こった。
「…ッ!?」
身体に今までに無い激しい痛みが俺を襲った。
「ア”ッ”…ア”ア”ア”ア”ア”ア…」
身体から放出されていたのは、今までに見たことの無い雷の色をしていた。
それは真っ白な雷だ。黄色にも染まらない白い雷。
似たような雷を見たことがあるが、それよりももっと白く、透き通った雷が大量に身体から放出された。
心臓をギリギリと握りつぶされているような激しい激痛に立っていられずにただもがいた。
目を大きく開き、多量の汗を流した。
「グッ…ガッ…オオオ……ハッ…アアア…」
放出された雷は地に、空に拡散された。
ウィルは3日来なくなった。
どうやらあの後3日間寝込んだらしい。
この3日間で、俺の中では大きな変化があった。
「……力が…上がっている…?」
力が上がっていた。
雷の色も若干の変化があった。
真っ黒だった雷に若干白みがかかっていた。
「……何故だ…?この間の激痛と言い…俺の身体は…どうなっているんだ…?」
自分の身体には本来はあり得ない力がある。
それは相応の負荷が己に宿っているのも分かってはいる。
だが、最近の俺はやはり妙だ…
やはりこの心の揺らぎが原因なのか…?
だとすれば俺はどうすれば良いのだ…?
いいや
「悩んでいる時間など無い…とにかく今はこの力を早く完璧にしなければ…!」
「グロスト」
「…?」
声がした。
その方を振り向くとそこに居たのはゴードスだった。
「お前か…何の用だ?」
「用があるから来たのじゃ。ちと、付き合え。」
ゴードスは本部に俺を招いた。
ゴードスの部屋だ。
ここで妙な事を言われたしで俺はおかしくなったのだ。
また面倒事を言うのではないか
「お前さんに話したいことがあるのじゃ。これはまだまだ先の話となるがの…」
「何だ、早く言え。俺は忙しいのだ。」
「まぁそう急ぐな。話と言うのは…」
ゴードスから語られた話。
それはあまりにもくだらない話だった。
「…将軍だと?」
「そうじゃ。お前さんをワシに次ぐ2人目の将軍として起用したい。」
ゴードスは、俺に将軍になれと言った。
「ふざけているのか?俺はそのようなものに興味は無い。」
あまりにふざけた話だ。
「そうじゃな、そう言うと思うた、じゃから先の話なのじゃ。」
「…まるで俺がいつか将軍になることを予想しているようだな…?」
「そうじゃ、ワシは希望を見つけたのでな。」
「…生憎だが俺はお前の希望に添えられん。人を引っ張って戦うなど、俺は御免だ。」
俺はこれ以上話を聞いていても不愉快と感じた。
後ろを振り向いて出ようとした。
「まぁ、そういうことじゃ、片隅に置いておけ。」
「…」
「さて、では明日も頼んだぞ。」
「フン、分かっている…」
後ろを向くと、扉が開く。
その先には
「グロスト…!」
ウィルだ。
目覚めたらしい。
だが俺は知らんぷりして出た。
もう放っておくのだ。
野放しにしておけばいい。
話を振ってきたら適当に流しておけばいい。
それからもウィルは毎日のように俺の元へ来る。
全く、しつこい奴だ。
まさかこれがもう4年も経過しているとは…
ウィルは15歳になったようだ。
だが、俺は自然と今、こいつと話をしてしまうことがある。
不思議だ。俺はまさかこいつのことを認めたと言うのか…
いや、それは断じてない。
絶対に…
「敵襲ーーーー!」
「敵襲ーーー!!」
「現れたか…破壊軍め…!!」
いつもの敵襲。
だが…俺は何かが渦巻いていた胸を触った。
今日は何故だかいつもと違う何かを感じた。
感覚だが、少々いつもと違うことが起きそうな
そんな気がした…
雲行きが怪しい…
Episode12 END




