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WooTober異世界に立つ  作者: 石の森は近所です
サラエルド編
29/208

第27話、犯人特定。

 俺はリスナーたちが言っている1時間23分のシーンを確認しようと、カメラはそのままで保存してあるフォルダーから目当てのファイルを再生した。

 時間を1時間23分の手前に早送りし14インチのモニター全画面で見る。

 そこには、兄貴の斜め後方から林に隠れながら矢を放つ冒険者の姿がはっきりと映し出されていた。狙いは最初から兄貴だった。

 誤射の可能性も考えられたが、そもそもゴブリンは弓兵から右前方にいて、ゴブリンがいない左側へ矢を放つ意味はない。

 明らかに兄貴を標的としていた。

 犯行のスクリーンショットを撮り、矢を射った弓兵の肩にあるギルドマーク部分を拡大し見るが、解像度が低いからか? 

 拡大するとぼやけて判別まではできなかった。


「みんな、せっかく生配信を見に来てくれたのに――こんな俺ですまない。実は、動画で矢をうけたのは俺がこの世界で面倒を見てもらっていた兄貴なんだ。それで実はお願いがあるんだけど……あの矢を射ったヤツの肩にギルドマークが刺繍されてあるはずなんだが、俺のモニターでは解像度が低くて判別できねぇ。それで誰か、それの拡大した画像をスクリーンショットして俺に送ってくれないか?」


 3万人もリスナーがいれば一人くらいは応えてくれるだろうと期待したが、



ゲスト:こいつ何言ってんだ? 俺たちを都合良く使おうとか考えてんなよ


ゲスト:タケちゃん、期待に応えたいけど――俺モバイルノートだから無理ぽ


ゲスト:お姉さんも学生の時に使っていたノートパソコンなのよ。ごめんね


ゲスト:俺は27インチだけど――そんな面倒な事しねぇよ


ゲスト:スクリーンショットの仕方わかんねぇから無理だわ


ゲスト:俺の23インチで保存したので良ければ送るけど。保存した画像をネットにアップする方法とか俺知らないし。著作権とか肖像権とか大丈夫?


ゲスト:異世界の人が肖像権なんてあるわけねぇだろ


リスナーたちの反応は予想外に渋かったが1名、武郎に10万ポイントを投げ銭したタカトがそれに応じる。


タカト:タケくん、そもそもスクリーンショットは解像度に依存しない。データのファイル形式をJPEGではなく、PNG形式で圧縮保存すれば拡大しても画質が劣化する事はおきないと思うが……


ゲスト:さっすがぁ。タカトさん。だってよ、タケちゃん頑張れ



 動画の編集はしたことがあったが、画像の処理に関しては全くの素人だ。

 俺はタカトさんに言われた通りにファイル形式をPNGで保存して拡大してみる。

 動画では分からなかったギルドマークがくっきりと浮かび上がる。

 矢を射った冒険者の肩には、左巻きにとぐろを巻いた蛇。

 鎌首を持ち上げた蛇の口には剣が咥えられていた。

 俺はこのギルドマークをよく知っている。

 ――狂蛇の剣(マッドスネークソード)

 奥歯が軋むほど歯を噛みしめる。

 兄貴が死んだ後に――狂蛇の剣のヤツらが俺に向けた表情が思い出される。

 俺はタカトさんにお礼を述べると、時間をくださいとリスナーたちに説明をして一度配信を切った。


「くそッ、はじめから、この討伐が決まった時から仕組まれていたのかよ」


 真犯人がわかると、あの日のヤツらの言動が嫌でもおもい起こせる。

 荷馬車で街を出立する時から、狂蛇の剣のヤツらは兄貴に冷笑を浴びせていた。

 兄貴はゴブリンなどに後れはとらねぇと、言い返していたが。

 相手が格下のゴブリンじゃなかったら?

 相手が同格と目されているギルドのメンバーだったら?

 あの時、兄貴が言った下手うっちまったってのはこの事だったんじゃないのか?

 俺は単純にゴブリンにやられた事だとあの時には考えたが。

 ゴブリンたちが展開していたとしても正面を向いていた兄貴の左肩に矢を突き刺すのは不可能だったんだ。背後からの不意打ちでなければ――。

 なぜそれに気づかなかった。

 最初からそれに気がついていれば――。

 狂蛇の剣のヤツらが解毒の薬をもっていた可能性だってあったのに。

 ぐだぐだと思考を巡らせるが――詮無きことだ。

 もう兄貴は死んだ。

 100億ポイントで死んだ者を生き返らせるエリクサーと交換できるらしいが、その期限は死後8時間。しかも果てしなく遠い100億ポイントだ。


「ははっ、どうやっても助けられる見込みは無かったんじゃねぇか。くそッ」


 アリシアがいる隣の部屋に視線を向けるが、まるで空き部屋の様にこの4日間静かだ。

 アリシアにこの動画を見せた方がいいだろうか?

 いや、この件は伝えない方がいいか。

 動画を見せれば、アリシアは自暴自棄になるかもしれない。

 狂蛇の剣に掛かっていって、万一の事があっては、俺が兄貴に顔向けできない。

 兄貴の名誉のためには、犯人を白日の下に晒す必要があるが、それは今で無くてもいい。

 今はアリシアの心をかき乱すのはやめよう。

 そう考えた俺は、4日ぶりに外出する支度を始める。

 WooTobeの公式で洗顔セットを交換し、水の入った桶で髪を洗い、ひげを剃る。

 支度ができた俺は密かに兄貴の復讐を心に潜め街へと繰り出した。

 証拠となる動画を記録しているノートパソコンと魔法の書を持って。


お読みいただき、ありがとうございます。

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